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脳卒中後の片麻痺における亜脱臼の原因と肩関節の痛み


脳卒中後の片麻痺を呈している患者で、亜脱臼が認められるケースは非常に多いと思います。また、それに伴って痛みが発生している場合も見受けられます。

ここでは、亜脱臼を起こしている原因となぜ痛みが起こるのかについて解説していきます。

肩関節は最も不安定

そもそも肩関節は、すべての関節の中で最も不安定な関節です。安定性を代償にしたからこそ、最も広い可動域を有することができているのです。

実際に肩関節が全関節の中で脱臼する頻度はダントツに高く、その割合は80%を占めるといわれています。

その理由として、上腕骨頭の関節面が関節窩の3倍以上もあることが挙げられます。また、関節窩の深さも5㎜程度と非常に浅い構造となっています。

肩関節

肩関節を安定させる機構

そんな不安定な肩関節を安定させるために、いくつもの安定化機構が働くことによって肩関節は脱臼しないように調節されています。

具体的には、①関節唇、②関節包、③靭帯、④関節窩の傾斜(5度上方)、⑤関節腔の陰圧、⑥筋肉の緊張が挙げられます。

これらの作用により、上腕骨は重力によって下方に引き下がること(亜脱臼)を防止しているのです。

片麻痺で亜脱臼する原因

脳卒中後では、上述した安定化機構のいずれかが破綻することによって、上腕骨を支える(引き上げておく)ことが出来ずに、亜脱臼を呈することになります。

いずれかと書きましたが、関節唇や関節包、靱帯がいきなり緩んでしまうことはありません。関節腔の陰圧や関節窩の傾斜が崩れるのも、やはり二次的な問題です。

なので、最も重要なのは筋肉の緊張が緩む(麻痺する)ことが原因であり、その他の問題は二次的な要素に過ぎないといえます。

亜脱臼の状態もヒトによって異なる

片麻痺の症状が多岐にわたるように、亜脱臼の状態もすべて同じというワケにではありません。これは、どの筋肉にどのような緊張が入っているかの違いともいえます。

上腕骨を関節窩に引き付ける上で重要な腱板筋群(①棘上筋、②棘下筋、③小円筋、④肩甲下筋)ですが、これらは緊張が低下しやすくなります。

反対に、大胸筋は緊張が亢進している場合も多く、その際は骨頭が前方に偏位した状態の亜脱臼を呈することになります。

なぜ亜脱臼で痛みが出現するのか

麻痺による亜脱臼は発生初期より出現するのに対して、痛みというのは遅れて出現する場合も多いのが特徴です。

その理由として、亜脱臼に伴う力学的ストレスが蓄積されていき、軟部組織に微細損傷を生じている可能性が示唆されます。

とくに棘上筋はストレスを強く受ける部位であり、肩関節痛の原因となっている場合が多いです。

寝返り時に上肢の忘れで肩に痛み

臨床でもよく見られる症状として、非麻痺側への寝返り時に麻痺側上肢がついていくことができず、取り残されて肩関節に激痛が走る場合があります。

このとき、麻痺側の上肢には肩関節の内旋・内転・伸展運動が強制されており、肩の中では烏口肩峰靱帯と上腕骨頭の間を、棘上筋が滑り込むようにして通過しています。

これは普段からストレスに晒されて脆弱している(疼痛閾値が低下している)棘上筋に対して、強い接触圧や伸張ストレスが加わることで起こっている痛みであると考えられます。

夜間時痛も併発しているケース

上肢の忘れで痛みを発症しているケースでは、夜間時痛を伴っている場合がしばしば認められます。これは、臥位にて烏口肩峰弓下間隙に狭小化が起きていることが原因です。

間隙の狭小化は、通過する棘上筋の機械的ストレスを高め、虚血性障害を起こすことにつながります。対策としては、肩にタオルなどを入れてポジショニングを整えてみてください。

また、棘上筋の脆弱性を確認する方法として、肩関節を外転(または屈曲)させることで強制的に接触圧を高め、痛みの有無や程度を確認することも有用です。

亜脱臼に対する三角巾は必要か

肩関節の亜脱臼に対して、まず行われる対処法は三角巾やアームスリングの使用だと思います。これらは、二次的な障害を予防するという意味では必要不可欠です。

ただし、三角巾を付けておくことで亜脱臼が改善するわけでは当然ながらありません。

目的はあくまで二次的な障害発生の予防であり、上腕骨の下垂に伴う力学的ストレスを除去することにあります。

治療には棘上筋や棘下筋の促通が重要

亜脱臼の原因において、筋肉の低緊張が主であることは説明しましたが、とくに重要なのは棘上筋と棘下筋になります。

近年では、棘上筋と棘下筋はそのつながりの強さからひとつのユニットとして考えられるようになってきており、ふたつは相互に補完し合いながら作用しています。

そのため、リハビリにおいてはこれらの筋肉の収縮を積極的に促していくため、肩関節の外転運動および外旋運動を行うことが必要です。

手技を用いたり、電気刺激を用いたりと、促通する方法については様々ではありますが、患者が最も効率よく収縮を発揮できるパターンで実施することが大切です。

おわりに

ここでは主に亜脱臼に伴う棘上筋の機械的ストレスを挙げましたが、片麻痺の肩関節痛の原因は、視床痛やCRPS、腕神経叢麻痺、凍結肩など様々なものがあります。

なので、ここで述べたことはひとつの可能性に過ぎませんので、より細かく検査していき、主因の特定に努めるようにお願いいたします。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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