肩関節の関節内インピンジメントについて

肩関節の痛みの原因になりやすい関節内インピンジメントの治療について、わかりやすく解説していきます。

関節内インピンジメントとは

関節内インピンジメントを簡単に説明すると、関節周囲に硬さが存在することにより、骨頭が硬い側とは反対に変位する現象をいいます。

骨頭が変位すると何が問題かというと、関節窩と骨頭が衝突し、関節唇や腱板などの周囲組織を挟み込んで痛みを起こします。

似た症状として肩峰下インピンジメントが存在しますが、こちらは上腕骨頭が上方変位して肩峰下と衝突する現象です。

肩峰下インピンジメントは肩峰骨頭間距離が最も狭くなる外転60~120度で痛むのに対して、関節内インピンジメントは関節運動の最終域(組織が最も伸張されるポジション)で起こります。

関節内インピンジメントが起こる原因

肩関節に関節内インピンジメントを起こす主な原因は、関節不安定症と肩甲骨や鎖骨の可動域低下によります。

関節不安定症とは、前述したように関節周囲に短縮した組織が存在し、骨頭が短縮側とは反対にブレる現象をいいます。

肩関節の大きな可動域は、①肩甲上腕関節、②肩甲胸郭関節、③肩鎖関節の複合した動きで実現できています。

しかし、肩甲胸郭関節(肩甲骨)や肩鎖関節(鎖骨)の動きが乏しくなると、代償的に肩甲上腕関節が過剰に動こうとします。

そうすると肩甲上腕関節は不安定となりやすく、関節内インピンジメントを起こす原因となります。

肩甲骨と鎖骨の動きと制限

身体には硬くなりやすい筋肉と弱化しやすい筋肉が存在しており、筋肉が硬くなるとそこに付着する関節は制限をきたします。

肩甲胸郭関節では小胸筋と広背筋、肩甲挙筋が硬くなりやすいため、上方回旋と後傾の動きが制限されやすい傾向にあります。

硬い筋肉の拮抗筋は弱化しやすいので、硬い筋肉をほぐすのと同時に、拮抗筋である僧帽筋下部と前鋸筋の収縮練習が必要です。

肩鎖関節は挙上の動きが制限されやすいため、治療では小胸筋の伸張、広背筋のリラクゼーション、僧帽筋上部の収縮練習が有用となります。

臨床では肩甲上腕関節にアプローチするよりも、肩甲骨のモビリティを改善するほうが良好な結果が得られるケースが多いです。

肩関節の水平内転制限

関節内インピンジメントを起こしやすい方向として、肩関節の水平内転があり、動かすと肩関節前方の痛みと可動域制限が認められます。

水平内転制限の原因を大きく分けると、①骨頭の前方変位、②後方組織の硬さ、③肩甲骨のモビリティ低下があります。

上腕骨頭が前方変位する原因としては、大胸筋の過緊張、肩甲下筋の弱化、関節包前方の緩みなどが考えられます。

水平内転時に後方組織が伸びないと骨頭が前方にブレますが、原因には三角筋後部や棘下筋、小円筋、関節包後方の硬さがあります。

水平内転時に肩甲骨は上方回旋と外転方向に動きますが、肩甲骨の動きが乏しい場合は過剰に肩甲上腕関節が動くことになってしまいます。

肩甲骨の上方回旋と外転を制限する組織には、肩甲挙筋や菱形筋、広背筋の硬さが関与しています。

肩関節の水平内転制限には、ここまでに記述した要素が関与しているため、患者の状態に応じてアプローチしていくようにしてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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