足関節後方の痛みの原因とリハビリテーションによる治療方法について解説していきます。
①アキレス腱炎と周囲炎
アキレス腱は人体で最大かつ最強の腱ですが、走行する血管が乏しいために一旦痛みが出現すると難治性に陥りやすい箇所です。
アキレス腱炎は腱の損傷(部分断裂)になりますが、それ以外にも腱を包む結合組織のパラテノンの損傷が考えられます。
厳密な区別は困難ですが、どちらもが繰り返される摩擦や伸張ストレスが原因で起こるため、発生後は安静が必要となります。
治療方法としては、炎症が治まるまでは患部の安静が必要なため、杖などの補助具による免荷や、サポーターによる固定を行います。
保存療法で緩解しない症例には、観血的治療として縦断的腱切除術による線維性癒着の剥離が実施されます。
②アキレス腱滑液包炎
アキレス腱の表層と深層には滑液包が存在しており、深層は骨と腱の摩擦を、表層は骨や腱と皮膚の摩擦を防ぐ役割を持ちます。
滑液包が靴の圧迫やオーバーワークで炎症を起こすことにより、踵の痛みを訴えることになります。
治療方法としては、炎症が治まるまでは患部の安静が必要なため、靴を変えたり、アーチサポートを利用するようにします。
③ケーラー脂肪体の損傷
kager’s fat pad(ケーラー脂肪体)は、長母趾屈筋腱の表層、アキレス腱の深層に位置する脂肪体になります。
役割としては、①アキレス腱の滑走性向上、②アキレス腱付着部の圧縮力軽減、③アキレス腱滑液包の内圧調整があります。
変形性足関節症などにより、繰り返しの限局した機械的刺激が加わるとケーラー脂肪体が損傷して炎症を起こして瘢痕化します。
そうすると前述した役割を失うため、アキレス腱炎や周囲炎、滑液包炎を躍起することにつながります。
また、脂肪体そのものにも自由神経終末と固有受容器が存在するため、圧痛を訴えることになります。
治療方法としては、脂肪体の柔軟性を取り戻すことが重要なので、ダイレクトマッサージにて軟部組織をやわらげていくことが有用です。
施術前に超音波療法を実施しておくことにより、マッサージの効果をより高めることができます。
④足関節後方インピンジメント症候群
足関節後方インピンジメント症候群の主な原因は、距骨の後方にできる三角骨と呼ばれる過剰骨にあります。
足関節を最大底屈位にした場合に、踵骨と脛骨に三角骨が挟み込まれて、周囲組織を刺激することで起こります。
バレエ・ダンスやサッカーをしている人に好発しやすく、足関節底屈時でアキレス腱の奥の方に痛みを訴えます。
治療方法として、まずはステロイドホルモンの注射にて経過を観察し、それでも軽快しない場合は手術で三角骨を除去します。
⑤痛風
通常、食べ物に含まれるプリン体は体内で尿酸となって排泄されますが、その尿酸が排泄されず組織に沈着して炎症を起こした状態を痛風といいます。
男性に発生しやすく、その多くは第1趾の中足指節関節に出現しますが、その他にもアキレス腱や膝関節、外耳などにも多様に発生します。
治療方法として、まずは暴飲暴食を控えて、肥満があるなら体重をコントロールするように心がけます。
痛みは消炎鎮痛剤の服用によって抑えるようにし、発作のある関節にはステロイドホルモン注射を行います。