姿勢と運動連鎖について解説

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ここでは姿勢分析や姿勢矯正をしていく際に、是非とも覚えておきたいポイントをわかりやすく解説していきます。

安定した姿勢とはなにか

まずは最初に知っておいてほしいこととして、姿勢を矯正する理由は、「安定した姿勢」を手に入れるためです。

物体が安定するためには二つの条件が必要であり、ひとつは支持基底面が広いこと、そしてもうひとつが重心の高さが低いことです。

これを簡単に理解するために、まずは下の図を見てください。

安定した姿勢について

青色(左)の物体と赤色(右)の物体がありますが、風が吹いたときにどちらが倒れそうかと質問したら、きっと赤色が倒れやすいと答えるはずです。

このようにヒトは無意識のうちにどのような姿勢が安定するかを知っており、日常の中で使い分けているといえます。

倒れにくい理由を物理学で説明するなら、支持基底面の広さと重心の高さで説明できるわけです。
安定した姿勢について2

実際には、さらに質量(重力)や摩擦係数の問題も関与していきますが、このあたりは後々に説明していきたいと思います。

支持基底面と重心線の解説

具体的に支持基底面を説明すると、接地している部位の間の面積を指します。

例えば、ヒトが床に立っている状態(立位)のときは、接地している右足裏から左足裏までが支持基底面になります。
支持期底面,立位,足裏,面積

次に重心ですが、簡単に書くと身体の質量の中心という意味です。

同じような形状をしていても、下部のほうが重い物体は倒れにくく、上部のほうが重い物体は倒れやすい状態にあります。

例えばですが、空のペットボトルと水の入ったペットボトルがあったとして、どちらが倒れやすいかと考えたらわかりやすいです。

当然ながら水が入ったペットボトルのほうが倒れにくく、その要素のひとつが重心の高さが低くなるからです。
安定した姿勢について3

次に重要なのは重心線という概念なのですが、こちらは重心から地面に対して垂直に下ろした線のことを指します。

身体が最も安定する姿勢というのは、重心の高さや支持基底面の広さに加えて、重心線が支持基底面のど真ん中にきている状態です。

支持基底面と重心の関係性,位置

なぜなら、重心線が中央に位置している場合、どの方向から外力を受けたとしても、重心が支持基底面から外れることが少ないからです。

この距離が非常に重要で、例えば左側に押されるような外力に耐えたいと考えているのなら、重心を右側に置いておくといいのです。

そうすることで支持基底面を広くとれますので、より安定することができます。

支持基底面,バランス,向上,範囲

重心が支持基底面から外れた場合、外れた方向に倒れることになり、私たちは立つことができなくなります。

なので、安定するためには面をなるべく広くとり、重心を中心に置くことが大切です。

支持基底面から重心線が外れた場合,転倒,反射

運動連鎖について解説

運動連鎖というのは、どこかひとつの関節が動いたら、それに連れて他の関節も動いていく反応をいいます。

身体が安定している状態とは「重心線が中央に位置している状態」であり、運動連鎖によって調整しています。

重心線が中央にあると筋肉の無駄な収縮を必要としないため、疲労感も少ない姿勢となります。

また、筋肉に無駄な力が入っていなければ、急激な外力に対して即時に反応でき、柔軟に重心を移動させることができます。

姿勢を評価する際には、①前額面(前)、②矢状面(横)、③水平面(上)から考えることが基本ですが、運動連鎖の評価も同じです。

どの面からもそれぞれに特徴的な運動連鎖が存在するため、まずは基本について理解しておくことが重要です。

重心線がどのように移動し、周囲の関節がどのように動いたら相殺できるかを考えるだけなので、理解することはさほど難しくはありません。

矢状面から見た運動連鎖

上図は、矢状面から見た運動連鎖になります。

下方から説明すると、足関節が背屈して重心が前方移動→膝関節が屈曲して重心を後方移動→股関節が屈曲して重心を前方移動します。

さらに骨盤を後傾して重心を後方移動→腰椎を屈曲して重心を前方移動→胸椎を伸展して重心を後方移動→頸椎を屈曲して重心を前方移動します。

これらの一連の流れはどこから起きても上下に波及していきますので、運動が連鎖するといった表現をなされます。

しかし実際は、足関節が背屈になったからといって上図のように綺麗に波及して連鎖するということはありません。

背屈角度がそれほど大きくない場合は股関節を伸展させて重心を戻すかもしれませんし、その場合は上半身の連鎖は逆方向となります。

前額面から見た運動連鎖

上図は、前額面から見た運動連鎖になります。

下方から説明すると、足関節が内反して重心が外方移動→膝関節が内反して重心を内方移動→股関節を外転(骨盤を傾斜)して重心を外方移動します。

骨盤が傾斜すると腰椎は重心を戻そうとして内方移動→胸椎が重心を外方移動→頚椎が重心を内方移動します。

あくまで例ではありますが、このような機序をたどりながら、各部位で重心を調整しています。

しかし実際は、足関節が内反になったからといって上図のように綺麗に波及して連鎖するということはありません。

膝関節は蝶番関節なので内反で調整することがなく、股関節を内転(骨盤を反対方向に傾斜)して重心を内方に移動させる場合もあります。

その状態が続くと膝関節には外反ストレスが生じるため、日々の生活の積み重ねで徐々にX脚変形していく可能性が高まります。

水平面から見た運動連鎖

上図は、前額面から見た運動連鎖になります。

運動連鎖を簡単に書くと、足関節が外反した場合ですが、この外反という動きは足関節の背屈・外転・回内の複合運動になります。

下方から説明すると、足関節が外転して重心が外旋移動→膝関節(下腿)が内旋して重心を内旋移動→股関節を外旋して重心を外旋移動します。

骨盤が回旋すると腰椎は重心を戻そうとして内旋移動→胸椎が重心を外旋移動→頚椎が重心を内旋移動します。

あくまで例ではありますが、このような機序をたどりながら、各部位で重心を調整しています。

しかし実際は、足関節が外反になったからといって上図のように綺麗に波及して連鎖するということはありません。

膝関節は蝶番関節なので下腿の内旋で調整することがなく、股関節を内旋して重心を内旋に移動させる場合もあります。

その状態が続くと膝関節(下腿)には外旋ストレスが生じるため、日々の生活の積み重ねで徐々に下腿外旋症候群となる可能性が高まります。

ヒトの重心線について理解する

身体の各部位が正常な位置にある場合は、以下の図に示すポイントを重心線が真っ直ぐと通過しています。

立位姿勢|重心線の位置|側面 立位姿勢|重心線の位置|正面

ヒトの脊椎は緩やかなS字カーブを描いており、それによって背骨にかかる負荷を緩和しているので、カーブの度合いについても確認します。

緩やかなカーブが確認でき、上図のポイントが重心線上にきている場合は、いわゆる正しい姿勢がとれていると判断できます。

この姿勢が良しとされる理由は、①筋肉(軟部組織)への負担が少ないこと、②骨(関節)へ負担が少ないことが挙げられます。

身体はいくつもの骨で分節的に構成されているため、どんなに素晴らしい姿勢でも多少の筋収縮は起こっています。

筋収縮を完全になくすためには分節(関節)を無くせばいいのですが、それだと動くことができないので生きていけません。

立位姿勢|筋収縮の必要がない立位姿勢 立位姿勢|分節的な筋収縮で立位姿勢は保持されている

そのため、筋活動が少ない(筋肉への負担が少ない)姿勢が正しい姿勢のひとつの条件であるといえます。

たとえ筋活動がなくても、靱帯や関節包などによりかかっている場合もあるため、軟部組織への負担が少ないことも重要な要素です。

次に骨への負担ですが、もしも骨がズレている(マルアライメント)と荷重面積が減少してしまい、一箇所に負担が集中するような状態となります。

そうなると関節の摩耗を早めてしまい、結果的にあらゆる障害を引き起こす原因になります。

 

以上のことより、正しい姿勢というのは筋肉へも骨へも負担の少ない姿勢のことを指すのだと理解していただけるといいかと思います。

姿勢矯正のための3ステップ

アライメント不良の修正には3つのステップがあり、①リアライン、②スタビライズ、③コーディネイトの順序に進めていきます。

アライメントは「骨の配列」を指し、マルアライメントとは「アライメントが崩れた状態」=「骨の配列が崩れた状態」をいいます。

リアラインとは、マルアライメントを整えるということであり、崩れた骨の配列を理想的な状態にまで持っていくことを意味します。

マルアライメントに関しては、ここまでに述べてきた問題が関与している可能性があり、1度起こってしまうと矯正が難しい場合も多いです。

マルアライメントの代表例として、扁平足や外反母趾、腰椎前方すべり、上腕骨骨頭の前上方変位などが挙げられます。

リハビリのみでは対応できないことも多いので、補助具(サポーターやインソール)を使用して調整することも必要となります。

応力の集中で組織損傷が起こると、運動機能障害や防御性収縮などが起こり、それらは歯車のように互いで影響し合います。

このような悪循環は徐々にマルアライメントを進行させていき、結果的に変形性関節症を引き起こします。

そのため、まずはマルアライメントを修正し、そこから不良姿勢を矯正していくことが必要となります。

リアラインの次はスタビライズですが、方法は「矯正した姿勢を保つ筋収縮の反復」になります。

可能な限りにアライメントを整えたうえで、本人が意識しながら、その姿勢を保つためのトレーニングを行います。

最後のコーディネイトですが、方法は「正しい姿勢での運動動作の学習」になります。

生活をしていくうえで静的にはアライメントが整えられても、動きの中で崩れるようなら意味がありません。

そのため、不良姿勢の再発予防をしていくうえでも、正しい姿勢で動けるようになることが求められます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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