トレーニング効果の3本柱
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神経適応(運動単位の動員・同期化・発火頻度の向上)
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筋肥大(筋線維断面積の増大:I型・II型ともに肥大しうるが、条件によりII型の寄与が大きくなりやすい)
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筋持久力の向上(局所の代謝耐性・毛細血管化・ミトコンドリア機能の適応)
→ 何を主に伸ばしたいか(最大筋力/筋量/持久力)を 先に明確化 すると、負荷・回数・休息を設計しやすい。
筋力向上のメカニズム
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最大筋力は主に
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神経適応(数週で顕在化しやすい)
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筋断面積(筋肥大)(数週〜数か月で顕在化)
に規定されます。
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「白筋(II型)だけが肥大する」は誤り。I型も条件次第で肥大。ただし高強度やパワー寄りの刺激ではII型優位になりやすい傾向。
負荷設定とリピティション域(目安)
**“%1RM × 反復回数 × セット間休息 × 反復速度 × 近接疲労度(RIR/RPE)”**の組み合わせで狙いを分けます。
| 主目的 | %1RM目安 | 1セット反復 | 休息 | 近接疲労度(RIR) |
|---|---|---|---|---|
| 最大筋力 | 85–100% | 1–5 | 2–5分 | 2–4残す(フォーム維持) |
| 筋肥大 | 60–85%(※30–60%でも近接限界までなら可) | 6–15(低負荷なら10–30) | 60–120秒 | 0–3残 |
| 筋持久力 | 30–60% | 15–30+ | 30–60秒 | 0–2残 |
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従来「65%未満では肥大しない」とされましたが、現在は低負荷(≈30–60%1RM)でも近接限界まで行えば肥大は起こるのがコンセンサス。
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ただし高負荷は神経適応と高しきい値運動単位への効率的アクセスに優れるため、筋力志向なら高〜中強度域を主軸に。
%1RMとRMの対応(代表値・実務目安)
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100%=1RM、95%≈2RM、90%≈4RM、85%≈6RM、80%≈8RM、75%≈10–12RM、70%≈12–15RM、65%≈15–20RM
(個体差・種目差が大きいので目安として扱う)
代謝ストレスを使った“低負荷での肥大”
1) 血流制限(BFR/加圧)
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20–40%1RM程度の低負荷でも、静脈還流を制限して代謝ストレスを高めると肥大促進が可能。
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実施は適切なカフ圧(個別の閉塞圧%に基づく設定)と安全管理が前提。高血圧・血栓リスク等には慎重に。
2) “ノンロック”=常時緊張(関節を伸ばし切らない)
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連続張力で血流再灌流を抑え、代謝ストレスを高めるテクニック。
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低〜中負荷で15–30回程度、短休息で2–4セットなど、近接限界に寄せると効果的。
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5–10回で失速するなら負荷が高すぎる可能性(代謝狙いなら回数を稼ぐ設計に)。
セット設計の実務ポイント
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ボリューム(週当たり反復総量や有効セット数)が肥大に強く相関。目安は部位×週10–20セット(個体差・回復度で調整)。
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可動域は原則フルROM。必要に応じてパーシャルやストレッチポジション重視も併用。
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テンポは目的次第。肥大狙いではコントロールされたエキセントリックが有効。
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2–3か月ごとに強度域や種目を軽く変え、**停滞(プラトー)**を回避。
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疼痛・腫脹などがある関節は**筋出力不全(AMSI/AMI)**を起こしやすい。痛み・水腫のコントロール→筋再教育→荷重増の順で。
筋サテライト細胞と“低酸素”の話の整理
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筋肥大の背景として機械的張力・代謝ストレス・筋損傷が主要因。
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代謝ストレス(局所“低酸素”含む)はシグナル経路の活性化やサテライト細胞の関与を促す可能性があるが、最重要は所定のボリュームと近接疲労度。
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「壊れていないのに補修して太くなる」というより、合成と分解のバランスが合成優位になる条件を揃えることが本質。
筋出力(発揮)と筋力(器質)の違い
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筋出力不足:筋量があっても痛み・関節水腫・不安定性・運動制御低下などで**“力が出せない”**状態。
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対応:疼痛/水腫コントロール → 筋再教育(求心化・軽度伸張位での等尺) → 段階的負荷。
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神経筋再教育を先行すると出力の立ち上がりが改善し、その後の高負荷トレーニングが効きやすい。
例:目的別ミニプロトコル
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最大筋力:スクワット 85–90%1RM×3–5回×3–5セット/休3–5分
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筋肥大:レッグプレス 70–80%1RM×8–12回×3–4セット/休60–90秒(最終セットRIR1–2)
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低負荷肥大(代謝):レッグエクステンション 30–40%1RM×20–30回×2–4セット/休30–60秒(ノンロック)
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持久力:カーフレイズ 30–50%1RM×20–30回×2–4セット/休30–45秒
よくある質問(Q&A)
Q1. 筋肥大は65%1RM以上でしか起きませんか?
A. いいえ。 低負荷(≈30–60%1RM)でも近接限界まで行えば肥大は可能です。高強度は筋力向上に有利。
Q2. II型(白筋)だけが肥大する?
A. 誤り。 I型も肥大します。刺激様式や疲労特性により寄与割合が変わります。
Q3. BFR(加圧)は安全?
A. 適切な機器と圧設定、禁忌確認が前提。リスクのある方は医療者の管理下で。無理な高負荷併用は逆効果。
Q4. ノンロックはいつ使う?
A. 代謝ストレスを高めたい時に有効。軽〜中負荷・高回数・短休息で設計。
Q5. 週何回が良い?
A. 部位当たり週2–3回が目安。週10–20セット/部位を体調と回復で調整。
Q6. 痛みや関節水腫がある時は?
A. 先に鎮痛・腫脹管理と筋再教育。いきなり高負荷は出力抑制を強め非効率。
最終更新:2025-10-09
