足関節とは
臨床では「足関節=距腿関節」を指すことが多いですが、実際は以下の3つの複合関節になります。
- 距腿関節
- 距骨下関節(距踵関節)
- 横足根関節(距舟関節+踵立方関節)
① 距腿関節(talocrural joint)

- 構成: 脛骨の下関節面および内果と、腓骨の外果が形成する深い「ほぞ穴(mortise)」に、距骨滑車がはまり込む構造(らせん関節または蝶番関節)です。
- 運動軸: ほぼ1軸性(背屈・底屈)。
- 可動域の目安: 背屈 20° / 底屈 45°。
- 関節肢位:
- 締まりの肢位(CPP:最も安定): 最大背屈位。距骨滑車は後方よりも前方が広いため、背屈時にはこの広い部分がほぞ穴に入り込み、骨性の安定性が高まります。
- 最大ゆるみの肢位(LPP:評価や徒手で使いやすい): 軽度底屈位(約10°底屈)。底屈時は距骨滑車の後方の狭い部分が位置するため相対的にルーズになります。この骨性支持が低下した状態では前距腓靱帯への依存度が高まり、内反捻挫のリスクが増大します。
② 距骨下関節(subtalar joint)

- 構成: 距骨と踵骨。
- 主な運動: 内反/外反。距腿関節の動きと連動し、回内・回外の一部を担う多平面運動を行います。運動軸は足底面に対して約41°上方に、足長軸に対して約23°内方へ向いています。
- 可動域の目安: 内反 20〜30° / 外反 5〜10°。
- 力学連成(連動):
- 距腿背屈 + 距骨下外反(回内寄り) → 外反位(プロネーション)
- 距腿底屈 + 距骨下内反(回外寄り) → 内反位(スピネーション)
③ 横足根関節(Chopart joint:距舟+踵立方)
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- 関節型: 距骨と舟状骨、踵骨と立方骨で構成されます。
- 機能: 距骨下関節の位置に従属して動きます。
- 回内(外反)位: 距踵舟関節と踵立方関節の2つの関節軸が平行になり可動性が増大し“ゆるむ” → 足部の柔軟性が増し、衝撃吸収や地面適合性が向上します。
- 回外(内反)位: 関節軸が交差して可動性が減少し“締まる” → 足部の剛性が高まり(レバー剛性↑)、蹴り出しの推進力伝達に有利に働きます。
足関節の関節可動域と測定方法
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運動方向
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参考角度
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基本軸
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移動軸
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底屈
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45°
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下腿長軸への垂線 / 腓骨
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第5中足骨
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背屈
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20°
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下腿長軸への垂線 / 腓骨
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第5中足骨
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外反
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20°
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下腿長軸への垂線
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足底面
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内反
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30°
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下腿長軸への垂線
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足底面
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外転
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10°
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第1,2中足骨間の足軸
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同左
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内転
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20°
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第1,2中足骨間の足軸
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同左
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- 測定時のポイント: 底背屈の基本軸は腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)とすると明確です。底背屈時に内外反や回旋が混入しないように注意します。
- 内外反では、移動軸を足底面に当てますが、彎曲の少ない部位を指標にするのが望ましいです。
足関節の動きに作用する筋肉
| 方向 | 筋肉 |
| 底屈 | ヒラメ筋、腓腹筋、長腓骨筋 |
| 背屈 | 前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋 |
| 外反 | 長腓骨筋、短腓骨筋、第三腓骨筋 |
| 内反 | 後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋、前脛骨筋 |
足関節周囲の靱帯・支帯
足関節は外果が内果よりも低く前方に位置し、内反方向へ行きやすい骨構造であるため、**内反捻挫(lateral sprain)**が多発します 。
1) 外側靱帯複合体(LCL)
内反を制動します。
- 前距腓靱帯(ATFL): 底屈・内反で緊張します。足関節の捻挫において最も損傷しやすい靱帯です。
- 踵腓靱帯(CFL): ニュートラル〜背屈位での内反で緊張し、制動します。
- 後距腓靱帯(PTFL): 最も強靭で、高エネルギー外傷などで損傷しやすい靱帯です。
2) 内側(三角靱帯:Deltoid)
脛舟部、前脛距部、脛踵部、後脛距部からなり、外反・外旋を制動します。強固なため単独損傷は稀ですが、骨折を伴う合併損傷時は重症化しやすい特徴があります。
3) 遠位脛腓靱帯(シンデスモーシス)
前脛腓靱帯、後脛腓靱帯などで脛骨と腓骨を強固に連結します 。**高位捻挫(high ankle sprain)**で損傷し、荷重時や背屈時の痛みが残りやすく、回復が遅いのが特徴です 。
4) 支帯・足底
- 伸筋/屈筋/腓骨筋支帯: 通過する腱の浮き上がり(bowstringing)を防止し、滑走路を保持します。
- 足底腱膜: 縦アーチの維持(巻き上げ機構:Windlass mechanism)に関与し、足底の組織を保護します。
| 1.足関節の靱帯(前面) |
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| 2.足関節の靱帯(後面) |
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| 3.足関節の靱帯(内側面) |
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| 4.足関節の靱帯(外側面) |
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クリニックで役立つ“評価メモ”
- ATFL圧痛+前方引き出しテスト: 外側捻挫の基本評価。急性期直後よりも、受傷後4〜5日後(腫脹のピーク後)に行う方が正確な判定ができます。距骨が前方に逸脱する感覚(エンドポイントの消失)を診ます。
- しつこい外果後方痛: 腓骨筋腱の腱鞘炎や、上腓骨筋支帯の損傷による「腓骨筋腱脱臼」も鑑別します。
- 背屈痛・腫脹が前脛腓間に限局: 遠位脛腓関節の離開を伴う「高位捻挫」を疑います。
- 背屈制限の鑑別: 捻挫後には距腿関節の後方滑り(posterior glide)の制限が生じやすく、他にも硬い下腿三頭筋、骨棘による前方インピンジメントなどを鑑別します。
よくある質問(Q&A)
Q. 足関節の“外反・内反”と“回内・回外”は同じですか?
A. 厳密には別概念です。外反/内反は主に前額面上の単一の動きを指します。一方、回内/回外は距腿・距骨下・横足根関節が連動して起こる多平面の複合運動(回内=背屈+外反+外転、回外=底屈+内反+内転)です 。臨床上はこれらをセットで評価します。
Q. なぜ内反捻挫が多いのですか?
A. 外果が内果よりも低く前方に位置するため、内反方向への骨性のブロックが少なく動きやすいためです 。さらに、足部の基本動作である底屈位では距腿関節の骨性支持が低下し(ルーズになり)、前距腓靱帯(ATFL)にストレスが集中しやすくなります 。
Q. 高位捻挫(シンデスモーシス損傷)は何が違うのですか?
A. 脛骨と腓骨を連結する遠位脛腓靱帯の損傷です。痛みが前脛腓間に出やすく、荷重時や背屈時に脛腓間が押し広げられるストレスがかかるため回復が遅いのが特徴です 。外旋ストレスで悪化しやすいため、早期〜中期に無理な背屈や外旋は禁忌です 。
Q. ROM測定でズレやすいポイントは?
A. 底背屈の測定に内外反や足部の回旋運動が混入しやすい点です 。腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)を基本軸に、第5中足骨を移動軸に合わせることで再現性が上がります 。
Q. 予防・セルフケアは?
A. 捻挫は再発しやすく、約40%が慢性足関節不安定症(CAI)へ移行するとされています 。そのため、足関節の可動域訓練(関節モビライゼーションなどによる背屈の改善 )や、腓骨筋群などの筋力強化 、さらに固有感覚(プロプリオセプション)を鍛えるバランストレーニング(片脚立位や不安定ボードでの保持など)を包括的に継続することが強く推奨されます 。
最終更新:2026-07-17



