骨癒合の促進のためのリハビリ治療について解説していきます。
この記事の目次はコチラ
骨癒合までの日数
骨折してから骨癒合までの期間を部位別に記したものとして、有名なものに「Gurlt」と「Coldwell」の表があります。
部位 | Gurlt | Coldwell | |||
仮骨出現 | 骨癒合まで
(累計) |
機能回復まで
(累計) |
|||
指骨 | 2週 | 2~3週 | 3~6週 | 6週 | |
中手骨 | 2週 | 2~3週 | 3~6週 | 6週 | |
中足骨 | 2週 | 2~3週 | 3~6週 | 6週 | |
肋骨 | 3週 | ||||
橈・尺骨 | 骨幹部 | 5週 | 3週 | 6~8週 | 10~12週 |
肘関節内 | 5週 | 3週 | 5週 | 12~14週 | |
手関節内 | 5週 | 3週 | 6週 | 7~8週 | |
鎖骨 | 4週 | ||||
上腕骨 | 下端部 | 2~4週 | 6週 | 8週 | |
骨幹部 | 6週 | 2~4週 | 6週 | 8週 | |
上端部 | 7週 | 2~4週 | 6週 | 8~12週 | |
骨盤 | 4週 | 8週 | 8~16週 | ||
大腿骨 | 頚部 | 12週 | 12週 | 24週 | 60週 |
転子間部 | 4週 | 12週 | 16週 | ||
骨幹部 | 8週 | 6週 | 12週 | 14週 | |
顆上部 | 6週 | 12週 | 14週 | ||
膝蓋骨 | 6週 | 6週 | 6~12週 | ||
脛・腓骨 | 膝関節内 | 7~8週 | 6週 | 6週 | 14週 |
骨幹部 | 7~8週 | 4週 | 6週 | 12週 | |
足関節内 | 7~8週 | 6週 | 6週 | 12週 | |
踵骨 | 6週 | 8週 | 12~14週 |
骨癒合の日数は、①骨折部の接合、②固定、③血流、④適度な圧迫刺激といった癒合の四条件によって大きく左右されることになります。
また、小児の場合は成人よりも20-30%ほど癒合が早く、反対に高齢者では通常より遅くなる傾向にあります。
骨が折れる外力
屍体を用いた実験によると、大腿骨は約300㎏の屈曲力を加えることで骨折が発生したことが報告されています。
また、屈曲力に加えて捻転力を加えると屈曲力だけを加えた場合と比較して、わずか数分の一の外力で骨折が発生します。
骨強度は30歳代をピークに減少していき、70歳代ではピーク時の80%程度まで低下します。
骨強度には骨密度が70%、骨質が30%ほど関与しています。
骨粗鬆症は成人骨量の70%以下と定められており、女性の50歳以上では3人に1人が該当するとされています。
骨折部位の整復方法
骨折箇所に転位がみられる場合は、まずは整復治療が行われます。
方法として、通常は長軸方向に牽引力を与え、さらに骨折の原因となった外力と拮抗する方向へ矯正力を加えていきます。
整復後は再転位を防ぐために、ギプス包帯やシャーレにて固定します。
関節周囲の骨折などで整復位の保持が困難なケースにおいては、持続牽引にて長軸方向に引っ張り、整復位を保持するようにします。
整復が困難である場合、または再転位のリスクが高い場合は手術療法が選択されます。
骨折に対する手術療法の分類
1.髄内釘固定
- 髄内釘はプレート固定ほどの頑強な固定力はない
- 閉鎖性の操作が特徴であり骨癒合が良好で感染率が低い
2.プレート固定
- プレートによる圧迫固定法は骨折部を頑強に固定する
- 組織壊死を最小限に骨癒合を誘導する生物学的固定へと変化している
3.創外固定
- 解放骨折で患部が汚染されていたときに選択されやすい
- 仮骨の形成前は完全固定、形成後は軸圧のみを許可する
4.骨移植
- 骨欠損に対して腓骨や腸骨からの骨移植術が行われる
- 血行の面で不利な点がある
- 骨折面の形成と十分な接合面積が期待でき安定性がよい
骨癒合の過程について
骨癒合の過程は、①炎症期、②修復期、③再生期の三つの時期に分類され、これらの期間は一部で同時に進行していきます。
1.炎症期
- はじめに起こる時期であり、全体の10%に相当する
- 骨膜が破綻し骨折により生じた間隙と髄腔内には血腫が形成される
2.修復期
- 炎症期の次に起こる時期で、全体の40%に相当する
- 血腫に新生血管が侵入し軟骨芽細胞は内軟骨性仮骨を形成する
3.再生期
- 最後に起こる過程であり、全体の70%に相当する
- 仮骨の再吸収と骨細胞への置換により癒合が完了する
促進方法①:圧迫刺激
骨癒合には、①骨折部の接合、②固定、③血流、④適度な圧迫刺激といった癒合の四条件が必要となります。
④では、骨折部を長軸方向から適度に圧迫することにより、再生期にて仮骨が骨細胞へ置換される働きを促進させる効果を発揮します。
そのため、修復期にて仮骨が形成されてきたら、下肢骨折の場合は徐々に荷重を加えていきます。
以下に、荷重練習の方法と下肢にかかる荷重量の目安を記載します。
方法 | 荷重(目安) |
平行棒内(つま先のみ接地) | 20% |
松葉杖 | 33% |
ロフストランド杖 | 67% |
Q杖 | 70% |
T杖 | 75% |
促進方法②:アクセラス
超音波骨折治療器(アクセラス)は、非常に出力の弱い超音波をパルス状(断続的)に一定時間あてることで骨折を治療する治療器です。
超音波はコラーゲン含有量が高い組織ほど吸収率が高く、その中でも骨は最も吸収しやすい部位に属しています。
治療効果として、細胞内カルシウムの増加や線維芽細胞による蛋白合成率を高める働きがあるため、修復期の仮骨形成を促進する効果が期待できます。
超音波治療を実施することで骨癒合までの期間を40%ほど短縮できたとの報告もあり、とくに難治性骨折に対しては有効であるとしています。
頻度は1日1回、毎回20分、骨癒合が完了するまで実施することが推奨されています。
引用元:TEIJIN MEDICAL WEB |
促進方法③:患部外トレーニング
骨折部の癒合には接合や固定が不可欠ですが、これらは癒合に必要な血流を阻害してしまう方向に働いてしまいます。
その対策として、患部の動きに影響を与えない周囲の筋肉を動かすことにより、患部への血行を促進するように働きかけていきます。
ここに関してはリスクも伴いますので、骨折部が離開する方向に働く筋肉が収縮しないように最善の注意をはらっていく必要があります。
また、患部外トレーニングには固定期間中に隣接する関節の拘縮を引き起こさないようにするといった目的も存在します。