舟状骨骨折のリハビリ治療に関する目次は以下になります。
舟状骨骨折の概要
舟状骨は手根骨の中で最も骨折しやすい部位であり、手根骨骨折全体の60%以上を占めています。
舟状骨は軟骨で覆われている部分が多いために血行が乏しくなりやすく、受傷時に見逃れやすいため、偽関節を呈しやすい骨折になります。
そのため、受傷後に10年以上を経てから手関節の痛みや可動域制限を訴えて受診するケースもあります。変形性手関節症の一因となります。
舟状骨は橈骨遠位端と橈骨手根関節(手関節)を構成しており、受傷機転はスポーツや転落などで手関節が背屈強制された際に起こりやすいです。
舟状骨の骨折部位
舟状骨骨折は部位によって分類され、近位1/3、中央1/3、遠位1/3に大別されます。中央部が最も骨折しやすく、遠位部が最も骨折しにくいとされています。
舟状骨の血行は不安定で、橈骨動脈の枝が舟状骨に背側、遠位1/3、外側掌側から侵入しています。
舟状骨近位1/3は骨内血行だけで栄養を補給しているため、骨折すると虚血性壊死に陥りやすい部位となります。
舟状骨骨折の骨折線
舟状骨骨折は様々な骨折線の方向を示す傾向にあり、レントゲンにて骨折線の走行を決定することは、治療法を決定するためにも重要です。
そのため、レントゲンでは前後、斜位、側面、尺屈前後と色々な方向から撮影しておく必要があります。
診断が難しい場合もあるため、より正確な診断ができるようにMRIやCTを実施したり、骨シンチグラフィーが適応されることもあります。
舟状骨骨接合術について
転位がなく、骨癒合が得られる部位である場合は保存療法が適応となり、前腕から母指までのギプス固定がなされます。
転位がなくても偽関節となる可能性がある場合は手術適応となり、骨折部を展開せずにワイヤーを挿入していき、固定用のスクリューを刺入していきます。
この方法は舟状骨への血流を阻害せずに低侵襲であり、靱帯も切離しないため、骨癒合も得られやすい手術です。
転位がある場合は骨折部を展開して整復していく必要があります。遠位骨折に対しては掌側から、近位骨折には背側からアプローチしていきます。
固定の方法は同様ですが、手術侵襲が大きく、掌側の靱帯を切離する必要があるため、癒合の面ではやや劣ります。
術後はギプス固定が必要となりますが、骨折部を展開している場合は約2-4週間、展開していない場合は約1-2週間が固定期間になります。
骨欠損が認められる場合は骨移植術が実施されることがありますが、その場合はギプス着用期間が長く、約4-6週間の固定が必要となります。
リハビリテーション
保存療法 | 手術後 | |
受傷-10日 | ||
安静 | 肘までのギプス固定,冷却,挙上 | 肘までのギプス固定,冷却,挙上 |
関節 | 肩関節,第2-5指の自動運動 | 肩関節,第2-5指の自動運動 |
その他 | - | 抜糸は10日後 |
10日-6週目 | ||
安静 | ギプス固定 | 手関節・母指の装具固定 |
関節 | 肩関節,第2-5指の自動運動 | 肘関節の自動運動 |
その他 | - | 装具変更は4週以降 |
6週目以降 | ||
関節 | 肘関節の自動運動 手関節や母指は12週以降 |
手関節・母指の自動介助運動 |
筋力 | 握力強化は18週以降 | 握力強化は14週以降 |
荷重 | 装具完全除去は14週以降 | 装具完全除去は10週以降 |
リハビリの目的は、術後の関節可動域制限を最大限に抑えることです。そのためには、ギプス固定中の患部外ROM運動、浮腫の予防は必須です。
ギプス除去後は、手関節および母指MP関節の拘縮が認められますので、無理のない範囲で関節可動域の拡大を図っていきます。
具体的には、関節モビライゼーションやストレッチ、筋肉の過緊張に対してのリラクゼーション、手浴と併用した可動域拡大運動などがあります。
骨癒合の状態にもよりますが、日常生活で積極的に使用するように指導していくのは術後6-8週以降からとなります。
保存療法では、手術を実施した場合よりも4週ほど遅らせながらリハビリを進めていきます。