咬筋の緊張が歩行動作に及ぼす影響

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咬筋はトリガーポイント(TrP)が現れやすい場所として知られており、筋肉全体の中で1位または2位にランクインするともいわれています。

咬筋にTrPは顎関節症の原因として最も多く、①口を開けようとすると顎が痛む、②口を開けづらい、③顎の関節から音が鳴るなどが生じます。

顎関節症は20〜30歳代の女性に多く(男性の約2倍)、頭部前方位による噛み合わせの悪さなどが原因にあると考えられています。

そんな咬筋に過度な緊張が生じると顎の痛みだけでなく、身体全体に影響を及ぼすことになります。

それを証明する研究として、①目隠しをした状態、②目隠しと右奥歯咬合(ガムを強く噛んでおく)をした状態で歩いてもらった実験があります。

結果としては、ガムを噛んだ状態では真っ直ぐ歩くことができず、右側に流れていくという結果になりました。

左奥歯で咬合した場合は左側に流れていくことになり、咬筋(咀嚼筋)の緊張が身体全体に少なからず影響を与えていることが理解できます。

私は小学生のときに水泳で真っ直ぐに泳ぐことができず、それ以来全く泳ぐことがなくなりましたが、左右のバランスが極端に悪かったのだと今では思っています。

それでは咬合の緊張がどこに影響を与えるかですが、もうひとつの面白い実験として、肩と肘を90度に曲げて腕を左右に振ってみてください。

その際に、①手をグーに握った状態、②手を握らないで楽にした状態で比べてみると、明らかに後者のほうが振りやすいはずです。

この結果が意味することは、力が入った状態では動きを悪くしてしまう(可動範囲を小さくする)ということです。

理論的な話を書くなら、筋肉の一部は筋膜に停止するため(骨だけでなく)、その繋がりにある筋肉はすべて少なからず緊張します。

緊張が強くなればなるほど影響を強めてしまうため、なるべくなら運動に必要のない部分はリラックスしている必要があるわけです。

咬合した状態では無意識に下肢の動きまで悪くなり、それが結果として歩行の乱れとして現れたのではないかと考えています。

イチロー選手は打席に入るまでに「どれだけリラックスできるか」を大切にしており、力を入れるのはボールを打つインパクトの瞬間だけです。

それが可能だからこそあらゆるボールに対応することができ、三振することがほとんどなかったのかもしれません。

ボクシングで三階級制覇を成し遂げた長谷川選手もパンチを繰り出すときは拳は握っておらず、インパクトの瞬間だけ握り込み、その後に腕を引く時は手を緩めています。

それが結果的に超高速の連打を可能にしており、一流選手に共通した重要なポイントになっていると予想されます。

試合では緊張せずに普段通りにすることが大切といわれるのも、そのようなことが影響しているのではないでしょうか。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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