変形性膝関節症(膝OA)の姿勢変化や異常歩行について解説していきます。
この記事の目次はコチラ
膝OAの特徴的な姿勢
まずは変形性膝関節症における特徴的な立位姿勢について図を掲載します。
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膝関節の変形は伸展制限と内反変形が特徴であり、そこから上下に運動連鎖が派生していって上記のような姿勢変化を起こします。
これは逆もしかりで、腰が曲がることで膝関節は曲がりますし、足関節の背屈でも膝関節は曲がるようになります。
運動連鎖(側面)を理解する
連鎖的な動きを理解するのは実はとても簡単で、ひとつの関節の動きによって重心線がどこに移動するかを考えたらわかりやすいです。
例えば、膝関節屈曲と足関節背屈が起きている状態では、足底の支持基底面に対して、重心線は前方に移動してしまいます。
支持基底面は中央に位置している状態が最も安定し、それが少しでもずれてしまうと重心線とは反対側の筋肉が活動してバランスを保とうとします。
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そのため、膝関節屈曲のみの状態では図のように背部の筋力が必要となり、その姿勢を保持し続けると筋肉が疲労します。
そこでヒトは無意識のうちに他の関節を移動させることで、右図のように重心線を中央に保とうと働きます。
そうすることで関節の負担は増えることになりますが、筋肉による疲労は消失するので、体感的には非常に楽な姿勢となります。
しかし、その状態が長期化すると関節の摩耗を早めてしまい、結果として変形性関節症を引き起こす原因となってしまいます。
だからこそ障害の予防にはアライメントの修正が大切とよく言われるわけですね。
運動連鎖(正面)を理解する
正面の運動連鎖も基本は同じで、ひとつの関節の動きによって重心線がどこに移動し、それをなにで補うかを考えたらわかりやすいです。
例えば、足関節(距腿下関節)が内反した場合、外側に移動した重心を正中位に保つために膝関節が内反し、大腿骨を内側に傾けることで調整します。
また、回旋軸においては足関節内反は脛骨の内旋を起こすため、回旋を相殺するために大腿骨外旋が生じます。
もしもそこで股関節に硬さがあるなら大腿骨外旋に連動して骨盤の回旋が生じ、さらに腰椎も捻れます。その回旋を相殺するために胸椎にまで回旋は生じます。
そのようにして下位で調節ができなった動きの変化は、上位に波及するようになります。これは逆もしかりです。
運動連鎖で姿勢が調整できない場合
関節の変形や摩耗をきたしているケースでは、運動連鎖による重心線の調整ができない場合があります。
例えば、変形性膝関節症に加えて脊椎の前方圧潰をきたしている高齢者では、体幹伸展運動が制限されるため、前方に移動しすぎた重心線を戻すことができません。
そのため、脊柱起立筋群の緊張によって安定性を保とうとするので、背筋がガチガチに硬くなり、腰痛を訴えることになります。
この場合は杖や押し車といった補助具を使用して、支持基底面を広げることで重心線を中央に調整します。
そうすることで、脊柱起立筋群の緊張による安定化作用が必要なくなり、結果として歩くことが楽になったり、腰痛の緩和が期待できます。
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O脚とX脚の違いについて
内反膝(O脚)か外反膝(X脚)かを判断するためには、大腿脛骨角(FTA)を計測する必要があります。
その名の通りに大腿骨と脛骨が交わる線の角度のことであり、正常の場合は170-176度の範囲になります。
内反膝では180度以上、外反膝では165度以下となり、日本人の膝OAの約90%は内反膝になります。
内反膝では股関節が外転および外旋し、下腿は内旋方向に移動します。
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膝関節伸展が制限された歩行
運動連鎖にて体幹が前傾する理由については説明しましたが、それ以外にも歩行時に前傾させることで膝伸展モーメントを減少させることができます。
伸展強制で痛みが起こる場合も多いため、前傾することで除痛を図っている可能性や、前方への推進力をつけている場合もあります。
体幹前傾や膝伸展制限は股関節の伸展運動を低下させる原因となるため、腰が引けたような歩き方となってしまいます。
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立脚期に体幹側屈が起こる歩行
患側立脚期に患側へ体幹が側屈する理由として、重心線を患側膝関節の付近に移動させることにより、膝内反モーメントを減少させています。
そうすることで膝関節内側にかかる負荷を減少させることができ、結果的に痛みを緩和することが可能となります。
あくまで疼痛回避歩行の一種であるため、異常歩行だからといって無理矢理に修正すると痛みを助長する可能性があるために注意が必要です。
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ラテラルスラスト歩行の矯正方法
下肢接地後に急激に起こる膝関節内反をラテラルスラスト(lateral thrust)といいます。
立脚期に加わる膝内反モーメントに対して、膝関節が周囲筋の緊張では保持できず、骨による制限によって食い止めている状態といえます。
そのため、理論的には膝関節外反に影響する筋肉(股関節内旋に関わる筋肉と下腿外旋に関わる筋肉)を鍛えることで予防できます。
具体的には股関節内旋筋(股関節内転筋群、大腿筋膜張筋、中殿筋の前方筋束)と下腿外旋筋(内側広筋、大腿二頭筋)の強化が有効です。
また、腸脛靭帯や外側側副靭帯の緩みが影響しているため、内反を制御するための膝装具を使用して緩みの改善を図ることも大切です。
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