握力検査は、簡便に実施できるにも関わらず、とても有益な情報をもたらしてくれる検査のひとつです。
それは単純に物を握るだけの力を測るものではなく、あらゆる疾患の予測リスクとして用いることができます。
握力で予測できる5つのリスク
- 死亡リスク
- 骨折リスク
- 脳卒中リスク
- 心疾患リスク
- 認知症リスク
予測①:死亡リスク
カナダのマクマスター大学にて、世界17ヵ国を対象とした、握力の生命予後予測価値を検証する大規模研究が実施されました。
その結果、握力は全原因死・心血管因死・非心血管因死リスクを層別化しうることが判明しました。
具体的には、握力が5kg低下ごとに、それぞれの死亡リスクが16〜17%の範囲で上昇したと報告されています。
予測②:骨折リスク
握力は全身の粗大筋力を把握することに役立ちますので、握力が低下している場合は全身の筋力が低下している可能性が示唆されます。
その場合は、日常の活動状況などを聴取し、十分な運動量が確保できているかを確認しておく必要があります。
骨折を予防するためにも、握力測定は有用な評価といえます。
予測③:脳卒中リスク
米ボストン医療センターの調査では、「歩行速度」と「握力の低下」は将来的な認知症や脳卒中リスクが高まる傾向があることが示されました。
その中で、握力が強いヒトは弱いヒトに比べて、脳卒中リスクが42%も低下すると報告されています。
予測④:心疾患リスク
心疾患リスクを予測するうえで、「収縮期血圧」を計測することは非常に重要です。
カナダのマクマスター大学の調査では、「握力」は心血管死を予測するうえで「収縮期血圧」と同レベルの予測因子であることが示されました。
ちなみに、何故そこまでの関連が握力に認められているかはまだわかっていないとのことです。
予測⑤:認知症リスク
筋力と認知症の発生率についての関係性はあらゆる研究で示されており、その中でも握力検査は世界各国で多用されています。
その調査の中で、1年以内に握力が450g以上の減少を示した人は、そうでない人より認知症リスクが9%高くなると報告されました。
認知症は、脳の委縮が進行することによって発症します。
その初期段階として、萎縮した細胞との連携がなくなり、握力が発揮できなくなっている可能性があります。
とくに神経細胞は「舌」と「手」に集中しており、それらが最も影響を受けやすいからとも考えられます。