腸脛靭帯炎(ランナー膝)のリハビリ治療

腸脛靭帯炎の病態とリハビリテーションについて解説していきます。

腸脛靭帯の概要

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大腿部の筋を包み込んでいる筋膜を大腿筋膜と呼び、とくに外側部は厚く肥厚していて強靭なことから腸脛靭帯といいます。

腸脛靭帯は浅層と深層の二層から構成されており、浅層は主に大殿筋の表層の腱膜が移行したものです。

深層は大殿筋の上方3/4の筋束、中殿筋の表層筋束とその筋膜、大腿筋膜張筋の移行部から構成されています。

腸脛靭帯は大腿外側を下行していき、大腿骨外側上顆を越えて、脛骨粗面の外側(ガーディー結節)に停止します。

一部の線維束(最浅層の前方線維)は、膝蓋骨の外側から表面に停止します。

腸脛靭帯の作用

腸脛靭帯の作用変化

腸脛靭帯は膝関節の屈曲伸展運動の軸上を滑走し、膝関節が45度屈曲位を境界として、その作用方向が変化します。

屈曲45度より伸展域では膝関節伸展に作用し、屈曲45度より屈曲域では膝関節屈曲に作用します。

また、腸脛靭帯は膝関節内反と下腿内旋に対する制動作用を担っています。

腸脛靱帯炎の病態

脛靭帯炎と大腿外側上顆

腸脛靭帯は、膝関節伸展時には大腿骨外側上顆の前方に位置していますが、膝関節が屈曲すると後方に移動します。

そのため、膝の屈曲・伸展が繰り返されると大腿骨外側上顆の突起部で腸脛靭帯が擦れて損傷し、炎症を起こすことがあります。

その状態を腸脛靭帯炎といい、ランニングを主体とするスポーツや自転車競技に多く発生し、別名でランナー膝と呼ばれることもあります。

通常、走り始めたときに痛みはなく、しばらく走っていると痛みが出現し、さらに走り続けると痛みが増していきます。

腸脛靭帯を構成する3つの筋肉

①大腿筋膜張筋

大腿筋膜張筋の起始停止

起始 腸骨稜外唇の前部、上前腸骨棘、大腿筋膜の深面
停止 腸脛靭帯を介して脛骨外側顆
動作 股関節の屈曲・内旋・外転、膝関節の伸展、大腿筋膜の緊張 膝関節深屈曲位では屈曲作用に変化

②大殿筋(上方筋束)

大殿筋の起始停止

起始 ①浅部:腸骨稜、上後腸骨棘、仙骨、尾骨

②深部:腸骨翼の殿筋面、仙結節靱帯

停止 ①上部:大腿筋膜の外側部で腸脛靭帯に移行

②下部:大腿骨の殿筋粗面

動作 股関節の伸展・外旋、(上方筋束)股関節の外転、(下方筋束)股関節の内転

③中殿筋(表層筋束)

中殿筋の起始停止

起始 腸骨翼の殿筋面(前殿筋線と後殿筋線の間)、腸骨稜の外唇、殿筋腱膜
停止 大腿骨の大転子の尖端と外側面
動作 股関節の外転、(前方筋束)股関節の内旋・屈曲、(後方筋束)股関節の外旋・伸展

整形外科検査

グラスピングテスト
方法)大腿骨外側上顆の近位部を圧迫して膝関節を伸展させる
意味)腸脛靭帯と外側上顆部に摩擦力を高める
判定)腸脛靭帯炎が存在すると屈曲30度付近で疼痛を訴える

内反膝と腸脛靭帯

内反膝と腸脛靭帯

腸脛靭帯炎を引き起こしやすい原因のひとつに、内反膝(O脚)があります。

膝が内反すると腸脛靭帯が引き伸ばされるため、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の摩擦力が増加します。

そうすると腸脛靭帯炎が起こるリスクが高くなります。

リハビリテーションの考え方

腸脛靱帯炎はスポーツ習慣者に多いことから、まずは生活指導にて負担が加わる動作を制限することが求められます。

しかしながら、試合などの関係で休むことが難しい場合も考えられるので、練習後はアイシングを徹底して炎症の増悪を防ぐことも必要です。

再発を予防するためには、腸脛靭帯の柔軟性を向上し、できる範囲でアライメントや姿勢を整えていくことが求められます。

生活指導と靴の調整

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前述したように、内反膝(O脚)は腸脛靭帯にかかるストレスを増加させる原因となります。

見た目ではO脚とわからなくても靴底の外側が磨り減っている場合もあるので、靴底を確認してみることも大切です。

磨り減った靴をそのまま履き続けるとさらに膝関節の内反トルクが増大し、腸脛靭帯の負担を増加させるので注意が必要です。

治療としては、足底挿板にてアライメントを調整させることが有用です。

物理療法(アイシング)

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炎症による痛みや不快感を抑えるためには寒冷療法が有効で、簡単に実施できる方法として患部のアイシングがあります。

炎症症状には、①熱感、②疼痛、③腫脹、④発赤の四大徴候がありますので、それらの症状が落ち着くまでは定期的に実施することをお勧めします。

試合などの関係で運動の中止が難しい場合もあるので、その際は運動後のアイシングを指導しておきます。

腸脛靭帯のストレッチング

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腸脛靱帯の拘縮は炎症を発生させる最大の原因となるため、柔軟性を確保することが非常に重要となります。

ストレッチングの方法としては、立った状態から脚を交差させて、後方の脚に向けて上体を傾けていきます。

大腿外側(腸脛靭帯)が伸ばされているのを感じながら、60秒ほど姿勢を保持します。

外側広筋のリラクゼーション

外側広筋の起始停止2

腸脛靭帯からは外側広筋の線維が一部起始しており、さらに腸脛靭帯の線維の一部は外側膝蓋支帯へと進入しています。

そのため、腸脛靭帯の拘縮が存在すると膝蓋骨の外上方偏位を招き、膝蓋大腿関節の障害を起こすことにつながります。

これは逆もしかりで、外側広筋の過度な緊張が腸脛靱帯の緊張を強めることにもなるので、外側広筋のリラクゼーションを図ります。

ランニングフォームの変更

1.ストライド走法
歩幅が大きい走行
大腿部の肉離れ、股関節の障害が多い
2.ピッチ走法
歩幅が小さい走行
足底腱膜炎や下腿骨の疲労骨折が多い

走り方にはストライド走法とピッチ走法がありますが、歩幅が大きいほど股関節や膝関節の屈曲角度が大きくなり、大腿部の障害が多いことが特徴です。

反対にピッチ走法のように歩幅が小さいと地面からの衝撃吸収が乏しくなるため、下腿や足部の障害が増加します。

膝関節の屈曲角度にもよりますが、腸脛靭帯の負担を減らすためにはピッチ走法のほうが有用となるので、ランニングフォームの変更についても考慮する必要があります。


vc

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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