大腿骨寛骨臼衝突症候群(FAI)のリハビリ治療

大腿骨寛骨臼衝突症候群(Femoroacetabular impingment:FAI)のリハビリ治療について、わかりやすく解説していきます。

FAIの概要

FAIは股関節インピンジメント症候群とも呼ばれ、股関節を動かした際に大腿骨頭と寛骨臼が衝突する状態をいいます。

原因としては、①大腿骨頸部の肥厚、②寛骨臼の過被覆、③後方関節包の縮小などが挙げられます。

変形性股関節症の前期症状として出現し、単純X線検査では関節裂隙の狭小化が認められないうちから痛みを誘発します。

若年のスポーツ習慣者の股関節痛の多くがFAIによる関節唇損傷であり、しゃがみ込むような股関節の深屈曲位で痛みを訴えるのが特徴です。

FAIの分類

FAIは骨の形態別に、①カム型、②ピンサー型、③コンバインド型の三つに分類されます。

正常のCE角(大腿骨頭の中心と寛骨臼の縁を結んだ線)は成人で25度以上となり、25度未満では臼蓋形成不全となります。

ピンサー型はCE角が40度以上となっており、寛骨臼が大腿骨頭を覆う面積が大きく、過被覆の状態となっています。

ピンサー型は女性に多いことがわかっており、元々は臼蓋形成不全などで関節の不安定性があり、それを補うようにして形成されます。

カム型は大腿骨頚部が肥厚した状態であり、20〜30歳代の男性に好発することが報告されています。

股関節の「屈曲・内転・内旋」の複合運動は大腿骨頸部前方と寛骨臼が最も接触しやすくなるため、痛みの誘発検査としても有用です。

明確な発生原因は不明ですが、カム型は周囲組織のタイトが関与していると考えられます。

ピンサー型とカム型を合併している状態をコンバインド型といい、発生頻度は①カム型、②コンバインド型、③ピンサー型の順に多く発生します。

部位別の疼痛と原因

FAIによる痛みは、大腿骨頭と臼蓋が衝突を繰り返し、周囲組織を挟み込んで損傷することにより起こります。

とくに障害を受けやすいのは前上方(腹頭側)の股関節唇で、痛みは太ももの付け根(鼡径部)あたりに現れます。

関節軟骨が摩耗すると徐々に関節裂隙は狭小化していき、変形性股関節症に進行していくことになります。

症状の進行を避けるためにも衝突動作は回避すべきであり、そのためには股関節を深く曲げるような動作は行わないように注意します。

画像検査による診断

画像検査では、まずは両股関節の正面像と大腿骨軸位像側面像(軸写像)の2方向を単純X線検査にて撮影します。

確認すべきポイントは、①大腿骨頸部の肥厚、②寛骨臼の過被覆、③臼蓋の前捻角の3つになります。

上記のどれかが当てはまり、股関節の深屈曲で痛みが生じ、関節裂隙の狭小化がみられない場合はFAIを強く疑うことができます。

MRI検査では、股関節唇や軟骨の状態まで確認できますので、FAIが疑われる場合は必ず撮影して損傷の有無や程度についても評価します。

リハビリテーション:カム型

関節唇損傷にて炎症がある場合は、股関節の運動時に痛みを伴いやすので、患部の安静を保つようにして痛みが落ち着くのを待ちます。

カム型の場合は、股関節の後下方関節包や外旋筋群に短縮が存在している可能性が高いので、必要に応じてストレッチングを実施していきます。

方法としては、背臥位にて股関節を90〜100度に屈曲させて、セラピストは大腿骨頭を背尾側に押し込んで後下方関節包を伸張します。

自主ストレッチの方法としては、患者に四つ這いの姿勢をとってもらい、大腿骨に荷重をかけて骨頭を背尾側に押し込ませます。

そこから可能な範囲(関節唇を挟み込んで痛みが出ない範囲)で股関節を屈曲していくことで、後下方関節包を伸張していきます。

リハビリテーション:ピンサー型

ピンサー型の場合は、生まれつきの臼蓋形成不全を伴いやすいことは前述しました。

臼蓋が浅いとどうなるかというと、その分だけ大腿骨頭の動ける範囲(股関節の可動域)は大きくなります。

関節は柔らかいほうがいいようなイメージが持たれていますが、それは必ずしも正しくはありません。

痛みを起こす関節というのは「硬い関節」ではなく「不安定な関節」です。

そのため、たとえ拘縮がなくても筋力のアンバランスなどで骨頭の支点がブレると、インピンジメントを起こすことになります。

とくに女性は元々関節が柔らかく、筋力があまり強くありませんので、男性と比較して不安定関節を発生しやすいです。

股OA患者の股関節周囲筋の萎縮度合いを評価した研究では、大殿筋、中殿筋、小殿筋の順に萎縮率が大きかったことが報告されています。

中殿筋が萎縮してしまうと、トレンデレンブルグ徴候やデュシェンヌ現象が起こることが有名です。

第3代償のトレンデレンブルグ徴候が最も軽度であり、第1代償のデュシェンヌ現象+逆トレンデレンブルグ徴候が最も重度の状態です。

トレンデレンブルグ徴候は、立脚側の下肢が骨盤を水平の位置に保持できず、立脚期に反対側の骨盤が下がる状態です。

骨盤が下がると立脚側の臼蓋外上方の負担が高まることになり、関節軟骨の摩耗や臼蓋の過被覆、骨頭の圧壊を招くことにつながります。

そのため、中殿筋や小殿筋の筋力強化は必須であり、骨盤の動揺は最小限に抑えることが必要です。

次に最も萎縮しやすい大殿筋ですが、大殿筋が弱化するとハムストリングスや大腿筋膜張筋が代償的に優位となります。

そこに腸腰筋の弱化(延長)や前方関節包の緩みがあると、歩行時(股関節伸展時)に骨頭の前方変位が起こり股関節前方痛を生じます。

手術療法

上記に挙げた保存療法(リハビリテーション)にて痛みが改善せず、症状が進行している場合は手術療法が適応となります。

手術は関節鏡手術で一般的に行われ、大腿骨頚部の肥厚部分と臼蓋の過被覆部分を削り、関節唇を縫いつけていきます。

FAIに対する手術は一般的に有効とされますが、すでに関節裂隙の狭小化を伴う変形性股関節症の発症例では、痛みの改善がない場合も多いことが指摘されています。

そのため、手術に関しては進行する前に実施するほうがスポーツ復帰などの予後を考えると有効である可能性があります。

一般的に術後は部分荷重となり、5〜8週間ほどで全荷重に移行し、競技復帰には少なくとも4〜5ヶ月が必要とされています。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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