有痛性分裂膝蓋骨のリハビリ治療

有痛性分裂膝蓋骨の概要

有痛性分裂膝蓋骨

  • 分裂膝蓋骨(二分膝蓋骨)は、膝蓋骨の二次骨化中心の癒合不全による発生学的(先天的というより発達的)変異。多くは無症候で偶発的にX線で見つかる。

  • 痛みを伴う場合を有痛性分裂膝蓋骨と呼び、成長期(とくに10代)の跳躍系スポーツで発症しやすい。

  • 好発部位外側上極(superolateral)で、外側広筋・外側膝蓋支帯・TFL/ITBによる牽引ストレスが関与。

単純X線写真

有痛性分裂膝蓋骨

  • X線:分裂片の辺縁が平滑・皮質化していれば古くからの癒合不全を示唆。

  • 骨折との鑑別:骨折は鋭い不整縁、周囲骨髄浮腫(MRI)、外傷歴が手掛かり。

  • MRI:症候性では分裂線(線維軟骨性結合)周囲の浮腫が出やすい。

  • よく似る疾患Sinding–Larsen–Johansson病(下極の骨端症)、膝蓋腱障害(ジャンパー膝)、**膝蓋骨スリーブ骨折(小児)**など。

外側上方にストレスが加わる原因

外側広筋と外側膝蓋支帯

  • 外側組織のタイトネス

    • 外側広筋(VL)大腿筋膜張筋(TFL)/腸脛靭帯(ITB)外側膝蓋支帯(LPR)

  • 動的ニーイン(膝内反・内旋):着地や切り返しで膝蓋骨が外側へ牽引され、分裂部の離開ストレスが増大。

有痛性分裂膝蓋骨とニーイン

  • 膝関節伸展モーメントの増大

    • 屈曲位荷重+骨盤後傾+体幹後方偏位(COM後方)+COP後方大腿四頭筋牽引が増す → 分裂部に牽引ストレス。

危険因子(外側上極タイプ)

  • 膝蓋骨外側組織のタイト

  • 膝関節伸展モーメントの増大習慣(歩行・着地フォーム)

  • 動的ニーイン(股内旋・内転/膝内反)

リハビリテーション(保存療法の骨子)

1) 痛みのコントロールと安静

  • 最重要運動休止(部活一時中止)と分裂部への離開ストレス軽減

  • 固定・保護:膝蓋骨をテーピング/ソフトサポーター外側牽引を抑制(必要に応じて医師判断で短期固定)。

  • 日常動作:深い屈曲や反復ジャンプ、片脚着地の反復を回避

2) 外側組織の柔軟性改善

  • 手技/セルフストレッチVL、TFL/ITB、LPR(外側膝蓋支帯)

  • 目的外側牽引の低減膝蓋骨トラッキング改善。※痛みが強い急性期は無痛域で軽負荷

3) 運動療法(運動連鎖の再学習)

  • 股関節中殿筋・深外旋筋等尺→等張シングルスクワットのニーアウト練習。

  • VMO再教育(軽度屈曲位での膝蓋骨内方グライドを意識)、クローズドチェーン優先

  • 体幹・骨盤骨盤前傾位の維持胸郭前傾/軽前傾姿勢COM/COPを前方化

  • 禁忌気味:痛みが残存する間のオープンチェーン高負荷膝伸展反復ジャンプは避ける。

4) フォーム指導(着地・ディフェンス姿勢)

  • 膝とつま先を同方向に(ニーイン回避)。

  • 骨盤は前傾体幹はやや前傾COM/COP前方へ。

  • つま先からソフトランディング過度な屈曲位荷重を避ける

5) 復帰目安(例)

  • 圧痛消失、日常階段でNRS 0–1/10

  • 片脚スクワット/ドロップランディングニーインなし

  • シングルホップ左右差<10%ジャンプ後疼痛なし
    ※復帰判断は医師・理学療法士と相談のうえ段階的に。


よくある鑑別・臨床メモ

  • 無症候の分裂膝蓋骨:X線で見つかっても痛みの主因とは限らない圧痛局在・動作痛・MRI浮腫を総合判断。

  • S–L–J病/ジャンパー膝:いずれも下極~膝蓋腱付着部痛が主。外側上極の限局圧痛なら有痛性分裂を疑う。

  • 外傷歴が明確急性疼痛なら骨折を最優先に除外


Q&A

Q1:X線で分裂があれば必ず痛みの原因?
A:いいえ。分裂膝蓋骨の多くは無症状。圧痛局在・誘発動作・MRI所見を合わせて判断する。

Q2:安静はどのくらい必要?
A:疼痛が0~1/10まで下がるまでは跳躍・ダッシュ系は中止。通常は数週単位で再評価し、段階的に復帰。

Q3:テーピングは有効?
A:外側牽引の抑制(内側グライド誘導)や分裂部の離開ストレス軽減に有効な例がある。痛み指標を追跡して効果判定。

Q4:手術は必要?
A:保存療法で改善しない持続痛や競技制限が強い場合に、分裂片切除や固定が検討されることがある(整形外科の判断)。

Q5:再発予防のコアは?
A:外側組織の柔軟性股外転・外旋筋とVMOの協調ランディング/ディフェンスのフォーム最適化


最終更新:2025-10-07