膝蓋腱炎の概要
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膝蓋腱炎=ジャンパー膝:ジャンプや着地、切り返しが多い競技(バスケ/バレー等)で発症しやすい腱付着部のオーバーユース障害。
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好発部位は膝蓋骨下極側の膝蓋腱。若年の脛骨粗面痛はオスグッド病を鑑別。
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中高年で膝蓋骨上方の痛みが目立つときは、大腿四頭筋(とくに中間広筋)の過緊張や滑走不全が背景にあることが多い。
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腱は血流が乏しく慢性化しやすいため、負荷コントロール(運動制限)と筋・筋膜の滑走改善が早期改善のカギ。
危険因子(臨床で多い3本柱)
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筋・筋膜の滑走不全(大腿直筋/内側・外側・中間広筋、膝蓋下脂肪体、周囲支帯)
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オーバーワーク(練習量の急増、休息不足、硬い床・不適切なシューズ)
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アライメント不良
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膝の内外反、下腿外旋、膝伸展制限(屈曲位荷重)
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足部の過回内/過回外 → 膝の内外反連鎖(場合によりインソールを検討)
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鑑別のヒント
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オスグッド病(成長期):脛骨粗面の限局痛・腫脹。
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膝蓋下脂肪体痛:階段降段で痛み増悪が多い。
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膝蓋腱付着部痛:階段昇段で痛み増悪が多い。
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裂離骨折/下極骨折の既往:外傷歴・圧痛点・画像で確認。
評価ポイント(簡易チェック)
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圧痛:膝蓋骨下極~膝蓋腱中央/脛骨粗面。
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膝蓋骨可動性:下方(内下方・外下方)滑りで引っかかり=筋膜の高密度化を示唆。
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ROM:膝伸展制限の有無。足関節背屈制限(カーフの硬さ)も同時確認。
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動作:ジャンプ着地で膝とつま先の向き一致・骨盤前傾/体幹前傾・足圧中心前方が保てるか。
リハ戦略(ステップ順)
1) 負荷コントロール(最優先)
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痛みが出る練習は一時停止。症状軽快まではジャンプ/全力ダッシュ/深いスクワットを制限。
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代替:バイク低負荷、プール歩行など疼痛無増悪の範囲。
2) 痛みの源を減らす「滑走改善」
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大腿四頭筋を個別に触診→表層からリリース(直筋/内・外側広筋/中間広筋)。
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膝蓋骨モビリティ:下方(内下方/外下方)へ誘導し、抵抗感の方向を保持して大腿筋膜の高密度化点を解く。
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膝蓋下脂肪体:膝蓋骨をやさしく下方圧→脂肪体を左右に揺動し滑走を回復。
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※熱感・腫脹が強い急性増悪期は強刺激を避ける。
3) 伸張性の回復
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ハムストリングス/下腿三頭筋を先に緩める(屈曲位荷重の是正)。
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カーフ:膝伸展位=腓腹筋、膝屈曲位=ヒラメ筋を分けて30–45秒×3–5回。
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大腿四頭筋ストレッチは滑走改善後に実施。
4) 筋出力・耐性づくり(痛み0〜軽度で)
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等尺性膝伸展(膝枕押し潰し/パテラ・セッティング) → 短~中可動域の遠心トレへ進行。
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レッグプレスのショートレンジ(0–45°)、スロースクワット(痛みなしレンジ)。
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カーフの遠心性(段差でゆっくり下ろす)で着地耐性UP。
5) 動作再学習(競技復帰へ)
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着地ドリル:つま先・膝の向きを一致/骨盤前傾・体幹前傾/足圧中心は前方。
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シングルレッグ着地→反発、横移動ディフェンスでも膝のねじれを抑える。
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復帰の目安:痛みNRS≦2、翌日増悪なし、等速筋力左右差≦10–15%、片脚スクワット10回良フォーム。
症例メモ(伸展制限が隠れ因子)
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小学生:高跳び後の膝蓋骨下極圧痛。膝裏浮き=伸展制限、ハム/カーフの過緊張+足関節背屈制限を確認。
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四頭筋だけ緩めても再燃。ハム・下腿三頭筋→背屈改善→四頭筋の順で介入し、昇段痛の軽減へ。
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降段痛優位なら膝蓋下脂肪体も同時に評価・介入。
注意(レッドフラッグ)
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強い腫脹・熱感・可動不能/外傷直後の激痛:裂離骨折・腱損傷を除外(医師へ)。
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夜間安静時痛が増悪、発熱・ロッキング併発など非典型は精査。
よくあるQ&A
Q1. どれくらい休めばいい?
A. 痛み悪化を招く動作はゼロに。数日~数週で痛みが0~軽度に落ちたら段階的復帰へ。
Q2. まずストレッチからでOK?
A. 滑走不全が残る状態での強い伸張は逆効果。滑走改善→伸張→筋力の順を守ると治りが早いです。
Q3. 階段で上りが痛む/下りが痛むの違いは?
A. 上り>腱付着部、下り>膝蓋下脂肪体が関与しやすい目安です(確定診断ではありません)。
Q4. テーピングやインソールは有効?
A. 内外反・過回内/回外があれば短期的に痛みを減らす補助として有用。根本は動作と滑走の改善です。
Q5. いつジャンプに戻れる?
A. 痛みなくスクワット・片脚着地が安定し、翌日増悪なしになってから小強度→中強度→全力と進めます。
最終更新:2025-10-07
