変形性膝関節症(大腿脛骨関節症)のリハビリ治療

変形性膝関節症の概要

  • 定義:膝の関節軟骨や周辺組織が変性し、関節腔が狭小化して痛みや機能低下を生じる状態。

  • 部位:大半は大腿脛骨関節(FT)内側が主座(O脚=内反変形が進行)。

  • 進行の力学:歩行時(立脚前半相)の過大な外反モーメントが内側荷重を増やし、内側の軟骨・半月板の代謝不全→変性を促進。

    • 原因例:①膝内反位荷重(ラテラルスラスト) ②骨盤外方位 ③COM外方位 ④COP外方位。

変性が起こると何が起きる?

  • 骨棘・骨硬化・骨嚢胞:関節を安定させようとする二次的反応。

  • 滑膜炎→関節水腫:遊離片や摩擦刺激で滑膜が炎症・肥厚し、滑液過多(いわゆる“水が溜まる”)。

  • 荷重分散の破綻:変性組織では圧が偏在→変形が進行。

痛みのメカニズム(誤解しがちなポイント)

  • 軟骨・軟骨下骨には痛覚がほぼない。主に痛むのは滑膜・関節包・脂肪体・半月板周囲などの軟部組織。

  • 歩行時痛はFT関節の滑膜/半月板由来が多く、立ち上がり痛はPF関節の膝蓋下脂肪体が関与しやすい。

画像での確認

  • X線:関節裂隙狭小化、骨棘、骨硬化、アライメント(K/L分類の目安に)。

  • MRI:骨髄浮腫、半月板損傷、滑膜炎、脂肪体炎症など疼痛源の推定に有用。

ガイドラインの要旨(抜粋)

  • 推奨A

    • 運動療法(有酸素・筋力・ROM)+薬物の併用

    • 体重管理歩行補助具の活用

    • NSAIDsは最小有効量で

    • 重症例は関節置換術が有効で費用対効果も高い

  • 推奨B:膝装具(中等度まで)、外側楔状インソール、外用NSAIDs、ヒアルロン酸注射(症例選択)

  • 推奨C:温熱、TENS、ステロイド関節内注、などは症例により検討


リハ戦略の組み立て(臨床フロー)

1) 力学と組織を“切り分けて”考える

  • 力学的推論:外反モーメントを何が押し上げている?(膝内反位荷重/骨盤外方位/COP外方位 など)

  • 組織学的推論歩行痛→FT(滑膜・半月板)、**立ち上がり痛→PF(脂肪体)**の可能性が高い。

2) 炎症コントロール(最優先)

  • 強い炎症期:免荷(杖・歩行器)、活動量抑制、NSAIDs/ステロイド注射を主軸に。徒手療法の効果は限定的。

  • 軽度炎症期痛くない範囲の自動運動で回復を後押し(筋収縮でマイオカインが抗炎症的に働く)。温熱や外用剤の併用も可。

3) 伸展制限の改善(ラテラルスラスト対策の要)

  • 痛む部位で鑑別

    • 膝蓋下方→脂肪体

    • 膝蓋上方→膝蓋上包

    • 膝窩→ハム・腓腹筋

  • 介入:原因組織をリリース→クアドセッティングで終末伸展の獲得→立脚前半相の安定化。

4) 筋機能とフォーム

  • 股関節内転筋群+内側広筋:ラテラルスラスト抑制に重要。

  • 中殿筋・大殿筋:骨盤外方位の是正。

  • 実践:等尺→ショートレンジ→歩行課題(立脚前半相を再学習)。“膝とつま先の向きを一致”“COPやや前方”を徹底。

5) 装具・インソール・免荷

  • 側方支柱付サポーター:内反動揺の抑制。

  • 外側楔状インソール:COP外方位・足部内反傾向に。扁平足にはアーチサポートで膝屈曲位荷重を軽減。

  • 歩行補助具(目安の免荷率):

    • 歩行器≈80%|松葉杖≈67%|四点杖≈30%|T杖≈25%

    • 歩数管理を併用(例:1000→1500→2000歩、翌日増悪なしを目安)。

6) 体重管理と手術適応

  • 減量:症状改善体感には体重の5%以上が目安。食事中心で、無理なく。

  • 手術:機能障害が強い進行例はTKAを検討。骨切り術は症例選択。


よくあるQ&A

Q1. “軟骨がすり減る=痛い”のですか?
A. 直接は滑膜・脂肪体・関節包などが痛みの主因です。軟骨自体は痛覚が乏しいです。

Q2. まず何を優先すべき?
A. 炎症コントロールと免荷。次に伸展域の回復→歩行の安定化です。

Q3. 運動はしてよい?
A. 強い炎症期は控える。軽度炎症期~慢性期は痛くない範囲の自動運動が推奨。

Q4. インソールは誰に効く?
A. **COP外方位・足部内反(甲高・内反小趾含む)**が強いタイプで効果が出やすいです。

Q5. 立ち上がりで鋭い膝前面痛が出ます。原因は?
A. 膝蓋下脂肪体関与が示唆。脂肪体の滑走改善と膝蓋骨モビライゼーションを優先します。


最終更新:2025-10-07