ばね指とは
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定義:指を屈曲位から伸ばす際に引っ掛かり感(ロッキング)と弾発現象(パチンと外れる感覚・音)が起こる状態。
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機序:屈筋腱にできた結節(肥厚)が、指の付け根にあるA1滑車(腱鞘の狭いトンネル)を通過しにくくなる → 強く伸ばすと結節が滑車を越えて弾発。
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好発:中高年女性に多く、母指・中指で頻度が高い。全指に起こり得ます。
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背景因子:反復動作(握る・つまむ)、糖尿病・甲状腺疾患などの代謝要因、妊娠・授乳期、利き手の酷使など。
自然経過と注意点
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自然寛解は限定的。 とくに3か月以上症状が続く、朝のこわばりやロッキングが強い場合は医療受診を推奨。
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放置で屈曲拘縮や完全ロッキングに至ることも。
治療の選択肢
1) まずは保存療法
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活動調整:握力を要する反復作業・長時間スマホ・工具作業を一時的に減らす/分散する。
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装具・テーピング:夜間のMP関節伸展スプリントでA1滑車部の摩擦を減らす(長期固定は拘縮リスクがあるため初期のみ適応・短期使用)。
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薬物:痛みや炎症にはNSAIDsの短期使用。
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リハ/徒手:腱・腱鞘の滑走性を高める腱グライディング(腱滑走)、前腕〜手の軟部組織リリース、温罨法→軽いストレッチ。
からだ全体の筋膜緊張が手部の過負荷に関与するケースもあります。臨床的には前腕〜母指球のリリースで症状が軽くなる例があり、補助的介入としては妥当です(確立エビデンスは限定的)。
2) ステロイド腱鞘内注射
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A1滑車部への局所注射(トリアムシノロンなど)は有効性が高い選択肢。
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多くは数日〜数週で弾発の軽減が期待でき、効果は一時的なことも。再発や糖尿病患者での反応の差に留意。
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反復注射は回数に上限を設け、腱断裂リスクを避ける。
3) 手術(A1滑車切開)
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適応:3か月以上の持続/ロッキング強い/保存・注射で再燃/拘縮併発など。
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方法:局所麻酔・短時間、A1滑車を切開して腱の通り道を確保(外来で可)。
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成績:再発が少なく満足度が高い標準治療。術後は早期からの腱滑走訓練で癒着予防。
セラピスト向け:リハビリの実践ポイント
評価の要点
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圧痛・弾発の局在(A1滑車部)、可動域、ロッキングの程度、MP関節の拘縮有無。
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反復負荷タスク(家事・仕事・趣味)と一日の症状変動を聴取。
介入(保存期/術前後)
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腱滑走エクササイズ(1セット5〜10回×1日3–5セット)
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Hook→Fist→Straightの順に指屈伸をゆっくり滑らかに。痛み手前で止める。
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軟部組織リリース/ストレッチ
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母指球(短母指屈筋・長母指屈筋腱の交差部)
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前腕遠位掌側(長母指屈筋走行)/橈背側(長母指外転筋・長母指伸筋周辺)
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第1–2中手骨間(第1背側骨間筋)
*狙い:支帯・腱周囲の**高密度化(硬結)*をやわらげ、腱滑走を助ける。
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温罨法→低負荷運動:温めてから軽運動。冷却は痛みが強い時のみ短時間。
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作業療法的工夫
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太軸ペン・クッション付きグリップで握力負荷を軽減。
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つまみ→握りに置換、開閉頻度の多い動作を連続→分割へ。
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NG:強い痛み・引っ掛かりを我慢しての反復屈伸、長期固定での不使用拘縮。
よくある質問(Q&A)
Q1. 注射だけで治りますか?
A. 初期〜中等度では大きく改善することが多いですが、再発もあります。再燃を繰り返す、ロッキングが強い場合は手術が確実です。
Q2. 手術後はいつから動かせますか?
A. 多くは当日〜翌日から軽い腱滑走を開始します。創部が落ち着く1〜2週以降に負荷を漸増。家事やデスクワークは早期に再開可能なことが多いです(術式・創の状態により主治医指示に従う)。
Q3. サポーターやテーピングは有効?
A. 夜間MP伸展スプリントが初期の痛み軽減に役立つことがあります。長期連用は拘縮を招くため期間を区切って使います。
Q4. 予防できますか?
A. 連続負荷をインターバル化、グリップ太径化、腱滑走の習慣化、前腕〜母指球のセルフリリースが再発抑制に有用です。
最終更新:2025-10-05



