歩くと膝が痛い理由について解説していきます。
FT関節とPF関節
膝関節は2つの関節から構成される複合関節であり、①大腿脛骨関節(FT)、膝蓋大腿関節(PF)から成ります。
大腿脛骨関節は名前の通りに大腿骨と脛骨から構成される関節であり、主に荷重を受け止めて、身体を安定させる関節になります。
それに対して、膝蓋骨と大腿骨から構成される膝蓋大腿関節は、膝関節に付着する大腿四頭筋の滑りを円滑にする役割を担っています。
歩く時に痛みが出るのはFT関節の問題
膝の痛みは主にFT関節とPF関節のどちらかに問題がありますが、歩く時に痛みがある場合はFT関節の問題である可能性が極めて高いです。
理由としては、立位時にFT関節は荷重を受け止めるのに対して、PF関節にはあまり負担がかからないことが挙げられます。
患者さんに「どんな時に膝が痛みますか?」と質問すると、「立ち上がる時が痛い。歩き始めたらそうでもない」とおっしゃる人が多くいます。
その場合はPF関節の問題が大きいと考えられ、問診のみである程度に問題部位を予測することができるわけです。
歩くときに膝が痛い原因
よく「関節の表面を覆っている軟骨が磨り減っているから痛い」と説明されることがありますが、それは大きな間違いです。
基本的に関節面に神経は存在していないため、どれだけ膝が変形していても痛みを感じることはありません。
それではどこが痛みを感じ取っているかですが、FT関節の場合は、主に滑膜と半月板になります。(前十字靱帯などは痛みを感じません)
実際のほとんどは滑膜性であり、磨り減って浮遊した軟骨などが滑膜を刺激して、炎症を起こしていることが主な原因として挙げられます。
膝関節に炎症が起きると水が溜まり、荷重をかけると痛いので、歩く時にびっこを引くような異常歩行をきたします。
立ち上がるときに膝が痛い原因
立ち上がるときやしゃがみ込むときなど、膝関節に荷重をかけた状態で曲げ伸ばしをすると痛む原因はPF関節にあります。
厳密にはPF関節の間に存在する膝蓋下脂肪体が原因であり、この組織が損傷していたり、スムーズに動くことができないと摩擦で痛みます。
膝蓋下脂肪体は膝関節周囲で最も痛みを感知する組織であり、ここが問題である可能性は極めて高いといえます。
膝蓋下脂肪体が重度に拘縮している、または膝関節の変形で動きが重度に制限しているケースでは、無荷重での膝屈伸だけでも痛みが起こります。
歩くときに膝裏が痛い原因
歩くときや膝を深く曲げるとき(正座など)に膝裏の痛みを訴える患者も多いですが、その原因の多くはハムストリングスの異常収縮です。
ハムストリングスは、①大腿二頭筋、②半腱様筋、③半膜様筋の3つの筋肉から構成されますが、この順序に問題が起きやすい傾向にあります。
異常収縮が起きる原因としては、普段から筋肉が緊張(収縮)を強いられる状態にあることが挙げられます。
強いられる理由には、関節の変形に加えて、大殿筋の機能不全を大腿二頭筋が主に代償しているからです。
おわりに
膝の痛みとひとくちに言っても原因は様々であり、ここで紹介したもの以外にも多く存在しています。
だからこそ治療は難しいのですが、最低限にPF関節とFT関節のどちらの問題か、ここで挙げた代表的な疼痛誘発組織に問題はないかだけはチェックすることが大切です。
原因組織さえわかるとおのずと治療法はみえてきますので、まずは確実に問題をとらえることが治すための第一歩になります。