MTAの概要
Myotuning Approach(MTA)は、軽い触圧覚刺激を中心に筋(myo)を“調律(tuning)”して、痛み・しびれ・筋緊張異常を整える手技体系。脳卒中後の片麻痺から整形外科疾患まで幅広く適用でき、患者負担が小さいのが特長です。
用語の整理(臨床での判定基準つき)
| 用語 | 要点(現場での見極め) |
|---|---|
| 再現症状 | 患者の訴えと同じ種類・同じ部位の痛み/しびれを圧刺激で再現できること。 |
| 原因筋 | 刺激で再現症状が誘発され、動きを抑制している筋。 |
| 原因筋線維 | 原因筋の中でピンポイントに症状を再現し、動きを阻害する線維。 |
| 抑制部位 | 同一皮膚分節内で、軽い圧刺激を加えると再現症状が有意に軽減する点。 |
実務メモ:**「再現できること」→「抑えられる点があること」**の2条件がそろえば、MTAの適応度が高いと判断。
5つの手技(使い分けの指針)
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基本手技
原因筋線維+抑制部位の両方へ軽い触圧覚刺激。まずはこれを基軸に。 -
MTAストレッチング
基本手技で痛みを抑えながら、拮抗筋の上層にも触圧覚刺激を加え、原因筋線維を伸張。自動/自動介助でゆっくり。 -
触圧覚刺激+痛覚刺激
原因筋線維に触圧、抑制部位は“気持ちよい”強度の痛覚刺激。①②で不十分なときに追加。 -
痛覚刺激のみ
抑制部位は使わず、原因筋線維のみにやや強めの圧(マッサージ様)。①〜③が効かないときの選択肢。 -
随意運動の活性化
起始→停止へ線維を横切るように軽擦しつつ、対象筋の随意収縮を反復。痛みが十分に下がってから行う。
作用機序(なぜ効くの?)
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ゲートコントロール理論:抑制部位のAβ線維(触覚)入力が脊髄後角の介在ニューロンを介して痛覚伝達(T細胞)を抑制。
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分節性の調節:同一皮膚分節で抑制点(通称Melzack Point)を探すのはこのため。
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α運動ニューロン抑制:原因筋線維への圧で錘内筋が調整され、持続的緊張が低下。
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自律神経モジュレーション:穏やかな刺激+呼吸で交感−副交感のバランスが整い、筋緊張が落ちやすい。
実施フロー(標準手順)
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評価:触診で再現症状が出る線維を特定(NRSと部位を記録)。
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抑制点探索:同一皮膚分節内で軽圧しながら痛みの変化を確認し、最良の抑制部位を決定。
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基本手技:原因筋線維+抑制部位へ30–60秒の触圧覚刺激(痛みNRSが2点以上下がるか確認)。
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MTAストレッチ:痛みが下がったら、拮抗筋上層へ軽圧を添えてゆっくり伸張(呼吸に同調)。
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運動活性化:目的筋へ軽擦しつつ低負荷・高回数の随意収縮(5秒×10回×2セットなど)。
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再評価:疼痛、可動域、筋出力、機能課題(例:挙上・歩行)で即時変化+再現性を確認。
目安刺激量:痛気持ちいい未満(防御収縮が出ない強さ)。うつ伏せ・仰向けの楽な体位で実施。
どんなときに向く?(適応・注意)
適応のめやす
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触圧で再現症状が誘発でき、抑制点で軽減が得られるとき
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筋緊張亢進による可動域制限、動作時の局所痛/放散痛
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片麻痺・痙縮に伴う筋過緊張の軽減を図りたいとき
注意/禁忌
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発赤・腫脹・急性炎症、創傷、熱感、血栓症疑い、骨折直後、悪性腫瘍部位
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抗凝固治療中や高度感覚障害部位は圧の強さに厳重注意
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頸部・肋骨部など重要器官直上は過圧禁止
クリニックでの“型”と記録テンプレ
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記録:〈日付〉〈再現線維の部位と深さ〉〈抑制部位(皮膚分節)〉〈NRS前/後〉〈可動域/機能課題〉〈セルフ指導〉
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ホームワーク:軽圧30秒×3回/日の自己抑制点刺激+ゆっくり呼吸→痛みが下がった状態でストレッチ。
よくある質問(Q&A)
Q1. 抑制点は毎回同じですか?
A. 痛みのフェーズや筋の入力状態で微妙に変わります。毎回探索→最良点を更新してください。
Q2. どのくらいで効果が出ますか?
A. 多くは即時にNRSが下がります。再現性を持たせるには2–6週間のセルフ併用が目安。
Q3. 強く押した方が効きますか?
A. いいえ。防御収縮を起こさない軽圧が原則。強圧は逆効果になりやすいです。
Q4. しびれにも効きますか?
A. 末梢の神経絞扼由来で筋・筋膜因子が関与する場合は有効例あり。神経根症状が強い場合は鑑別と併用が必要です。
最終更新:2025-09-20


