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急性痛と慢性痛についてわかりやすく解説


痛みは人体への侵害刺激に対する警告信号としての役割を持っており、この機能があるからこそ我々は危険から逃れることができています。

そんな痛みの原因別の特徴についてまとめてみました。

急性痛と慢性痛の違い

痛みは侵害刺激への警告信号であり、必要不可欠であると書きましたが、これは急性痛のみに当てはまることです。

慢性痛は原因のない痛みであり、認知の歪みによって引き起こされます。そのため、人体にとっては有害でしかなく、必要のない痛みと言い換えることができます。

急性痛 慢性痛
原因 外傷、手術 認知の異常
組織損傷・炎症所見 ある ない
罹患期間 損傷の治癒まで 3カ月以上
痛みの感受性 正常 増強
消炎鎮痛薬 有効 無効、乏しい
抗うつ薬 乏しい 有効な場合が多い

疼痛の伝達経路

痛みは侵害受容器(ポリモーダル受容器、高閾値侵害受容器)と呼ばれるセンサーによって感知され、電気信号に変換されます。

電気信号は神経を通過しながら脊髄後角に入り、電気信号を神経伝達物質と呼ばれる化学物質に変化させます。そこで情報を集約し、脳へ伝える神経に信号が送られます。

さらに感覚情報は視床に集約されて上行します。脳では痛みを感じる大脳皮質や感情を司る大脳辺縁系などの部位に送られ、最終的に痛みとして認知することになります。

痛みの経路

慢性痛が発生する原因

急性痛を慢性痛に移行させないことが大切であるとよく言われますが、具体的には「痛みに慣れないこと」が大切であると言い換えられます。

ヒトは大脳の海馬で記憶をすることになりますが、記憶とは、覚えた内容や動作の電気パターンが長期間、再現されやすくなった状態を指します。これを記憶強化と呼びます。

この特質は、痛みを中継する脊髄後角にもあることがわかってきており、持続的な痛みが加わることで痛みの電気信号を強化してしまうことになるのです。

それが結果的に、少しの刺激でも痛みを再現する体質となってしまい、認知の異常を引き起こしてしまいます。

痛みを伝える神経線維の覚え方

神経線維は、ErlangerとGasserによる文字式分類が有名ですが、その全てを覚えることは難しいので、以下に簡便法による覚えやすい分類を掲載します。

名称 太さ(μm) 伝導速度(m/秒) 機能
Aα(Ⅰa) 20 100 運動刺激・深部感覚
Aβ(Ⅰb) 10 50 触覚・圧覚
Aγ(Ⅱ) 5 25 筋紡錘への運動刺激
Aδ(Ⅲ) 3 13 痛み・温度覚
B 2 7 交感神経節前
C(Ⅳ) 1 1 痛み・交感神経節後

名称の()内はLloydによる数学式分類であり、意味合いは同じなので、混合して間違えないように把握しておくことが大切です。

神経伝導速度
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痛覚過敏とアロディニアの違い

慢性痛の多くは、痛みを通常よりも強く感じてしまう痛覚過敏を呈していますが、これは痛みを伝達するAδやC線維の閾値が下がっていることに由来します。

これに似た症状にアロディニアという障害が存在しますが、こちらは触覚を伝えるAβ線維に異常が存在しており、伝達そのものが異常となっています。

ハケで触る ピンで突く
正常 痛くない 少し痛い
痛覚過敏 痛くない とても痛い
アロディニア とても痛い とても痛い

原因部位と痛みの特徴について

一般に疼痛は、その原因となっている組織によって痛みの訴え方が微妙に違っています。たとえば、深部(筋肉や内臓)の痛みは鈍く、場所は不明瞭となります。

それに比べて皮膚や関節などは鋭利痛で場所は限局しています。以下に原因組織と痛みの訴え方の特徴を記載します。

原因組織 痛み 強さ 場所
骨膜 鋭利痛、激痛 最強 明瞭
神経 鋭利痛、ビリビリ 明瞭
皮膚 鋭利痛 明瞭
関節 鋭利痛、熱感、腫脹 明瞭
靭帯 鈍痛、重くだるい 不明瞭
椎間板 鈍痛、重くだるい 不明瞭
筋肉 鈍痛、重くだるい 不明瞭
鈍痛、深い、叩打痛 不明瞭
内臓 鈍痛、重くだるい 不明瞭
血管 疼く、脈打つ 不明瞭
関節軟骨 感受性なし

一次痛と二次痛について

痛みを伝える神経は、Aδ線維とC線維がありますが、Aδは一次痛を伝達することになります。一次痛とは、最初に出現する刺すような鋭い痛みです。

また、一次痛は浅部組織と深部組織で、痛みを感じとる受容器が異なります。

一次痛(浅部組織)
侵害受容器と疼痛①
 一次痛(深部組織)
侵害受容器と疼痛②

二次痛は一次痛から少し遅れて発生する痛みで、ズキズキするような長引く痛みになります。

二次痛
侵害受容器と疼痛③

痛みの原理と治療法

薬物療法は痛みの治療として使用されるのはもちろんですが、診断的な意味合いを持って使用される場合も多いです。

どの薬物が最も効果を発揮するかを確認することにより、どこに問題があるかを判断することも可能です。

分類 原理 治療法
痛みの原因に対する治療 受容体のブロック 抗痙攣薬
神経伝達の遮断 局所麻酔薬
NMDA受容体拮抗薬
炎症の鎮静化 抗炎症薬
大脳辺縁系の抑制 抗不安薬
鎮痛系への賦活 鎮痛系の補助 抗うつ薬
アドレナリン作動薬

鎮痛系の賦活による治療法

慢性痛に対するアプローチとして、ヨガや座禅、自律訓練法が有効であることが報告されていますが、これらに共通することは鎮痛系を賦活させる効果があることです。

具体的には、副交感神経を有意に高めることにより、痛みを伝えるC線維(交感神経節後)を抑制させることができます。

しかしながら、鎮痛系の賦活はあくまで一時的な対症療法に過ぎず、効果を持続させるためには習慣化させる必要が出てきます。

認知の異常を改善させることが鍵

慢性痛の原因が認知の異常であることは前述しましたが、根本的に治癒させるためには認知を変えていく以外に方法はありません。

そのためには、痛みを中継する脊髄後角の長期憎悪を緩めていき(痛みをコントロールする)、すでに損傷は回復していることを認知していくことが必要になります。

そのための最も効率的な治療法が、認知行動療法になります。

詳細については、「認知行動療法をわかりやすく解説」という記事にまとめていますので、是非ともそちらをご確認ください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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