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腸脛靭帯炎(ランナー膝)のリハビリ治療

腸脛靭帯炎の病態と治療法(リハビリテーション)について解説していきます。目次は以下になります。

腸脛靭帯炎の概要

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大腿部の筋を包み込んでいる筋膜を大腿筋膜筋と呼んでおり、とくに外側部は厚く肥厚していて強靭なことから、腸脛靭帯と呼ばれています。

腸脛靭帯は浅層と深層の二層から構成されており、浅層は主に大殿筋の表層の腱膜が移行したものです。深層は大殿筋の上方3/4の筋束、中殿筋の表層筋束とその筋膜、大腿筋膜張筋の移行部から構成されています。

その走行は、大腿外側を下行していき、大腿骨外側上顆を越えて、脛骨粗面の外側に存在する結節(Gardy結節)に停止しています。また、一部の線維束(最浅層の前方線維)は、膝蓋骨の外側から表面に停止します。

膝関節伸展時には大腿骨外側上顆の前方に位置していますが、膝関節が屈曲すると後方に移動します。そのため、膝の屈曲伸展を繰り返すと大腿骨外側上顆の突起部で腸脛靭帯が擦れて損傷します。

その状態を腸脛靭帯炎(腸脛靭帯症候群)と呼びます。ランニングを主体とするスポーツや自転車競技に多い障害であり、別名で「ランナー膝」と呼ばれることもあります。

自覚症状としては、走ると膝外側に痛みを感じることが特徴的です。通常、走り始めたときには痛みはなく、しばらく走っていると痛みが出現し、さらに走り続けると痛みが増していきます。

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腸脛靭帯①:大腿筋膜張筋

大腿筋膜張筋|側面
支配神経 上殿神経(L4-5)
起始 腸骨稜外唇の前部、上前腸骨棘、大腿筋膜の深面
停止 腸脛靭帯を介して脛骨外側顆
動作 股関節の屈曲・内旋・外転、膝関節の伸展、大腿筋膜の緊張 ※膝関節深屈曲位では屈曲作用に変化

腸脛靭帯②:大殿筋

大殿筋|後面
支配神経 下殿神経(L5-S2)
起始 ①浅部:腸骨稜、上後腸骨棘、仙骨、尾骨
②深部:腸骨翼の殿筋面、仙結節靱帯
停止 ①上部:大腿筋膜の外側部で腸脛靭帯に移行
②下部:大腿骨の殿筋粗面
動作 股関節の伸展,外旋,外転(上方筋束),内転(下方筋束)

腸脛靭帯の作用方向

腸脛靭帯は膝関節の屈曲伸展運動の軸上を滑走し、膝関節が45度屈曲位を境界として、その作用方向が変化します。

屈曲45度より伸展域では膝伸展に作用し、45度屈曲位より屈曲域では膝屈曲に作用します。また、膝内反と下腿内旋運動に対する制動作用を持っています。

腸脛靭帯の作用変化

整形外科検査

1.グラスピングテスト
大腿骨外側上顆の近位部を圧迫して膝関節を伸展させる
腸脛靭帯と外側上顆部に摩擦力を高める
腸脛靭帯炎が存在すると屈曲30度付近で疼痛を訴える
2.Compression test
大腿骨外側上顆の近位部を圧迫して膝関節を屈伸させる
腸脛靭帯と外側上顆部に摩擦力を高める
膝関節外側部の疼痛を訴えたら陽性

内反膝(O脚)と腸脛靭帯炎

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腸脛靭帯炎を引き起こしやすい原因のひとつに内反膝があります。膝が内反すると腸脛靭帯が引き伸ばされるため、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の摩擦力が増加します。

そうすると腸脛靭帯が損傷するリスクが高く、周囲の組織に炎症が起こりやすくなります。

膝関節が緩い(動揺性がある)状態はサポーターなどで補助が可能なので、症状を確認しながら適応の有無を検討します。

回内足と腸脛靭帯炎

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回内足の場合、腸脛靭帯の停止部である下腿(脛骨)が内旋します。そうすると腸脛靭帯が引き伸ばされるため、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の摩擦力が増加します。

この状態は内反膝と動揺に腸脛靭帯の炎症を招くリスクとなりますので、回内足を起こしている原因を調べて、矯正することが治療には必要となります。

中殿筋の弱化と腸脛靭帯炎

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歩行時などの下肢立脚期では、中殿筋の収縮によって側方の安定性を高めています。

しかし、中殿筋が弱化している場合はその他の股関節外転筋(大殿筋上部と大腿筋膜張筋)の緊張によって代償します。それは結果的に腸脛靭帯を緊張させ、損傷リスクを増加させます。

外側側副靭帯への負荷試験

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外側側副靭帯の損傷を確認するためには、膝関節内反ストレステストによって負荷を与えていきます。方法は、膝関節屈曲30度位にて徒手的に脛骨を内反させます。

損傷がある場合は痛みを感じたり、部分断裂がある場合は動揺性が出現します。負荷試験では、外反ストレステスト以外にも、直接的に押圧を加えることで圧痛の有無の確認します。

リハビリテーション

  1. 生活指導
  2. 物理療法
  3. 腸脛靭帯のストレッチング
  4. 外側広筋のリラクゼーション
  5. 下肢の支持性向上
  6. ランニングフォームの変更

生活指導と靴の調整

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前述したようにO脚は腸脛靭帯にかかるストレスを増加させる原因となります。見た目ではO脚とわからなくても、足底外側に負担が集中している場合もあります。

その際は、靴底の外側が磨り減っていますので、まずは靴底を確認してみることも有効です。磨り減った靴をそのまま履き続けるとさらに膝関節の内反トルクが増大し、腸脛靭帯の負担を増加させるので注意が必要です。

腸脛靭帯炎は基本的にオーバーユース(使いすぎ)による炎症なので、しばらくは運動を中止し、負担のかかりにくいシューズなどを選ぶことが大切です。

物理療法の効果

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炎症による痛みや不快感を抑えるためには寒冷療法が有効で、簡単に実施できる方法として患部のアイシングがあります。

炎症症状には、①熱感、②疼痛、③腫脹、④発赤の四大徴候がありますので、それらの症状が落ち着くまでは定期的に実施することをお勧めします。

仕事内容によっては運動の中止が難しい場合もあるので、その際はアイシングの徹底を指導します。

腸脛靭帯のストレッチング

1.大腿筋膜張筋
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【方法】立位で両脚を交差させ、後ろの足に向けて上体を傾けます。患者に大腿外側が伸ばされている状態を感じてもらいながら実施します。
2.大殿筋(腸脛靭帯付着部)
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【方法】端座位にて下肢を屈曲し、膝を反対側の上腕に近づけるように股関節を屈曲・内転しながら、もう片方の手で股関節を内旋していきます。

外側広筋のリラクゼーション

外側広筋|側面

腸脛靭帯は大腿筋膜の外側部で最も厚い部分であり、腸脛靭帯が緊張することによって外側広筋を包み込む区画の内圧まで上昇します。

これは逆もしかりで、外側広筋の過度な緊張が腸脛靱帯の緊張を強めることにもつながるので、どちらにおいても外側広筋のリラクゼーションが必要となります。

緊張を抑えるためには圧迫を加えてリリースしたり、軽い筋収縮を実施してもらうことで緩めていきます。

下肢の支持性向上

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中殿筋に弱化が起きると大殿筋上部と大腿筋膜張筋の代償的に働くことは説明しましたが、その状態を回避するためにも中殿筋の強化は有効です。

検査で筋力低下がみられなくても、股関節の変形や固有感覚の低下、フィードフォワード機構の破綻によって収縮の反応速度が遅れ、腸脛靱帯の負担が増加している可能性もあります。

回復までに長期間を要する場合もありますので、歩容を確認しながら無理のない範囲で運動を継続するようにします。

ランニングフォームの変更

1.ストライド走法
歩幅が大きい走行
大腿部の肉離れ、股関節の障害が多い
2.ピッチ走法
歩幅が小さい走行
足底腱膜炎や下腿骨の疲労骨折が多い

走り方にはストライド走法とピッチ走法がありますが、歩幅が大きいほど股関節や膝関節の屈曲角度が大きくなり、大腿部の障害が多いことが特徴です。

反対にピッチ走法のように歩幅が小さいと地面からの衝撃吸収が乏しくなるため、下腿や足部の障害が増加します。

膝関節の屈曲角度にもよりますが、腸脛靭帯の負担を減らすためにはピッチ走法のほうが有用となるので、ランニングフォームの変更についても考慮する必要があります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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