なぜ握力が大事か
握力は、手の力だけでなく全身の筋力・活動量・健康行動の縮図になりやすい指標です。安価で短時間、しかも非侵襲。だから**スクリーニング(ふるい分け)**として非常に価値があります。重要なのは「原因」断定ではなく、将来の健康リスクを“相関”として把握できる点です。
握力で予測できる5つのリスク(概観)
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死亡リスク
国際共同研究では、握力が5kg低下するごとに全原因死亡リスクが約16–17%上昇と報告。心血管・非心血管死のいずれにも関連がみられました(相関)。 -
骨折リスク
握力低下=全身筋力低下のサインになりやすく、転倒や骨折の間接的リスク上昇が示唆されます。活動量・栄養・骨密度の確認が重要です。 -
脳卒中リスク
縦断研究では、歩行速度や握力の低下と脳卒中・認知症の将来リスク上昇が関連。握力が強い群は弱い群と比べ脳卒中リスクが有意に低いとする報告があります(相関)。 -
心疾患リスク
心血管アウトカムの予測で、握力は収縮期血圧に匹敵する予測因子になり得るとの報告も(相関)。機序は単一ではなく、サルコペニア、生活習慣、血管機能など複合要因が関与すると推測されています。 -
認知症リスク
握力の継時的低下は認知機能低下の早期シグナルになり得ます。例えば1年で約0.45kg(450g)以上の握力低下と認知症発症リスク上昇の関連を示す報告もあります(相関)。※研究条件・集団により数値は異なります。
※いずれも因果関係を断定するものではありません。握力は「体力・活動性・栄養・慢性疾患負荷」を反映する“総合マーカー”と捉えるのが安全です。
測定を正しく行うコツ(簡易プロトコル)
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姿勢:立位(または背もたれあり座位)、肩は自然位、肘伸展または90°屈曲のいずれかで毎回同条件に統一
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グリップ:第二関節がグリップのカーブに合う持ち方(握り幅を調整)
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回数:左右各2–3回測り最大値を採用
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タイミング:朝の関節硬さ・痛み、利き手差、直前の運動・カフェイン摂取の有無をメモ
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頻度:月1回程度の定点観測で十分(リハ・トレ中は2週に1回も可)
結果をどう活かす?
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**“低い”“下がってきた”**のどちらも要注意。既往歴・栄養・睡眠・活動量と合わせて全体像を評価。
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介入の基本:
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レジスタンストレーニング(下肢・体幹+前腕)
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1日7,000–8,000歩を目安に有酸素活動を足す
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蛋白質(体重×1.0–1.2g/日の目安)とビタミンDの確保
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握力そのもののトレ(ハンドグリップ、ピンチ、リストカール)を週2–3回
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医療連携:急激な低下や他症状(体重減少、易疲労、浮腫、胸痛・息切れ、麻痺・しびれ)がある場合は受診を推奨。
よくある質問(Q&A)
Q1. どのくらいの握力だと“低い”の?
A. 年齢・性別で大きく変わります。自分の基準値を作り、経時変化を見るのが実用的です(同条件で定点観測)。
Q2. 片手だけ弱い/痛い場合は?
A. 手関節や肘・頸椎の問題、腱鞘炎などでも低下します。疼痛コントロールとフォーム修正、必要なら整形外科/リハへ。
Q3. 握力は鍛えると上がりますか?
A. はい。全身の筋力トレ+前腕の局所トレ+十分な栄養と睡眠で改善が期待できます。
Q4. 血圧とどちらを優先してチェックすべき?
A. 両方。血圧は治療介入の直接ターゲット、握力は機能・予後の目安。セットで把握すると価値が上がります。
Q5. 在宅で測るとバラつきます
A. 測定条件の固定(時間帯、姿勢、グリップ幅、回数)でブレが減ります。最大値を記録し、トレンドで判断しましょう。
最終更新:2025-10-08