リハビリに関する裁判や事件のまとめ

現在は病院も提訴される時代であり、セラピストが事件の当事者となるケースも増えてきています。

以下では、ニュースなどから見つけてきた情報をもとに、いくつかの裁判についてまとめています。

中には偏った見解や間違った情報も記載されている可能性がありますが、そこはご了承ください。

私個人が裁判の内容に対してどうこう言うつもりはありませんが、これらの事案を通して学べる教訓を少しだけ個人的見解として書かせていただきます。

リハビリ中の転倒事故について(参考URL

※以下、URLより引用

1991年2月26日、○○市総合リハビリテーションセンターの通所リハビリ室にて、転がってきた訓練用具が衝突し、ひとりの障害者が転倒しました。

所内で起こった事故であり、それによって利用者が家で寝たきりになっているのに対し、施設側は謝罪どころか、見舞いにも行くこともありませんでした。

また、「倒れたぐらいで身体症状が出るような、首の脊髄が悪い者は、他の総合病院でリハビリをせよ」として、病院側はリハビリ訓練再開を拒否しました。

再三のリハビリ再開の要求も拒否され、1992年10月にリハセンターの責任を追及する裁判を起こしました。

この裁判の結果として、横浜地裁・東京高裁は、いずれも「原告の言い分はすべて虚偽」とし、リハセンター側の主張をそのまま全面的に認め、原告敗訴となりました。

上告しましたが、2001年7月、最高裁から上告棄却の決定が下されました。

※以下、管理人の個人的見解

この裁判を通して、我々セラピストはカルテ記載を徹底にしておくことが大切だと再認識しました。

もしも訴えられた場合に、自分を守ってくれるのはカルテの記載や周囲の証言になります。

とくに事故が起こった場合は、より詳細に状況を書くことが必要です。

裁判の結果についてどうこう言うつもりはありませんし、真実がどこにあるかはわかりませんが、知っておくべき事案のひとつだと思います。

リハビリで悪化したALS患者(参考URL

※以下、ニュースより

筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う奈良市の原告(62歳)が2014年1月7日、病院でのリハビリで症状が悪化したとして、A病院とB病院を提訴しました。

ALSの患者がリハビリをめぐり訴訟を起こすケースは初めてになります。

訴状によると、原告は平成24年末から右手中指に痺れを感じ、A病院を受診しました。

そこでALSと診断され、紹介を受けてB病院にて平成25年10月よりリハビリを開始しました。

ALS患者に対して、筋肉に過度な負荷をかけると筋力低下を招くとされているにも関わらず、プログラム内容は両上肢・両手指への集中的な筋力トレーニングでした。

そのせいで約3カ月半のリハビリの結果、ドアの開閉やペンを握ることすら困難になるなど、状態が急激に悪化したとしています。

原告は会見で、「ALS患者の平均余命は3〜4年なので、先が長くないことは自覚している。この訴訟が全国で苦しむ患者の治療法をもっと丁寧に考えてもらうきっかけになれば」と話しています。

※以下、管理人の個人的見解

ALSに限らず、実際の臨床においてリハビリで症状を悪化させてしまうケースは少なくないと思います。

その場合、訴えられることも今後は覚悟していく必要があります。

この裁判の続報が見つけられなかったので、その後にどうなったかはわかりませんが、すでに7年以上が経過しているので残念ながら原告は亡くなられている可能性が高いです。

訴訟中に当事者(原告または被告)が死亡すると訴訟は中断(一時停止)し、相続人が受継して訴訟を続行します。

このケースは続報がありませんので、もしかしたら訴訟を断念した可能性も高いと推察されます。

妊娠・出産を理由とした降格(参考URL

※以下、ニュースより

原告は理学療法士の女性で、2008年に勤務先である広島市の病院を妊娠・出産を理由とした不当な降格として提訴しました。

いわゆるマタニティー・ハラスメントについての裁判です。

詳細としては、原告は第1子妊娠時は院内リハビリでしたが、復帰後は訪問リハビリの副主任となりました。

第2子の妊娠を理由に、軽い業務への配置転換を申し出たところ、院内リハビリへの配置転換と同時に副主任を解かれました。

原告は、これを不服として、男女雇用機会均等法に反すると病院を提訴しました。

この事案は、最高裁がマタハラについて判断を下す初めての裁判となり、世間でも大きな注目を集めました。

1,2審では「管理職の任免は使用者側の判断に委ねられている」として、女性の訴えを却下しました。

しかし、最高裁では「降格を違法とする」といった判決を下しました。理由は以下の二つがあります。

  1. 院内チームに移ったことで患者宅の訪問は不要となったが業務自体の負担が軽くなったわけではない
  2. 降格は軽い業務へ転換中の一時的な対応ではなく、その後も非管理職としてとどめるなど女性の給与面での不利益は大きい

以上の理由から、最高裁では女性の降格を違法としました。

※以下、管理人の個人的見解

これは当時のニュースでも大きく取り上げられたので、ご存じの方も多いと思います。

個人的には、当時案に関しては男女雇用機会均等法はあまり関係ないと考えています。

管理職には「管理職の仕事」があると思いますし、それができないのであれば降格はやむを得ないと思います。それは男性でも女性でも関係ありません。

ただし、最高裁が述べているように、このケースは子どもが小さいうちの一次的な対応ではなく、その後も非管理職としてとどめていることが問題となっています。

男女問わずに公平な対応ができなかったことが、この裁判の焦点になたのではないでしょうか。

注意義務を怠って患者が死亡した事件

※以下、ニュースより

滋賀県東近江市の病院で2004年11月、入院中の女性(当時71歳)がリクライニングベッドの転落防止用の柵の間に首を挟まれ死亡しました。

これに対して、滋賀県警は担当の理学療法士(当時30歳)が注意義務を怠ったとして、業務上過失致死の疑いで書類送検することになりました。

事件の詳細として、患者は左半身に麻痺がある方で、理学療法士がベッドサイドにてリハビリ指導後、傾けたベッドに座らせたまま病室を離れました。

それから1時間10分後、患者がベッド脇にある柵(高さ約25センチ)の隙間に首を挟まれ、意識不明になっているのを発見し、翌日に死亡しました。

県警は、理学療法士が病室を出る前にベッドを平らにするなどの注意義務を怠ったことが事故につながったと判断し、遺族は2005年12月、東近江市に2,800万円の損害賠償を求める訴訟を大津地裁に起こしています。

この裁判は、結果的に東近江市が解決金1,600万円を支払って和解し、理学療法士は起訴猶予処分(不起訴)となりました。

※以下、管理人の個人的見解

リハビリ中に患者を転倒させて死亡させてしまったという話は、私も身近なところで実際に聞いたことがあります。

このような不注意によるケースは、自分の身にもいつ起こるかわからないことだと思います。

昨今は医療ミスによる裁判が増えているようですが、私たちも決して他人事ではありません。

唯一の救いは、事故を起こした理学療法士が不起訴処分だったことではないでしょうか。

治療中のわいせつ行為

※以下、ニュースより

静岡市駿河区の福祉施設で入所していた女子児童にわいせつな行為をしたとして理学療法士の男性が逮捕されました。

警察によると、2013年10月、容疑者が当時勤務していた福祉施設のリハビリ室にて、手足に障害がある10代の女子児童に対し、下半身を触るなどしたわいせつ行為をしたとしています。

調べに対し、容疑者は「くすぐりごっこをしていただけでわいせつ目的ではなかった」と容疑を否認しています。

センターは行為が発覚したあと容疑者を懲戒免職処分としています。

※以下、管理人の個人的見解

理学療法士や整体師による「治療中のわいせつ行為」については、よくニュースで目にしますし、実際に身近なところで聞いたこともあります。

このケースは女子児童であり、これが原因でその後のトラウマになったりしていないか心配でなりません。

治療中のわいせつ行為は言語道断で免許取り消しとすべきですが、そういうつもりがなくても訴えられる「冤罪」が起こる可能性も少なからずあります。

そのような予期せぬリスクを避けるためにも、若い女性は、できる限りに女性理学療法士に担当してもらうのも手だと思います。

実習生の自殺について(参考URL

※以下、URLより引用

理学療法士を目指し、○○専門学校の学生であったAさん(当時39歳)は、2010年に入学し、13年11月から○○クリニックで実習を受けていました。

しかし、指導役のバイザー(理学療法士)からハラスメントを受け、実習中にクリニックを抜け出しそのまま自死に至りました。

自殺に至った理由は、実習中に過度に過重な報告書作成作業や理不尽な叱責を含むいじめを受けたことによる心理的負荷によるもの。

また、相談を受けた学校側の不適切な対応が原因にあるとして、遺族は実習先と学校を提訴しました。

この裁判は4年5ヶ月を経て、ようやく和解が成立し、被告ら(2箇所)が原告に対して各1,500万円(計3,000万円)を支払うことになりました。

※以下、管理人の個人的見解

この裁判に関しては、URLの管理人が詳細に状況を報告しており、訴状なども掲載してくれています。

当事件を世間に知ってもらい、同じようなことが二度と起こってほしくないといった気持ちから報告しているわけです。

現実として、実習先によって難易度はかなりのバラツキがありますし、理不尽で不適格なバイザーも多く存在しています。

その中でこのような判決が出たことは、個人的には業界がいい方向に進むと思いますので良かったと考えています。

失われた命はもとに戻りませんが、同じようなことが二度と起こらないように、忘れてはならない事例ではないでしょうか。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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