上腕二頭筋の概要
上腕二頭筋は、短頭(烏口突起起始)と長頭(肩甲骨関節上結節起始)の二つの腱頭から成り、肘では屈曲の主力・前腕では回外の強力筋として働きます。肩関節では挙上の補助と上腕骨頭の求心化(安定化)に寄与し、持ち上げ動作や荷重時の関節保護に重要です。
力学的には回内位で屈曲トルクが低下(橈骨粗面の向きが不利→二頭筋の屈曲力↓、上腕筋の相対寄与↑)。一方、回外位かつ肘屈曲約90°で回外力が最大となり、この角度で二頭筋は最も強く回外に働きます。肘伸展位では回外筋(supinator)の寄与が相対的に増加します。
※一部で「肘屈曲で回外力が低下」と誤解されがちですが、回外は肘屈曲90°付近で最も効くのが二頭筋の定番特性です。
基本データ
| 項目 | 内容 |
| 支配神経 | 筋皮神経 |
| 髄節 | C5-6 |
| 起始 | ①長頭:関節上結節+上方関節唇 ②短頭:烏口突起先端 |
| 停止 | 橈骨粗面、上腕二頭筋腱膜(前腕筋膜へ) |
| 栄養血管 | 上腕動脈 |
| 動作 | 肩関節:屈曲(主に長頭)、水平内転(主に短頭) 肘関節:屈曲/前腕:回外 |
| 筋体積 | 366㎤ |
| 筋線維長 | 14.1㎝ |
| 速筋:遅筋(%) | 53.6:46.4 |
運動貢献度(順位)
| 貢献度 | 肘関節屈曲 | 前腕回外 | 肩関節屈曲 |
| 1位 | 上腕二頭筋 | 上腕二頭筋 | 三角筋(前部) |
| 2位 | 上腕筋 | 回外筋 | 大胸筋(上部) |
| 3位 | 腕橈骨筋 | 長母指外転筋 | 上腕二頭筋 |
| 4位 | 長橈側手根伸筋 | 長母指伸筋 | 前鋸筋 |
※肩関節の水平内転も大胸筋、三角筋に続いて3番目の貢献度であり、肘だけでなく肩にも重要な役割を持つ非常に優秀な筋肉です。
上腕二頭筋の触診方法
①上腕二頭筋長頭

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肘90°屈曲・前腕回外の反復で、上腕前面中央の隆起と腱の緊張を触知。
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肩前面の結節間溝で長頭腱を指で軽く左右ロールさせると位置確認しやすい。
②上腕二頭筋短頭

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上腕前面の内側寄り。同肢位で軽く水平内転を足すと短頭にテンションが乗る。
ストレッチ方法

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壁に手を付き、肩伸展しながら体幹を前傾。
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指先↓(前腕回内)=長頭優位で伸ばしやすい
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指先↑(前腕回外)=短頭優位
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20–30秒×3–4回。肩前面の鋭い痛み・しびれが出る角度は避ける。
筋力トレーニング

① バーベル/ダンベル・カール
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前腕回外でグリップ。肩はすくめない。肘は体側固定、反動を使わない。
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8–12回×2–4セット
代償パターンに注意:体幹反り・肩前方移動・手関節の屈曲は負荷逃がし。**ゆっくり降ろす(エキセントリック)**で腱の耐性UP。
トリガーポイント(TP)

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主訴:肩前面・肘外側(橈側)の深い痛み、上腕前面のだるさ/肘屈曲・回外の持久力低下。
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誘因:チンニング・懸垂・反復カール、手掌上向きでの重量物挙上、投球・ラケット動作、長時間の肘屈曲作業。
関連病態と評価のヒント
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上腕二頭筋長頭腱炎:結節間溝での摩擦・overuse。外旋位で緊張↑。
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Speedテスト(肩屈曲抵抗)・Yergasonテスト(回外抵抗+肘屈曲)で肩前痛・腱の滑走不良をチェック。
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SLAP損傷(上方関節唇):投球や牽引で長頭起始部を損傷。クリック感・深部痛。
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長頭腱断裂:高齢者に多い。ポパイ変形(筋腹遠位移動)+急な力抜け。
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長頭腱脱臼:結節間溝の保持不全。肩前面の引っかかり感。
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烏口突起炎:短頭起始部の圧痛・前肩部痛。
よくある質問(Q&A)
Q. 前腕位で効きが違うのはなぜ?
A. 橈骨粗面の向きが変わるためです。回外位で二頭筋の屈曲・回外が最も有利、回内位では上腕筋の寄与が増えます。
Q. 二頭筋を“肩に効かせず”に鍛えるコツは?
A. 肘を体側に固定し、肩の前方移動を出さないこと。肘が前に出ると大胸筋・三角筋前部に逃げます。
最終更新:2025-09-12
