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膝蓋大腿関節症のリハビリ治療

膝蓋大腿関節痛(PFP)のリハビリ治療についての目次は以下になります。

膝蓋大腿関節症の概要

膝蓋大腿関節と大腿脛骨関節

膝関節というのは2つの関節を総称した名前であり、その二つというのが大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節になります。

大腿脛骨関節は膝関節の曲げ伸ばしに関与しており、名前の通りに大腿骨と脛骨から構成されています。

もうひとつが膝蓋骨と大腿骨から構成される膝蓋大腿関節であり、こちらは身体の動きではなく、大腿脛骨関節の補助として機能します。

具体的には、膝蓋骨があることで膝伸展力を高めたり、大腿四頭筋の擦り減り防止、膝関節を外部の衝撃から保護するといった役割があります。

膝の関節包は膝蓋大腿関節のみでなく、膝蓋大腿関節まで包んでいますので、そのことを考慮して両者をまとめて膝関節と呼ぶわけです。

膝蓋骨は外上方に偏移しやすい

膝蓋大腿関節障害|外側偏位

上の単純X線写真は膝蓋大腿関節を撮ったものですが、膝蓋骨が右側(外側)に偏位しているのがわかります。

また、膝のお皿が外側に偏位していることによって、膝蓋骨と大腿骨の隙間が狭くなっています。

この写真のような状態は、中年で膝関節痛を訴える患者で非常に多く、しばしば内側広筋の萎縮も認められます。

理由としては、膝蓋骨を内側に引く力である内側広筋が萎縮し、反対に外側に引く力である外側広筋が強く作用しているからです。

本来は膝関節の最終伸展付近で内側広筋が強く働くのですが、外側偏移している患者では外側広筋が働いていて膝蓋骨が外側上方に動きます。

そうすると膝蓋骨と大腿骨が外側で擦れて、クワドセッティングを実施するとギシギシとした軋轢音が聞こえてきます。

摩擦が繰り返されると、磨り減って浮遊した軟骨のかけらが滑膜を刺激して炎症を起こし、膝蓋上包や脂肪体、外側膝蓋支帯の拘縮が起こります。

PFPを起こしやすい身体的特徴

膝蓋大腿関節症を起こしやすい身体的特徴

前述したように、膝蓋大腿関節痛には内側広筋と外側広筋のアンバランスが関与しており、内側広筋が弱化しています。

内側広筋は遅筋線維が多いために萎縮しやすく、膝関節の最終伸展で強く作用するために膝の拘縮による影響を受けやすい状態にあります。

反対に外側広筋は速筋線維が多いために萎縮しにくく、膝関節の拘縮による影響をほとんど受けることがありません。

さらに外側広筋は外側膝蓋支帯や腸脛靭帯と連結しているため、しばしば癒着を起こしています。

他にもPFPを起こしやすい特徴として、膝関節の外反や足関節の外反、股関節の外転や外旋の筋力低下が関与しています。

これらの問題が存在するとニーインの制御ができなくなり、膝蓋大腿関節の力学的ストレスを増強することにつながります。

膝蓋大腿関節症で痛みが出る理由

膝蓋下脂肪体|側方1

変形性膝関節症の初期症状である立ち上がり時や歩き始めの痛みには、膝蓋大腿関節が大きく影響します。

具体的になにが原因かというと、膝蓋大腿関節にロッキングが起きて、そのせいで膝蓋下脂肪体がストレスを受けるためと考えています。

わかりやすく解説すると、膝のお皿の動きが悪くなっているために、膝関節下方に存在する脂肪体が滑らかに動かないことが原因です。

リハビリで膝蓋骨セッティングの運動を実施していると、膝に痛みがあるほうのお皿は健側と比較して滑らかには動きません。

患者によっては途中で引っかかりを起こして動きが悪くなったり、しばらくすると動き出したりと不安定な状態となっています。

この状態を改善させないためには、痛みを取り除くことはできません。

リハビリテーションの内容

  1. 膝蓋上包のリリース
  2. 外側膝蓋支帯の癒着剥離
  3. 膝蓋下脂肪体のリリース
  4. 内側広筋の収縮促通
  5. 下肢のアライメント修正

①膝蓋上包のリリース

膝蓋上包のリリース

膝蓋上包とは、膝関節を包んでいる関節包の上方を指しており、膝関節に炎症が発生することで拘縮してしまいます。

膝蓋上包が硬くなってしまうと膝蓋骨の動きが悪くなり、結果的に膝蓋大腿関節のロッキングを起こすことにつながます。

リリースの具体的な方法についてですが、患者には背臥位をとってもらい、膝下には丸めたバスタオルを敷きます。

施術者は親指と人差指で膝蓋上包を挟み込み、左右に揺らすようにしながら力を入れてマッサージしていきます。

なるべく深部まで指を沈めるようにし、大腿骨に張り付いている組織を根こそぎリリースするような気持ちでやると良いです。

膝蓋上包は膝関節筋(中間広筋の深側から分岐した線維)と繋がっており、膝関節筋が収縮することで関節包を持ち上げます。

そのため、中間広筋が硬結していると膝蓋上包や膝蓋骨の動きを制限することになるので、上方までマッサージしておくことが大切です。

②外側膝蓋支帯の癒着剥離

外側膝蓋支帯の癒着剥離

膝蓋骨が外方に偏移しているケースでは、膝蓋骨を内側(正常な位置)に動かそうとすると痛みを訴えます。

これは外側膝蓋支帯が癒着しているのが原因ですが、ここをしっかりと剥離しないことには改善が望めません。

具体的な方法としては、患者には背臥位をとってもらい、親指以外の4指を膝蓋骨の内側に当てます。

お皿を外側に誘導し、そこから母指を使って膝蓋骨を持ち上げます。

外側が持ち上がる(浮く)ことで外側支帯が伸びるので、この作業を繰り返すことで徐々に剥がれていき、可動性が拡大していきます。

③膝蓋下脂肪体のリリース

膝蓋下脂肪体のリリース

具体的な方法としては、患者には背臥位をとってもらい、親指と人差指で膝蓋下脂肪体をつまみ、左右に揺らしてマッサージしていきます。

より多くの脂肪体をリリースするには、手掌で膝蓋骨を下方に押し下げ、そこから親指以外の4指を使ってほぐしていきます。

膝蓋骨を押し下げる動作と脂肪体を押し上げる動作をリズミカルに繰り返していくとやりやすく、痛みがある部位は集中的にリリースします。

④内側広筋の収縮促通

内側広筋の場所

ここまでの作業で膝蓋骨の動きが出てくるかと思いますので、最後にパテラ・セッティングで筋収縮を促通していきます。

方法としては、仰向けで寝ている状態で膝下に何回か折り曲げたタオルを入れて、それを押しつぶすように力を入れてもらいます。

そうすると内側広筋や中間広筋が収縮して膝蓋骨が上方に移動し、何回か繰り返すことで獲得した可動性を持続するような効果があります。

収縮の際は筋肉や腱部にタッピングなどの刺激を加えることで、脊髄反射を利用した筋出力の向上が狙えます。

⑤下肢のアライメント修正

膝蓋大腿関節症を起こしやすい身体的特徴として、膝関節の外反や足関節の外反、股関節の外転や外旋の筋力低下があります。

実際にはアライメントを修正していくのは難しいのですが、股関節の筋力トレーニングだけは実施しておくことが推奨されます。

下記の写真のように、ゴムバンドを足に巻き付けてから股を開くことで簡単に鍛えられますので、在宅エクササイズとしても有用です。

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お勧めの一冊

実際の現場において、ベテラン理学療法士たちがどのようにして変形性膝関節症にアプローチしているかをまとめた一冊です。

臨床上の創意工夫がまとめられている実践的な技術書となっています。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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