下後鋸筋(serratus posterior inferor muscle)

下後鋸筋の概要

下後鋸筋の起始停止

胸郭下部後面にある薄い筋で、表層を広背筋が覆います。第9–12肋骨を内下方へ引き、努力性呼気(強く吐く動作)を補助します。対になる上後鋸筋は吸気補助(上位肋骨を挙上)で、作用はです。
※最近は「呼吸補助より**体幹・肋骨の位置覚(プロプリオセプション)**への寄与が大きい」とする見解もあります。

基本データ

項目 内容
支配神経 肋間神経
髄節 T9-12
起始 T11–L2 棘突起胸腰筋膜(後層)
※文献によりT10–L2とする記載もあり
停止 第9–12肋骨の下縁(肋骨角付近の外側部)
動作 呼気時に第9–12肋骨を内下方へ牽引(努力性呼気の補助)
特徴 薄く平坦、広背筋・胸腰筋膜との連結が強い(姿勢・体幹伸展位との関係が濃い)

触診のコツ

  • 体位:腹臥位。

  • 手順第9–12肋骨の外側部下縁に指腹を沿わせ、患者にゆっくり長く吐く(口すぼめ呼気)。吐き終わりで肋骨が内下方へ動く張りを感じる。

  • ポイント:広背筋の収縮と層を分けて触れる(必要に応じて肩軽挙で広背筋の緊張を一度抜く)。

ストレッチ(呼吸同調)

  1. 側臥位で上側がストレッチ対象。

  2. 鼻から吸って下位胸郭を外側へ広げる(下後鋸筋に対し離開方向)。

  3. ゆっくり吐きながら体幹をわずかに側屈して戻す。20–30秒×2–3回。
    ※痛みがあれば可動域と呼気量を減らす。

筋力トレーニング(努力性呼気の再学習)

  • 口すぼめ呼気:吸3秒 → 吐6–8秒。吐き終盤にフッ・フッと2回短い追加呼気。5–8呼吸。

  • 呼気抵抗具/ストローを用いると下位肋骨の下制を誘導しやすい(めまいが出ない強度で)。

トリガーポイント(TP)

  • 主訴:胸郭下部〜腰背部にかけての局所的な鈍痛・張り、深呼吸や咳での違和感(下位肋骨まわり)。

  • 誘因:前屈みでの長時間作業、強い咳・呼気動作の反復、広背筋の過緊張を伴うトレーニング、姿勢不良での肋骨下制位の持続。

臨床メモ

  • 咳の反復・吹奏・ラン後などで過緊張 → 下位胸郭の可動が減り、腰背部の違和感につながることがある。

  • 広背筋・胸腰筋膜との連結が強く、体幹伸展位が強い姿勢で短縮しやすい。呼気優位ドリル胸郭可動性の併用が有効。

  • トリガーポイントは下位肋骨沿いに限局痛として出やすい。肋間筋痛・肋骨ストレス反応との鑑別を。


よくある質問(Q&A)

Q1:上後鋸筋との見分けは?
A:位置(上=上位胸郭/下=下位胸郭)と役割(上=吸気補助/下=呼気補助)が反対。触診は吸気(上)と吐気(下)で使い分け。

Q2:安静呼吸でも働きますか?
A:主役は横隔膜。下後鋸筋は強く吐く場面で活動が増えます。

Q3:腰痛と関係ある?
A:胸腰筋膜を介し体幹筋と連結。下位胸郭が下がらない(吐けない)人は、腰背部の過緊張が続きやすいです。

Q4:セルフチェックは?
A:仰臥位で吐く時間が吸う時間より長いかを確認(理想:吸<吐)。下位肋骨が内下方に確実に戻るかを手で触れて確認。


最終更新:2025-10-07