この記事では、深指屈筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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深指屈筋の概要
深指屈筋は浅指屈筋の深層にあり、停止部は浅指屈筋の腱の隙間を通過して指先(末節骨)まで達します。
人差し指から小指までを曲げる指屈曲の主力筋のひとつで、第2-3指は正中神経に、第4-5指は尺骨神経に支配されています。
正中神経の単独麻痺では、浅指屈筋と深指屈筋の第2-3指が障害されるため、第4-5指のみが屈曲する現象が起こります。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | ①第2,3指:正中神経
②第4,5指:尺骨神経 |
髄節 | C8-T1 |
起始 | 尺骨前面、前腕骨間膜の前面 |
停止 | 第2-5指骨の末節骨底の掌側 |
動作 | 第2-5指DIP,PIPの屈曲、手関節の掌屈 |
栄養血管 | 前骨間動脈 |
筋体積 | 92㎤ |
筋線維長 | 11.0 |
速筋:遅筋(%) | 52.7:47.3 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
手指屈曲 |
手関節掌屈 |
1位 | 浅指屈筋 | 浅指屈筋 |
2位 | 深指屈筋 | 深指屈筋 |
3位 | 虫様筋 | 尺側手根屈筋 |
4位 | – | 橈側手根屈筋 |
深指屈筋の触診方法
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写真では、浅指屈筋の収縮を除外する目的で、第2指のMP関節・PIP関節を伸展位で保持しています。
その状態でDIP関節を屈曲させることにより、DIP関節屈曲に作用する唯一の筋肉である深指屈筋の腱を手掌側にて触診しています。
第2指以外の深指屈筋は分離が乏しいため、第3-5指の深指屈筋は独立して働かせることは困難です。
前腕の断面図
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前腕中央を断面でみた場合、浅指屈筋は長掌筋と橈側手根屈筋の深層に位置しており、浅指屈筋の深層には深指屈筋と長母指屈筋があります。
浅指屈筋は深指屈筋と比較すると断面積はやや小さいですが、浅部に位置しているために手関節や手指の屈曲に対しては貢献度が高くなっています。
ストレッチ方法
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ストレッチ側の腕を肘関節伸展・前腕回外・手関節背屈位とし、反対側の手で第2-5指のDIP関節までを把持します。
そのまま手関節と手指全体(DIP関節まで)を伸展していきます。この際に、肘関節を軽度屈曲すると停止部が主に伸張されます。
筋力トレーニング
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柔らかいゴムボールなどを把持して、(DIP関節を中心に)指先を曲げてゴムボールを潰します。
トリガーポイントと関連痛領域
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浅指屈筋や深指屈筋にトリガーポイントが存在すると、第3-5指に痛みやしびれ、チクチク感などが生じます。
アナトミートレイン
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前腕屈筋群はSFAL(スーパーフィシャル・フロントアーム・ライン)に繋がっており、指先にしびれが波及する原因になります。
前腕屈筋群には長母指屈筋も含まれていますが、長母指屈筋にトリガーポイントが出現すると第1指に痛みやしびれ、チクチク感などが生じます。
このことから、第1指および第3-5指に痛みなどを訴える場合は、SFALの硬さを調べていくことが大切になります。
関連する疾患
- 深指屈筋腱断裂
- 石灰腱炎
- ばね指
- フォルクマン拘縮
- 屈指
- 正中神経高位麻痺(前骨間神経麻痺)
- 尺骨神経高位麻痺(肘部管症候群) etc.
No man’s land
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PIP関節から遠位手掌皮線までの間は元々の屈筋腱鞘が非常に狭く、そこに深指屈筋腱と浅指屈筋腱の両者が通過しています。
そのため、腱に損傷(炎症)が起きるとさらに狭小化が進行して、癒着が容易に起こります。
この部分は一般的に損傷時の予後が非常に悪いため、ヒトが立ち入ってはいけない場所(No man’s land)と呼ばれます。