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温熱療法の治療効果と方法|適応と禁忌について解説

温熱療法の効果について解説していきます。

温熱療法の歴史

温熱療法の原型とされている燃灼法は、いまから2000年以上前である紀元前のエジプトより実施されていました。

その方法は、動物の膀胱の袋に温水を入れ、坐骨神経痛や直腸の部分的炎症に使用されていました。

日本では古来より温泉を治療の一つの手段として利用してきており、現在でも各地に湯治場が設置されており、我々の生活と密接な関わりを持っています。

温熱刺激による生体の生理学的影響

温熱効果 内容
循環の促進 血管の拡張、血流量の増加、酸素分圧の上昇、血管外の水分量の増加、心拍数と心拍出量の増加
局所新陳代謝の促進 エネルギー消費の増加、酸素摂取量の増加、組織の治癒促進
神経・筋系への影響 交感神経の抑制、感覚神経伝導速度が増加、γ遠心性線維の活性低下
組織の粘弾性の変化 組織の長さの変化量が増幅、関節拘縮・瘢痕組織などに対する徒手的または機械的矯正の前処置として行う
疼痛の軽減 発痛物質の除去(ブラジキニンなど)、疼痛閾値の上昇、筋スパズムの低下、痙性の低下
筋収縮能の低下 一時的な最大筋力・筋持久力の低下、筋肥大の促進効果、筋損傷の抑制効果、筋委縮の進行抑制・回復促進
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血管拡張による血液循環の促進

ホットパックなどの表在性温熱刺激は、局所の皮膚血管において顕著な血管拡大をもたらします。しかし、筋肉を通過する深い血管への拡張作用は僅かです。

そのため、骨格筋の血流を増やすためには、超音波などの深達性が高い温熱療法を使用するか、運動などで筋収縮を促す必要があります。

皮膚血管拡張に伴う血流の増加は、組織温度の上昇に反応して起こり、身体を過度な加熱と組織損傷から守る働きがあります。

動脈硬化などの循環障害では、局所の血流量の増加が起きにくいことにより熱が放散されず、熱傷を起こす危険性があるので禁忌とされています。

また、皮膚血管から出血している場合も、血管が拡張されることで出血量が増加するので禁忌になります。

神経への影響

組織温度が上昇すると神経伝導速度が上がり、感覚神経と運動神経でともに伝導潜時が減少することが報告されています。

神経伝導速度は、温度が1℃上がるごとにおよそ2m/secほど速度が上昇するとされており、疼痛閾値の上昇下や循環改善に寄与していると考えられています。

疼痛閾値の上昇を最大限に発揮するためには、末梢神経の走行上に温熱刺激を加えることが重要となります。

筋温を42℃まで上昇させるとⅡ型筋紡錘遠心性線維とγ遠心性線維の発火率が下がり、ゴルジ腱受容器から出るⅠb型線維の発火率が上昇します。

こうした変化はα運動ニューロンの発火率を低下に働き、結果として筋スパズムを低下させる方向に寄与します。

ホットパックなどの表在性温熱刺激では筋温の上昇はあまり認められないため、Ⅰb型線維やⅡ型線維への影響は少ないと考えられます。

表在性温熱刺激では、主にγ遠心性線維の発火率の低下が関与している考えられ、活動低下は筋紡錘の伸展を低下させ、α運動ニューロンの活動低下を起こします。

筋力の変化について

筋力に対する温熱刺激の効果として、40℃から43℃の渦流浴後に大腿四頭筋の最大筋力と筋持久力が低下したとの報告があります。

その他の実験でも、最大筋力と筋持久力については、深達性または表在性のどちらの温熱刺激においても、実施後の30分間ほどは低下することが指摘されています。

そのメカニズムについては前述した神経への影響と同様で、α運動ニューロンの活動低下に起因しています。

実施から30分後には筋力が徐々に回復していき、さらに2時間後には治療前のレベル以上のパフォーマンスが発揮できるとの報告もあります。

その理由としては、痛覚閾値が上昇した状態が残存しているためだと考えられています。

リハビリにおいてはそれほど注意するほどの変化ではありませんが、筋力強化の前に温熱療法を行う際は、少しだけ頭に入れておくといいかと思います。

組織の粘弾性の変化

外傷後の結合組織は炎症によって短縮をきたしやすく、結果として関節可動域を制限する要因になります。

短縮した結合組織に対して温熱刺激を実施し、組織の温度を上げるとその組織の伸展性が高まることになります。

伸展性が乏しい状態で無理矢理のストレッチを加えると断裂などの危険性があるため、事前に温熱刺激を加えることで効果的かつ低リスクでの介入が可能となります。

伸展性が最大に高まるのは組織温度が40-45℃に到達したときになります。その状態のときに伸張刺激を加えることで最大の効果を発揮することができます。

浅層の筋膜や瘢痕組織、表在腱などはホットパックで対応が可能ですが、深層の筋膜や関節包、深部腱などには超音波などの深達性が高い温熱療法を選択します。

疼痛が軽減するメカニズム

傷害部から発した痛みの求心性インパルスは、脊髄を介して反射的に遠心性交感神経インパルスを傷害部に送られます。

結果として、血行の減少、代謝異常による発痛物質の増加などの現象を引き起こし痛みがさらに増加するという悪循環を引き起こします。

そして、運動神経を介する筋緊張の亢進、交感神経遠心路を介しての血管収縮、カテコールアミンの放出などによる発痛物質の蓄積が起こります。

さらには傷害求心系経路の過敏性の亢進、内因性疼痛抑制系の機能低下、精神的な痛みの増幅などの要素が重なることによって慢性痛に移行します。

温熱療法で疼痛が軽減するメカニズムとしては、即時的には血流の改善、発痛物質の除去、筋スパズムの減少、疼痛閾値の上昇、副交感神経の活性化が関与します。

また、長期的には炎症症状の消失、組織損傷の治癒、疼痛の悪循環からの脱却などが起因していきます。

局所新陳代謝の促進

温熱刺激による温度の上昇は、細胞の化学反応に影響を与えることがわかっており、10℃の上昇ごとに細胞における化学反応や代謝率は2-3倍に増加します。

それに伴いエネルギー消費も増加していき、組織における酸素摂取量を増加させることで対応し、結果として組織の治癒を促進させる方向に作用します。

また、温熱刺激による血流速度の上昇や酵素反応速度の上昇との相乗効果により、さらに組織治癒の促進に寄与します。

温熱療法の分類

A.深遠性による分類

表在熱 深部熱
赤外線 極超短波
ホットパック 超短波
パラフィン浴 超音波
渦流浴

B.伝導様式による分類

伝導 対流 変換
ホットパック 水治療法 レーザー
パラフィン浴 超音波
極超短波

温熱療法の臨床的意思決定

臨床にて温熱療法を選択する場合は、①疼痛の緩和、②拘縮を改善するための事前アプローチがほとんです。

とくに拘縮の改善については、原因部位がどこに存在するかで表在性温熱刺激を適応するか、深在性温熱刺激を適応するかが分かれます。

治療部位が表在で広範囲にわたる場合はホットパック、指先や足先などの末梢部で凹凸がある場合はパラフィン浴が効果的です。

治療部位が深部で広範囲にわたる場合は極超短波(マイクロ波)、限局している場合は超音波が効果的となります。

ホットパック

厚い木綿の布で覆われたシリカゲルパックを約80℃に設定された加温装置内で加熱し、それをタオルなどで覆って患部に20分ほど当てて使用します。

最近では、電子レンジでチンするだけで自宅でも簡単に使用できるタイプも売られており、市販にて購入することもできます。

効果として、皮膚温は施行直後急激に上昇し、約8分で10℃ほど上昇します。皮下1㎝までは3℃の温度上昇が得られますが、それより深部への効果は乏しいです。

効果は僅かですが、脂肪や筋肉などの深部組織の温度上昇を狙う場合は、最低でも20分以上の実施が必要となります。

適応は広範囲の浅部組織であり、頚部や腰背部に多用されます。禁忌は出血傾向の急性期や悪性腫瘍、感覚障害、循環障害、皮膚疾患などです。

パラフィン浴

自動調温式容器の中で50-55℃に温められているパラフィンに、治療部位を6-10回ほど繰り返して浸していきます。

その後に手をビニール袋などでくるんでから、さらに上からタオルで包みます。治療部位を高く上げて、そのまま状態で15分ほど温めます。

パラフィン浴が高温にも拘わらず熱さを感じにくいのは、水に比べて熱伝導速度が極めて小さいため、皮膚の忍耐温度が高くなっているためです。

適応は四肢末梢部の浅部組織であり、輪郭が複雑な領域にうまく接触を保てるという長所があります。とくに関節リウマチや外科系障害の手指に用いられます。

禁忌は前述したホットパックと同様で、出血傾向の急性期や悪性腫瘍、感覚障害、循環障害、皮膚疾患などです。

パラフィン浴

引用画像(1)

極超短波療法(マイクロ波)

極超短波療法は、周波数2.45GHz、波長約12.5㎝の電磁波を利用した深部加熱を目的とした温熱療法です。その仕組みは電子レンジとほぼ同じです。

極超短波のエネルギーの50%は皮膚で反射され、皮膚を通過した電磁波は組織の分子を振動させ、摩擦熱を起こして温めます。

ホットパックの深達性が約1㎝に対して、極超短波は約3-4㎝であり、より深部まで温めることができる方法です。

適応は広範囲の深部組織であり、とくに肩関節や膝関節、腰部に多用されます。

禁忌は一般的な温熱療法の禁忌に加えて、体内に金属製物質が埋め込まれている場合、ペースメーカー、妊婦の腹部、子供の骨端部、眼球などがあります。

極超短波

引用画像(1)

超音波療法(温熱療法)

超音波とは、人間の可聴範囲の限界である16kHz以上の周波数を持つ音波のことを指します。

医療分野では、超音波診断装置、超音波メス、癌組織に対するハイパーサーミア、深部組織の過熱を目的とした超音波療法などで幅広く活用されます。

【ハイパーサーミアとは】悪性腫瘍に対して温熱療法は通常禁忌ですが、本来の癌細胞は熱に弱いため、腫瘍部を集中的に約42℃まで加温することで選択的に破壊する方法です。この治療法は医師のみが可能で、理学療法の範疇には含まれません。

超音波の吸収は伝播された組織の蛋白質の含有量に比例するため、膠原組織を多く含む骨や関節包などでよく吸収し、温度上昇が起こりやすくなります。

とくに関節包は関節拘縮を引き起こしている最大の原因部位であるため、制限している部位に照射してから伸張を加えることは効果的です。

適応は限局した深部組織で、ギプス固定後や火傷後の拘縮、術後の癒着や瘢痕などに対して高い効果を発揮します。

禁忌は一般的な温熱療法の禁忌に加えて、虚血部位や子供の骨端部などがあります。

超音波の組織別の吸収特性について

組織 減衰(1MHz) 蛋白含有率
96%/㎝ 20-25%
軟骨 68%/㎝  -
59%/㎝   -
皮膚 39%/㎝   -
血管 32%/㎝ 15-20%
筋肉 24%/㎝ 10-15%
脂肪 13%/㎝   -
血液 3%/㎝   -

水治療法(温熱療法)

水治療法は運動療法と物理療法を組み合わせることにより、全身の組織温度を高め、効果的に障害部位の治癒を促す方法です。

温熱効果は、その水温や治療時間、治療部位の範囲、熱伝導率によって影響を受けるため、最適な温度を選択することが求められます。

温度
42°以上 39-42°
血管 収縮 拡張
血圧 上昇 低下
心拍数 増加 減少
緊張 低下
触覚 低下

お勧めの一冊

引用画像/参考資料

  1. 株式会社日本メディックス

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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