要点
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**尾骨痛(coccydynia)**では、股関節内転筋(薄筋・大内転筋)に圧痛を伴う例が少なくありません。
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尾骨筋・肛門挙筋・肛門括約筋などの骨盤底筋群の過緊張は、尾骨や尾骨筋膜へ負担→痛みを助長。
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骨盤底筋群は内閉鎖筋・内転筋群と機能連結(筋膜連結:DFLの概念)し、隣接筋のオーバーユースが尾骨痛を誘発/遷延させることがあります。
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直接触れにくい骨盤底筋群は、連結筋(内転筋、内閉鎖筋)・呼吸・姿勢から間接的に整えるのが実践的。
病態の考え方(わかりやすく)
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過緊張タイプ:長時間座位、前傾での作業、排便時のいきみ、骨盤底の締め癖など → 骨盤底筋群が常時こわばる → 尾骨周囲の痛覚過敏。
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機能連結:
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深会陰横筋 ↔ 大内転筋・薄筋(会陰腱中心を介して緊張が波及)
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肛門挙筋 ↔ 内閉鎖筋(閉鎖膜・筋膜連結)
→ 内転筋や内閉鎖筋のトリガー/短縮があると、骨盤底の張力バランスが崩れ尾骨痛が出やすい。
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評価のポイント
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局所:尾骨圧痛、座位での痛み増悪、前後傾での痛み変化。
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関連筋:薄筋・大内転筋・内閉鎖筋の圧痛/短縮、股関節内外旋可動域。
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姿勢・動作:長時間座位、硬い椅子、骨盤後傾座り、排便姿勢・いきみの癖。
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関連要因:出産後、便秘/下痢、咳嗽、骨盤底症状(尿もれ・会陰部の重だるさ)。
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レッドフラッグ:発熱、外傷直後の強痛、腫脹・発赤、持続する夜間痛、神経症状(しびれ・筋力低下)→ 医療機関へ。
リハビリアプローチ(臨床&セルフケア)
1) 痛みの軽減・環境調整
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座位調整:尾骨を避けるドーナツ型ではなくU字/くり抜きクッション推奨。座面やや前傾、骨盤軽度前傾で座る。
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座位時間の分割:30–60分毎に立つ/歩く。
2) 間接アプローチ(筋・筋膜)
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内転筋のリリース:薄筋・大内転筋の圧痛点を軽圧で1–2分保持(痛み<5/10)。その後股関節外転・外旋ストレッチを30–60秒。
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内閉鎖筋のストレッチ:骨盤を安定させ、股関節外旋・外転位でゆっくり伸張(例:仰臥位での「合せ脚」ストレッチ)。
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殿筋群の柔軟性:中殿筋・梨状筋も併せてケアし、骨盤底の過緊張代償を減らす。
3) 骨盤底の過活動を鎮める
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呼吸連動:吸気で骨盤底がわずかに下降/呼気で自然に収縮する協調を再学習。まずはリラックス重視(収縮トレ前に過緊張を解く)。
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“下げて緩める”練習:温浴・腹式呼吸・骨盤底の意図的な脱力(息を止めない)。
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便秘対策(足台で膝を高く・いきまない)や水分・食物繊維も疼痛再発を抑える。
4) 再発予防(フォームと筋力)
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座位姿勢:骨盤軽度前傾、坐骨で座る。骨盤後傾の長時間固定を避ける。
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股関節スタビリティ:中殿筋・内転筋をバランス良く。横向きクラム、ヒップアブダクション、内転筋ブリッジなど。
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段階的な骨盤底筋トレ:過緊張が落ち着いた後に軽い呼気収縮3–5秒→完全リラックスを反復。いきみは厳禁。
よくある質問(Q&A)
Q1. 尾骨痛は自然に治りますか?
A. 外傷がなければ数週で軽快することもありますが、座位・骨盤底の癖が残ると再発しやすいです。環境調整と連結筋のケアが鍵。
Q2. どこから手をつければいい?
A. まずは座面と座り方の見直し、次に内転筋リリース+呼吸で骨盤底を緩める。それでも残るなら専門家へ。
Q3. 骨盤底筋は鍛えた方が良い? 緩めた方が良い?
A. 過活動なら“まず緩める”が先。痛みが落ち着いてから低負荷・短時間の収縮練習に移行します。
Q4. いつ受診すべき?
A. 転倒後の強痛、夜間増悪、腫脹・発赤、発熱、しびれ・筋力低下があれば整形外科/骨盤底外来へ。
最終更新:2025-10-08
