① アキレス腱炎/アキレス腱周囲炎
病態の要点
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腱そのものの微小損傷=腱炎(部分断裂含む)。
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腱を包む滑走組織=**パラテノン(腱周囲結合組織)**の炎症=周囲炎。
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いずれも摩擦+反復伸張が主因。腱は乏血のため遷延化しやすい。
所見のヒント
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腱中央〜遠位1/3で限局圧痛/つまみ圧で増悪。
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初動痛・ウォームアップで軽減→負荷後再増悪は典型。
対応
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炎症期:免荷(杖・ヒールリフト)+短期固定、アイシング、活動量の調整。
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回復期:疼痛許容下でエキセントリック(偏心)トレ導入(段差でのカーフレイズゆっくり下降、1日2回×12週を目安)。
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下腿三頭筋・ハム・股関節伸展制限の柔軟性改善、足部過回内にはインソールを併用。
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改善乏しい難治例:画像評価を踏まえ、瘢痕癒着の鏡視下剥離などを検討。
② アキレス腱滑液包炎(浅層/深層)
要点
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深層:踵骨と腱の摩擦緩衝、浅層:皮膚と腱の摩擦緩衝。
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タイトな靴やカウンターの当たり、オーバーワークで炎症。
対応
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圧迫因子(靴・ヒールカップ)を除去、アーチサポート/ヒールリフト。
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炎症が強い時期は安静+局所冷却、皮膚保護(パッド)。感染徴候があれば受診。
③ ケーラー脂肪体(Kager’s fat pad)損傷
要点
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位置:アキレス腱深層と長母趾屈筋腱表層の間。
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役割:腱の滑走補助/圧縮緩衝/滑液包の圧調整。
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反復圧縮や瘢痕化で滑走不良+圧痛→腱障害を助長。
対応
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ダイレクトマッサージ&スライディングで脂肪体の可動性回復。
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施術前に温熱・超音波で軟化→手技効果を高める。
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背屈可動域・足部アライメント(過回内/外)も同時に是正。
④ 足関節後方インピンジメント(三角骨など)
要点
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三角骨(Os trigonum)や距骨後突起肥大が底屈で脛骨―踵骨間に挟まる。
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バレエ・サッカーに多く、最大底屈時に深部後方痛。
対応
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まずは負荷修正+局所注射で炎症鎮静。難治例は三角骨切除を検討。
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技術的には底屈終末域の回避/修正と腓腹筋優位の筋バランス是正。
⑤ 痛風(後踵部を含む多部位に発症可)
要点
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高尿酸血症に伴う尿酸結晶沈着。第1MTPが最多だが、アキレス腱付近も起こりうる。
対応 -
生活指導(体重・飲酒・プリン体)、NSAIDs/ステロイド注射(発作時)、長期は尿酸管理。
現場での“超”簡易鑑別
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つまみ圧で腱線上が痛い/偏心下降で痛い → アキレス腱炎/周囲炎
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靴の当たり部が腫れて表在痛 → 浅層滑液包炎
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底屈終末で奥が刺さる → 後方インピンジメント(三角骨疑い)
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やわらかく押し滑らすと奥の塊が痛い/滑り悪い → ケーラー脂肪体
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突然の激痛+発赤熱感+夜間痛 → 痛風も鑑別
リハの進め方(フェーズ別)
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鎮痛・保護:免荷/ヒールリフト、活動量調整、アイシング、必要時テーピング。
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可動域・滑走:足関節背屈の回復(距骨後方滑り誘導)、脂肪体・パラテノンの滑走改善。
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筋機能:偏心カーフレイズ(膝伸展・屈曲の両バリエーション)、ヒップ戦略(中殿筋・ハム)で後方負担を分散。
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復帰:競技特異的ドリル(ジャンプ/着地/切返し)+再発予防教育(靴・路面・練習量)。
受診の目安(レッドフラッグ)
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発赤・熱感・発熱(感染/痛風疑い)
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急な拍動性腫脹・断裂感、踏み込み不能(腱断裂疑い)
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安静3–4週間・適切リハでも改善しない
よくある質問(Q&A)
Q1. 完全安静にすべき?
A. 急性期は負荷を落とすが、痛み許容下の循環改善運動(足関節ポンピング等)は推奨。長期の完全安静は回復を遅らせます。
Q2. いつ偏心トレを始める?
A. 荷重歩行で痛みが制御でき、腫脹が引いたら段階導入。痛み0ではなく許容範囲で継続するのがコツ。
Q3. ヒールリフトはずっと使う?
A. 急性期の一時的ツール。炎症が引いたら徐々に卒業し、柔軟性と筋機能の自立で置き換えます。
Q4. 画像は必要?
A. 典型例は保存的に開始。断裂疑い・難治・インピンジメント疑いではUS/MRIやX線(三角骨確認)を検討。
Q5. 靴はどう選ぶ?
A. ヒールカウンターが硬すぎず当たらないもの、前足部は屈曲性良好、踵は適度なクッション+安定性。
最終更新:2025-10-06




