手部のしびれの原因とリハビリ治療

手部のしびれと支配神経

要旨:手部しびれは「どこで神経が絞扼されているか」を素早く仮説立て→触診と簡易テストで切り分け→原因筋・関節に的中させた介入、が肝。代表的な4パターン(正中・橈骨・尺骨・頚椎神経根)を、症状・検査・保存療法・手術適応の順で整理します。


① 正中神経麻痺(円回内筋〜浅指屈筋〜手根管)

正中神経の支配神経

どこで絞扼?

  • 近位:①円回内筋部、②浅指屈筋アーケード
    └ 前骨間神経も巻き込むと長母指屈筋・深指屈筋・方形回内筋に力が入りにくい/肘〜前腕痛が先行しやすい。

  • 遠位:③手根管(最頻)。母指球筋の筋力低下+母指〜環指橈側3.5本の掌側知覚低下。手掌近位は保たれる。

現場の見分けポイント

  • 円回内筋部:前腕回内抵抗で痛み・しびれ増悪、回外・肘伸展で軽減。

  • 手根管:夜間・朝方のしびれ、手を振ると軽減(フリックサイン)、Phalen/Tinel陽性。

リハビリの軸

  • 近位絞扼(①②):原因筋のリラクセーション(摩擦・持続圧・筋膜スライド)、回内過多となる作業姿勢の修正、前腕回旋の自動他動ROM

  • 手根管(③):装具と活動調整が主浮腫・炎症由来なら安静で自然寛解も

    • 参考:未治療で約35%が自然寛解。若年・片側は予後良好。

  • 手術適応:母指球萎縮・持続麻痺・夜間痛高度・保存不応。


② 橈骨神経麻痺(上腕〜回外筋〜遠位浅枝)

橈骨神経の支配神経

代表的な部位と特徴

  • 上腕骨橈骨神経溝:長時間圧迫(“ハネムーン麻痺”)。解除で改善が多いが、強圧・長時間は軸索障害も。

  • 回外筋部(フロセのアーケード):深枝が回外筋トンネルで絞扼→下垂指、総指伸筋・長短母指伸筋の筋力低下。

  • 前腕橈側遠位の浅枝感覚枝のみ。母指背側〜示指橈側のしびれ優位(痛み>筋力低下なし)。

リハビリ

  • 神経上の過緊張筋(回外筋・腕橈骨筋・短橈側手根伸筋)を徹底リリース

  • 促通:徒手で手指伸展タッピング/軽負荷反復。

  • 作業動作では回外+手関節背屈の反復負荷を制限


③ 尺骨神経麻痺(ギオン管/肘部管)

尺骨神経の支配領域

どこで?

  • ギオン管(手掌):有鉤骨鉤×豆状骨のトンネル。深枝の運動麻痺(手内在筋)>知覚訴えになりがち。

  • 肘部管(尺側手根屈筋起始部):頻度高い。尺側手関節〜小指尺側まで知覚障害。ガングリオン、OA、オーバーユースが誘因。

リハビリ

  • 尺側手根屈筋/小指外転筋周囲の筋膜リリース、肘屈曲長時間保持の回避、夜間肘伸展スプリント

  • **神経滑走(尺骨神経グライド)**は症状再現しないレンジで。

  • 手術:筋萎縮・持続運動麻痺・保存不応。


④ 頚椎症性神経根症(C6/C7/C8優位)

手部のしびれと神経根支配領域

感覚・運動の地図(簡略)

  • C6:前腕橈側〜母指/上腕二頭筋弱い

  • C7:示〜中指/上腕三頭筋弱い

  • C8:環〜小指/浅指屈筋など弱い

リハビリ

  • 伸展で悪化しやすい→頸部伸展の制限/軽度屈曲位での安静、胸郭・肩甲帯の可動化で椎間孔圧低下を狙う。

  • 約70%は保存で自然寛解。進行性麻痺・膀胱直腸障害は速やかに専門医へ。


共通の評価・注意点

  • 神経学的スクリーニング:感覚(ピン・軽擦)/筋力MRC/腱反射。

  • 誘発試験:Phalen/Tinel(手根管)、PFG(前骨間神経)、回外筋抵抗、肘屈曲テスト(肘部管)など。

  • レッドフラッグ:急速な筋萎縮、夜間痛が強い、びまん性脱力、頚髄症サイン(巧緻運動低下・歩行障害)→受診を促す。


リハビリ処方テンプレ(保存期)

  1. 疼痛・炎症コントロール

    • 増悪肢位・反復動作の制限、夜間装具(手根管/肘部管)。

  2. 原因筋・神経周囲の軟部組織リリース

    • 円回内筋/回外筋/尺側手根屈筋/母指球・小指球。

  3. 神経滑走(症状非再現レンジ)

    • Median/Ulnar/Radial のテンションではなくグライド中心に。

  4. 末梢筋の再教育

    • 母指対立・外転(APB)、手内在筋(ピンチ・インターロッシイソメトリック)、指伸展の促通。

  5. 作業姿勢・道具の再設計

    • リストニュートラル、キーボード角度、握り径の最適化、休憩比率。


よくある質問(Q&A)

Q1. しびれが左右で違う日は様子見でもいい?
A. 症状変動はよくありますが、筋力低下・巧緻運動低下・夜間悪化が強ければ早期受診を。

Q2. 手根管はリハビリで治る?
A. 浮腫・炎症主因なら改善余地あり。ただし構造的狭窄では手術優位。装具+活動調整で経過をみます。

Q3. 神経滑走は痛いほどやる?
A. いいえ。症状を再現しない振幅・回数で。痛み誘発は逆効果。

Q4. 仕事を休めない場合のコツは?
A. 作業サイクルの短縮姿勢のマイクロブレイク入力デバイス調整(掌屈・尺屈を減らす)を優先。

Q5. どれくらい続ければ効果が出る?
A. 軽症なら2–6週で自覚改善が多い。筋力回復は8–12週を目安に。


最終更新:2025-10-06