半月板損傷は手術する前にリハビリをしたほうがいい理由

膝の痛みで整形外科を受診し、MRIを撮影してみたら半月板損傷という診断で手術を勧められた。

そのような方々は非常に多いかと思いますが、しかし実際は必ずしも半月板が痛みの原因となっているわけではなく、むしろ半月板以外に問題があるケースは非常に多いです。

そのことについて今回は解説していきます。

半月板損傷は健常者でも多い

外側半月板の水平断裂

上の画像は半月板損傷のMRIですが、右側の黒い三角形(半月板)に亀裂が入っていることがわかります。

これは素人が見ても明らかに半月板損傷だとわかるものですが、実際に患者の膝が痛いかというと実はそうではありません。

半月板は膝の間に位置するクッションのような軟骨ですが、歳をとったら誰でも軟骨が磨り減るようなものと同じで、膝に痛みがない中高年者でも損傷しているケースは非常に多いです。

日本人の60歳以上では膝関節に痛みが存在しなくても 、その40%以上にMRI上で半月板損傷が存在するとされています。

そのため、MRIで損傷していることがわかったとしても、それが必ずしも痛みの原因であるとは限らないわけです。

半月板損傷が問題のケース

半月板の位置

上の画像は膝関節(脛骨)を上方から見たものですが、内側半月板は「C」の形にちかく、外側半月板は「O」の形にちかいです。

損傷頻度は内側が外側よりも5倍ほど多く、ほとんどの患者は内側半月板損傷と診断される場合が多いです。

基本的に軟骨(半月板)は神経が存在していないため、損傷しても痛みを感じることはなく、血流が乏しいので再生することはありません。

半月板損傷が問題となるケースというのは、膝を動かすときに引っかかって関節が伸びなくなるような動きに制限をきたす場合です。

それ以外ではあまり問題を起こすことはありませんので、痛みだけが問題なら別の要因を探すことが必要となります。

膝の痛みを起こしている本当の原因

膝蓋下脂肪体の位置

上の画像は膝関節を前方から見たものですが、膝のお皿(膝蓋骨)の下方に位置している黄色い組織が膝蓋下脂肪体です。

結論から書くと、膝関節内側の痛みの原因組織で最も多いのが膝蓋下脂肪体であり、半月板損傷の痛みと間違えられやすい部位になります。

膝蓋下脂肪体は膝関節を曲げ伸ばしする際に、膝蓋骨の動きをスムーズにするために動き回る潤滑剤のような組織です。

しかし、膝蓋骨周囲の組織が硬くなったり、脂肪体そのものが硬くなると、滑りが悪くなって摩擦が起きるようになります。

それが結果的に膝関節の痛みとして感じることになるわけですが、MRIではそのあたりの動きや硬さをとらえることができません。

そのため、実際は痛みの原因ではない半月板損傷(健常者でも起こりえる程度の損傷)のせいにされるわけです。

膝蓋下脂肪体の痛みを治す方法

それでは、実際に膝蓋下脂肪体の痛みをどのようにして治すかですが、理学療法士などのリハビリテーションを受けることが必要です。

病院などで使用する物理療法(ホットパックや電気治療器など)だけでは、膝蓋骨周囲の硬さはとれないので治りません。

硬さをとるためには組織が癒着している部分を剥離する操作が必要となるため、治療では強い痛みを伴うことも多いです。

しかしながら、硬さがとれて脂肪体の動き回れるスペースが確保できたら、痛みが軽減してくるので楽になるはずです。

おわりに

今回は半月板損傷と診断されても膝蓋下脂肪体の問題が多いという内容の記事を書きましたが、もちろん問題はそれ以外にもあります。

また、医者が誤診をしているのかと感じるかもしれませんが、半月板損傷としたほうがリハビリのオーダーを出しやすいといった側面もあります。

なので一概には書けないのですが、やはり一定数の手術を受ける必要がなかった患者もいるのではないかと考えています。

原因が半月板ではないのですから、手術で半月板を切除しても痛みがとれなかったということが多々あるわけです。

そのため、半月板損傷と診断されてもまずはリハビリを必ず受けるようにしていただくほうがよいです。

そこで担当の理学療法士などに手術をしたほうがいいか尋ねてみることで、セカンドオピニオンとはいきませんが、医者以外の意見も聞けることになります。

必ずしもお医者様が正しいことを言っているとは限りませんので、しっかりと患者自身も状態を把握してから決断することが大切です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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