腰部脊柱管狭窄症のリハビリ治療

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腰部脊柱管狭窄症(Lumber spiral Canal Stenosis:LCS)のリハビリ治療に関して、わかりやすく解説していきます。

腰部脊柱管狭窄症の概要

腰部脊柱管狭窄症(水平断面図)1

脊髄の通り道である脊柱管(椎孔の連続)に狭窄が生じ、中を通過している馬尾や神経根に圧迫をきたしている状態を指します。

好発部位は、①L4/5、②L3/4、③L5/S1です。

脊髄はL2の高さで終了し、それより下部は馬尾と呼ばれる神経根の束になるので、腰部脊柱管狭窄症のほとんどは馬尾障害を意味します。

馬尾は血管と共に硬膜によって包まれているため、脊柱管が狭窄するとまず硬膜が圧迫を受け、間接的に中に位置する神経束が圧迫を受けます。

腰部脊柱管狭窄症の分類

LCSは神経侵入の解剖学的位置により、①正中型、②傍正中型、③椎間孔型の3つに分類できます。

最も一般的なのは正中型であり、馬尾を圧迫するために両側の脊髄神経に影響を及ぼす頻度が高く、複数の神経に両側性の症状が現れます。

傍正中型は椎間孔に入る直前の神経を圧迫しているタイプで、通常は椎間板ヘルニア(傍正中型)によるものが多いです。

椎間孔狭窄は名前の通りに椎間孔で神経を圧迫しているタイプで、L5/S1間は腰椎で最も狭いため、最も頻繁に発生しやすい場所です。

傍正中型と椎間孔型は、片側性で単一の神経症状が現れることが特徴であり、正中型(中心狭窄)とは症状が異なります。

発生原因と症状

腰部脊柱管狭窄症(側方断面図)3

脊柱管に狭窄をきたす原因としては、椎間板膨隆、終板の骨棘、椎間関節の肥厚、黄色靭帯や後縦靭帯の肥厚、すべり症、腰椎前弯の増強などがあります。

画像検査で狭窄が見つかっても、神経症状をきたしていないのなら問題とはならないため、必ず神経症状が出現しているかを確認することが大切です。

神経症状とは筋力低下(下肢の脱力感)や感覚障害(しびれ)、腱反射の低下・消失であり、腰痛や下肢痛などは含まれません。

腰部脊柱管狭窄症に特徴的な間欠性跛行がなく、腰痛や下肢痛が主症状の場合は他疾患を疑う必要があります。

発生頻度と予後

腰部脊柱管狭窄症は50歳以上で約13%に発生しており、10年後の自然経過は「改善3:不変3:悪化4」と報告されています。

前述したように原因の多くは脊椎の構造的変化であるため、基本的には自然経過で改善が望めない疾患です。

しかし、改善が3割も存在していることから、診断が間違っている(狭窄が障害の原因ではない)ケースも多く存在していると考えられます。

リハビリで改善できる可能性があるのは腰椎前弯の増強に伴う狭窄例だけであり、その場合は姿勢矯正で間欠性跛行の距離が伸びる場合もあります。

画像診断(MRI)

正常
正常な腰椎MRI
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症のMRI
腰部脊柱管狭窄症(解説)
脊柱管狭窄症のMRI

正常の画像と狭窄症の画像を見比べてみると一目瞭然ですが、このケースでは椎間板膨隆や黄色靭帯の肥厚が狭窄に関与しています。

とくに左側の神経根は通り道がほとんどないため、神経根症状を発生していることが推察されます。

他疾患との鑑別方法

①腰椎椎間板ヘルニアとの鑑別

簡易的な鑑別方法として、腰椎を後屈して症状が増悪するなら脊柱管狭窄症、腰椎を前屈して増悪するなら椎間板ヘルニアの可能性が高いです。

脊柱管狭窄症も椎間板ヘルニアも同様の症状をきたすことがありますが、前者は正中型、後者は傍正中型が一般的な病態となります。

若年者の椎間板は高くて膨らみがあり水分含有量が多いですが、高齢者では硬くて脱水された平らなクッションのような構造に変化します。

そのため、若年者の椎間板ヘルニアでは腰椎を前屈することで椎間板(髄核)が後方に飛び出し、神経症状が増悪するケースが多いです。

反対に高齢者の潰れた椎間板は前屈しても後方に飛び出すことはなく、脊柱管が拡大されることで馬尾の圧迫が解除されて即時に症状が軽快するといった特徴を持ちます。

②慢性動脈閉塞症との鑑別

下肢の慢性動脈閉塞症(PAOD)では、腰部脊柱管狭窄症に特徴的な間欠性跛行が出現するため、しばしば誤診されることがある疾患です。

簡易的な鑑別方法として、脊柱管狭窄症の場合はエアロバイクなら全く問題なく、長い時間にわたって実施することが可能です。

それに対して、PAODは血流障害のために疲労感が強く出現し、長く実施することができません。

PAODの確定診断には血圧脈波検査装置を用いたABI検査が有効で、下肢閉塞性動脈病変に対して確実な診断が可能です。(感度95%:特異度100%)

また、あくまで補助診断ではありますが、足背動脈と後脛骨動脈の触知にて閉塞の可能性を見つけることもできます。

健常者では足背動脈の約10%が欠損し、後脛骨動脈の0.2%が欠損するため、後脛骨動脈の触知有無を優先すべきとの指摘もあります。

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手術療法の適応と効果

腰部脊柱管狭窄症に対する手術の目的は、狭くなった脊柱管を拡げることで、圧迫されている神経を除圧することです。

狭窄症はその半数が手術を必要とする疾患であり、具体的に手術が適応となるケースは以下になります。

  1. 保存療法が無効
  2. 膀胱直腸障害の出現
  3. 明らかな麻痺症状
  4. 100m以下で間欠性跛行が出現

除圧術から平均12.8年後に行った追跡調査では、患者の69%が機能面において良好な状態を保っていました。

再手術を受けていたのは約10%で、発症してからの罹病期間が長すぎると十分な改善を得られないことが報告されています。

また、予後不良を予測する最も重要な因子は「腰痛の重症度」であり、腰痛が主症状の場合は脊柱管狭窄症以外の要因が考えられます。

椎弓切除後の脊椎支持性に関しては、通常、椎間関節の骨切除は2/3以内にとどめるため、不安定性は生じないとされています。

リハビリテーション

運動療法や物理療法に関しては、文献のシステマティックレビューにて十分なエビデンスを認めなかったとしています。

原因を考えると理解もしやすいですが、黄色靭帯の肥厚やすべり症など、脊椎の構造的変化が問題ならリハビリで治ることはありません。

そのため、リハビリはあくまで二次障害の予防を図ることを目的とし、生活指導などを交えながら実施することが大切です。

唯一、症状の緩和が期待できるのは腰椎前弯の増強で狭窄症をきたしているケースであり、その際は姿勢矯正による効果が期待できます。

腰椎過前彎の矯正トレーニング

腰椎前彎と脊柱管狭窄1

骨盤の前傾は腰椎の前彎を増強させて脊柱管を狭窄させるため、過度な前彎は症状を憎悪させる原因になります。

前彎を増強させる因子として、①脊柱起立筋(多裂筋)の過緊張、②腸腰筋の過緊張、③大殿筋の弱化が挙げられます。

また、椎間関節に拘縮をきたしている場合は、椎間関節モビライゼーションを実施するようにします。

二次障害の予防

腰部脊柱管狭窄症の患者では、間欠性跛行の出現によって活動量が著しく低下するため、心肺機能や筋力低下などの二次障害が現れます。

それらを予防するためにも、症状を増悪させない範囲で積極的に有酸素運動や筋力トレーニングは実施していくべきです。

お勧めの方法はエアロバイクであり、苦なく実施できるために筋力を強化するうえでも役立ちます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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