肩関節の関節内インピンジメントについて

関節内インピンジメントとは?

肩の周囲組織(関節包・筋膜など)が**局所的に硬い=“短縮側”になると、関節運動の最終域で上腕骨頭が反対方向へブレ(平行移動)**ます。
その結果、関節窩‐骨頭が衝突し、関節唇や腱板が挟まれて痛み/引っかかりが生じます。
※肩峰下インピンジメント(外転60–120°付近で痛い)と違い、最終可動域で誘発されやすいのが特徴。


起こりやすい背景(ざっくり結論)

  • 関節不安定症:前方(または後方)関節包の弛緩+反対側の短縮で骨頭がブレる

  • 肩甲帯のモビリティ低下

    • 肩甲胸郭:小胸筋・広背筋・肩甲挙筋の短縮上方回旋・後傾が出ない

    • 肩鎖:挙上の可動が乏しい
      → 肩甲骨や鎖骨が動かない分、肩甲上腕関節だけが過剰に動いて不安定になり、関節内インピンジメントへ


よく詰まる動き:水平内転(クロスボディ)

症状:最終域で前方の刺すような痛み/詰まり+可動域低下
主な要因

  1. 骨頭前方変位:大胸筋過緊張、肩甲下筋弱化、前方包弛緩

  2. 後方組織の硬さ:棘下筋・小円筋・三角筋後部・後方関節包

  3. 肩甲骨モビリティ不足:上方回旋/外転が出ない(肩甲挙筋・菱形筋・広背筋の短縮がブレーキ)


評価の組み立て(短縮側を特定する)

  • クロスボディ・アダクションテスト:後方組織の突っ張り/痛みの質を確認

  • Jobe(ER/IR)と内外旋等尺性:腱板出力(特に肩甲下筋/棘下筋

  • ササメント:肩甲骨上方回旋・後傾を徒手補助して症状が軽ければ、肩甲骨由来が濃厚

  • 前方不安定サイン:最終域で不安感/抜ける感じ→骨頭前方ブレを示唆


介入の原則(順番が命)

  1. 短縮側を先にゆるめる(原因側のブレーキ解除)

  2. 骨頭の“中心化”を学習(腱板アイソメトリクスなど)

  3. 肩甲帯の可動性回復→協調強化(下部僧帽筋・前鋸筋)

  4. 痛みが落ち着いたら最終域コントロールへ段階アップ


具体的アプローチ

A. 軟部組織・関節包

  • 後方関節包/後方筋群のリリース

    • クロスボディ・ストレッチ(肩甲骨を固定し、上腕骨だけ水平内転)

    • スリーパーは末梢しびれ・疼痛誘発があれば回避/角度を浅く

  • 小胸筋ストレッチ(肩甲骨後傾を出しやすく)

  • 広背筋・肩甲挙筋・菱形筋の長さ改善(肩甲骨上方回旋/外転を促す)

  • 関節モビライゼーション

    • 骨頭後方グライド(前方ブレの是正)

    • 必要に応じて下方グライド(最終域の詰まり緩和)

B. 腱板・肩甲帯の再学習

  • 腱板アイソメトリクス(痛み0–3/10):

    • **内旋(肩甲下筋)・外旋(棘下筋/小円筋)**を中間位で軽負荷→10秒×8–10回

  • 下部僧帽筋+前鋸筋

    • 壁スライド+リーチ、プッシュアッププラス(肋骨前突は抑える)

    • 肩甲骨後傾・上方回旋を意識(鏡/セラピスト補助)

  • クローズドチェーンでの中心化

    • テーブル荷重で肩甲骨セット→上腕骨微小回旋(痛みなく再現)

  • 最終域コントロール

    • 痛みが消え始めたら、水平内転終末位手前で小反復→徐々に最終域へ

C. 動作・環境調整

  • 終末位での反復・勢い動作を一時回避(キャッチング、手を後ろへ深く回す等)

  • キーボード/マウス位置を肘体側へ、胸郭を起こし小胸筋短縮姿勢を避ける

  • テーピングやショルダーアシストで肩甲骨後傾を学習補助


ありがちなつまずき&対処

  • ストレッチを強くやりすぎて悪化:痛み0–3/10目安。**“潰れ痛”**は避ける。

  • 肩甲骨が全然動かない:先に小胸筋・広背筋の長さを出してから協調訓練。

  • 腱板トレで三角筋や僧帽が頑張る等尺性・軽負荷・短時間高頻度がコツ。ポジションを痛くない中間位に戻す。


受診の目安(レッドフラッグ)

  • 外傷直後の可動不能、脱臼既往+反復する抜け感、安静時/夜間痛が強い、しびれや筋力低下
    → 画像評価や専門医へ相談を。


よくある質問(Q&A)

Q1:肩峰下インピンジと何が違う?
A:肩峰下は外転中間域で痛み、主に肩峰下空間の狭小。関節内は最終域で骨頭のブレ→関節内で挟むのが中心です。

Q2:まず何から始めればいい?
A:多くは後方組織(関節包・棘下筋群)と小胸筋が“ブレーキ”。ここを先に緩め、次に肩甲下筋・棘下筋の等尺性で“中心化”を学習します。

Q3:スリーパーストレッチは有効?
A:痛みが出ない角度で軽くが原則。しびれ・強い痛みが出るならクロスボディへ切替。目的は後方組織の柔軟性です。

Q4:どのくらいで良くなる?
A:個人差がありますが、1–2週間の毎日ケアで最終域の“詰まり感”が軽くなる例が多いです。姿勢/作業環境の調整も同時に。


最終更新:2025-10-08