腸脛靭帯炎(ランナー膝)のリハビリ治療

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膝関節外側の痛みとして起こりやすい腸脛靭帯炎について、その病態とリハビリ方法を解説していきます。

腸脛靭帯の概要

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腸脛靭帯は大腿外側の筋膜が肥厚したものであり、厳密には靱帯ではなく、大腿筋膜の一部になります。

腸脛靭帯は、①大殿筋(表層筋束)、②中殿筋(表層筋束)、③大腿筋膜張筋の3つの筋肉と連結しています。

多くの解剖書には腸脛靭帯は脛骨粗面の外側(ガーディー結節)に停止すると記載されていますが、詳細にみてみると遠位部は約7つの線維束に分岐しており、それぞれの停止部に付着しています。

7つの線維束(Ⅰ〜Ⅶ)を機能的に分類すると、①表層線維(Ⅰ・Ⅱ)、②中間層(Ⅲ)、③深層線維(Ⅳ〜Ⅶ)に分類されます。

表層線維(前方線維)

表層線維は、膝蓋骨表層に付着する線維(Ⅰ)と膝蓋骨外側に付着する線維(Ⅱ)に分けられます。

(Ⅰ)の一部はガーディー結節に付着しており、ガーディー結節に付着する線維の中でも最前方に付着しています。

表層線維が過緊張位にある場合は、膝蓋骨が近位外側に引っ張られるため、膝蓋骨を偏位させて膝蓋大腿関節症を引き起こすことになります。

有痛性分裂膝蓋骨や膝蓋骨縦割れ骨折では、外側広筋とともに腸脛靭帯表層線維の緊張が関連しています。

中間層

中間層は、外側上顆の前方部を走行する線維で、膝関節伸展位では弛緩しますが、膝関節屈曲位では緊張します。

膝関節屈曲45〜90°までは緊張し、深屈曲では弛緩するため、腸脛靭帯の緊張をみるオーベルテストは主に中間層の緊張を評価しています。

深層線維(後方線維)

深層線維は、外側上顆の後方部を走行する線維で、膝関節伸展位では緊張しますが、膝関節屈曲位では弛緩します。

背臥位で股関節軽度屈曲・外旋位、膝関節伸展位のまま股関節を内転すると、深層線維の緊張を評価することができます。

腸脛靱帯炎の病態

腸脛靱帯炎は膝関節の屈曲と伸展が繰り返されることにより、腸脛靭帯(中間層または深層線維)と大腿骨外側上顆が擦れることにより生じます。

腸脛靱帯炎という名前ではありますが、多くの場合は腸脛靭帯実質部に炎症反応は起きていません。

それではどこが痛いのかというと、腸脛靭帯と外側上顆間に介在する脂肪組織が硬くなっており、そこに問題があると考えられます。

通常、走り始めたときに痛みはなく、しばらく走っていると痛みが出現し、さらに走り続けると痛みが増すことが特徴です。

ランニングを主体とするスポーツに多く発生するため、別名でランナー膝と呼ばれることもあります。

慢性的に脛骨粗面外側に牽引ストレスが加わっている症例では、骨が突出してしまっているケースも多いです。

整形外科検査

グラスピングテスト
方法)大腿骨外側上顆の近位部を圧迫して膝関節を伸展させる
意味)腸脛靭帯と外側上顆部に摩擦力を高める
判定)腸脛靭帯炎が存在すると屈曲30度付近で疼痛を訴える

リハビリテーションの考え方

腸脛靱帯炎を起こす原因には、①腸脛靭帯のタイトネス、②脂肪組織の拘縮、③ランニングフォームの崩れがあります。

①腸脛靭帯のストレッチ

腸脛靭帯中間層を緩める方法としては、側臥位にて股関節外転および膝関節屈曲位とし、腸脛靭帯を短縮させた状態で外転方向に収縮させます。

3秒ほど収縮させると腸脛靭帯は緩みますので、そこから股関節を内転させて伸張位に持っていくようにして徐々に伸ばしていきます。

腸脛靭帯深層線維を緩める方法としては、患者に背臥位をとってもらい、非治療側の股関節を内転位に固定し、検者の脚で固定します。

その状態で治療側の下肢を膝関節伸展位、股関節軽度屈曲・外旋位とし、深層線維を伸長位とします。

この肢位から股関節を外転方向に軽い等尺性収縮を行い、速やかに求心性収縮へと切り替えて、この一連の動作を反復しながら徐々に伸ばしていきます。

②脂肪組織のマッサージ

腸脛靱帯炎は腸脛靭帯実質の痛みよりも、腸脛靭帯と外側上顆間に介在する脂肪組織の拘縮による問題が大きいです。

そのため、硬くなっている脂肪組織をマッサージするようにして柔軟性を高めることにより、腸脛靱帯炎の症状を緩和することが可能です。

③ランニングフォームの修正

腸脛靱帯炎を起こしやすいランニングフォームとして、健側下肢の蹴り出しが内旋することが挙げられます。

蹴り出し時に足が内側に倒れ込むタイプでは、骨盤は外方向(患側)への動揺が激しくなります。

それを修正するように患側(腸脛靱帯炎側)はつま先が内向きとなり、さらに体が大きく傾く場合はニーアウトして腸脛靭帯の負担が増加します。

以上のことから、患側(腸脛靱帯炎側)は第5趾の負荷が高くなって内反小趾が、対側(蹴り出し内旋側)は母趾の負荷が高くなって外反母趾が生じやすくなります。

治療方法としては、対側下肢は蹴り出し時に足が内側に倒れ込まないように、患側下肢は外側に倒れ込まないようにインソールで調整します。

④片脚立位のコントロール

健側(腸脛靱帯炎ではない側)の足部が外反しないようにコントロールしながら、片脚立位を保てるように練習します。

健側の内旋ライン(大腿内側)が硬くなっているケースも多いので、徒手的にリリースし、大腿骨を外旋誘導することも有効です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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