頚椎症性神経根症のリハビリ治療

vc

頸部に起きる神経根障害(頚椎症性神経根症)のリハビリ治療について、わかりやすく解説していきます。

頚椎症の概要

頚椎症の意味を簡単に説明すると、「症」とは病気の様子という意味があり、要するに頚椎が病的(異常)な状態ということになります。

具体的にどのような状態かというと、椎間板が潰れてしまったり、骨棘が形成されたり、周囲の靱帯が肥厚していたりします。

上記は頚椎症のMRI画像ですが、C5/6間とC6/7間の椎間板が圧潰しており、椎骨の前後が拡がるように骨棘が形成されています。

なぜこのような異常が生じるのかというと、よくあるパターンとしては、胸椎の過後弯(猫背)に伴う頭部前方変位が原因にあります。

そうすると下位頸椎は過伸展することになり、剪断力(前方すべり)や捻転力(回旋運動)に対する抵抗性の乏しい椎間板は変性します。

椎間板が変性すると椎体後方が圧を受け止めるために後方に伸びていき、いわゆる骨棘を形成した状態になります。

骨棘の形成や靱帯の肥厚というのは「身体を守るための代償的な反応」であり、それ自体は基本的に悪いものではありません。

ただし、そのようにして頚椎症が進行していくと脊柱管や椎間孔が狭窄することになり、頚椎症性脊髄症(脊髄障害)や頚椎症性神経根症(神経根障害)を招くことにつながります。

椎間板が変性しているレベルでは、後方の椎間関節の負担が増加することになるので、椎間関節障害のリスクが高まります。

頚椎症は治らない

前述したように、頚椎症はあくまで頚椎が変性している状態を指しているだけであり、それが必ずしも痛みの原因とは限りません。

変性することで脊髄や神経根を圧迫したり、椎間関節の負担が増加して炎症を起こすなどしてから始めて問題となります。

1度潰れてしまった椎間板は元には戻りませんし、骨棘や靱帯の肥厚なども改善はしないので、保存療法で頚椎症を治すことは不可能です。

大切なのは痛みの原因を見つけることであり、そこを間違うことさえなければ、適切な治療法を提供することができます。

頚椎症性神経根症の原因

頸椎は周囲組織に変性をきたしやすい場所であり、①椎間板の圧壊と膨隆、②骨棘の形成、③靱帯の肥厚などが起こります。

これらの変化は椎間孔に狭窄をきたし、中を通過する神経根を圧迫します。

頚椎症によって神経根が圧迫され、神経根障害を起こした状態を頚椎症性神経根症といいます。

好発部位としては、①C5/6、②C6/7、③C4/5の順に多く、C5/6の椎間孔からは第6頚神経が通過しています。

頚神経の支配領域

神経根が圧迫されると、その神経の支配領域に末梢神経麻痺(しびれなどの知覚障害や筋力低下)を引き起こします。

そのため、神経根障害の有無を検査するためには、①腱反射、②筋力低下、③感覚障害の3つを確認することが大切です。

以下に、頚椎症性神経根症で障害を受けやすい神経の支配領域を示します。

神経根 C5 C6 C7
腱反射 上腕二頭筋反射↓ 腕橈骨筋反射↓ 上腕三頭筋反射↓
筋力低下 三角筋 上腕二頭筋 上腕三頭筋
感覚障害 上腕外側 前腕外側、母指、示指 示指、中指
%e6%84%9f%e8%a6%9a%e6%a4%9c%e6%9f%bb%ef%bc%88%e9%a0%9a%e6%a4%8e%e7%97%87%e6%80%a7%e7%a5%9e%e7%b5%8c%e6%a0%b9%e7%97%87%ef%bc%89

上肢に関しては、知覚の神経支配(デルマトーム)は神経間の重なりや個人差が大きいため、筋肉の神経支配(ミオトーム)のほうが信頼性は高いとされています。

実際に神経根が圧迫されているかどうかはMRIを撮影する必要があり、支配領域の末梢神経麻痺と画像検査が一致しているかを確認します。

神経障害の誘発検査

椎間孔の狭小化が神経根症を引き起こしている場合は、頚部を伸展や側屈させることで症状を増悪させることが可能です。

理由としては、頚部を伸展または障害側へ側屈させることで椎間孔が狭小化し、椎間孔を通過する神経根への圧迫が強まるためです。

反対に頚部を屈曲または障害側とは逆に側屈させることで椎間孔は拡大するため、その動きでしびれが軽減するかも確認します。

他動的に椎間孔を狭小化させる徒手検査の方法として、スパーリングテストが用いられます。

スパーリングテスト(Spurling test)
スパークリングテスト
頚椎を患側へ伸展・側屈させて軸圧を加える。椎間孔が狭小化することで神経根症状を増幅させることができる。(感度:0.77、特異度:0.92)

頸部痛と神経根症

頚椎症性神経根症で首の痛みを訴えるケースは多いですが、実際に痛みを感じるのは神経の自由終末になります。

そのため、単純に神経根を圧迫するだけでは疼痛は起こらず、支配領域にしびれが生じるだけです。

もしも首を動かしたときに手のしびれ以外に痛みを訴えるようなら、神経根症以外の原因についても考える必要があります。

具体的には、頸部痛を起こす原因は大きく3つあり、①椎間板症、②椎間関節障害、③筋・筋膜性疼痛に分けられます。

それらを簡単に見分ける方法としては、椎間板症なら頸部中央に痛みがあり、それ以外なら左右のどちらかに痛みを訴えます。

頸部を障害側に側屈させて痛みがあるなら椎間関節障害、健側に側屈させて痛みがあるなら筋・筋膜性疼痛の可能性が高いです。

頸椎(C3-7)にはルシュカ関節が存在するため、腰椎と比較して椎間板症は起こりにくい傾向にあります。

神経根症と椎間関節障害は同時に起きていることも多く、受傷機転が明確なケースでは炎症が治癒する過程で神経根症が改善していく場合もみられます。

筋膜性疼痛の場合は、神経根(神経)を圧迫していないにも関わらず、手にしびれや痛みを起こすことがあります。

そのため、神経根症と筋膜性疼痛は確実に鑑別することが臨床的には重要です。

筋膜性疼痛との鑑別診断

神経根症と確定診断するためには、前述したように画像所見と臨床症状が確実に一致している必要があります。

しかしながら、臨床では画像と症状がマッチングしない症例が多く、その原因について深く考察されていないケースも多々あります。

例えば、頚部を屈曲または健側に側屈させると椎間孔は拡大するので症状は和らぐはずですが、逆に症状が増悪する場合があります。

その場合は、神経根症よりも筋膜性疼痛である可能性が非常に高いです。

医者に筋膜性疼痛という視点がなければ、症状が説明できずに頚椎症性神経根症と診断されることが多いため、診断名だけで短絡的に治療内容を決定しないことが大切です。

リハビリテーションの考え方

神経根障害の原因が頚椎症(椎間板の膨隆や骨棘の形成)である場合は、基本的に保存療法での改善は困難です。

理由としては、徒手的に椎間板変性や骨棘を治すことはできず、自然治癒を期待することもできないからです。

しかしながら、前述したように椎間関節障害に伴う神経根の炎症などで一時的に圧迫が強まっているケースでは、炎症が落ち着くことで症状が緩和する可能性もあります。

また、頭部前方位に伴う頸椎の過伸展などはできる限りに改善することが、神経根障害の悪化を防止することにつながっていきます。


他の記事も読んでみる

勉強になる情報をお届けします!

The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
rehatora.net © 2016 Frontier Theme