棘上筋の概要
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棘上筋は肩甲骨棘上窩から起こり、上腕骨大結節上部+関節包に停止する回旋筋腱板(棘上・棘下・小円・肩甲下)の一員。
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役割は挙上開始(外転初動)と骨頭の求心化。三角筋だけが働くと骨頭が上方へずれ、肩峰下インピンジメントを誘発。
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近年、停止の一部が小結節側にも及ぶ報告あり。線維配列により前部は内旋、後部は外旋にわずかに関与。
基本データ
| 項目 | 内容 |
| 支配神経 | 肩甲上神経 |
| 髄節 | C5-6 |
| 起始 | 肩甲骨の棘上窩 |
| 停止 | 上腕骨の大結節上部、肩関節包 |
| 栄養血管 | 肩甲上動脈 |
| 動作 | 肩関節外転(初動)、骨頭求心化/後部線維:外旋、前部線維:内旋 |
| 筋体積 | 89㎤ |
| 筋線維長 | 4.3㎝ |
| 速筋:遅筋(%) | 40.7:59.3 |
運動貢献度(順位)
| 貢献度 | 肩関節外転 |
| 1位 | 三角筋(中部) |
| 2位 | 棘上筋 |
| 3位 | 前鋸筋 |
| 4位 | 僧帽筋 |
棘上筋の触診方法

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体位:座位または腹臥位。肩を軽度外転し、棘上窩の筋腹を指腹で探る。
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誘導:外転方向に軽く抵抗を与えて収縮を確認。
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注意:表層の僧帽筋上部の過緊張をまず落とす(呼吸+肩甲骨後傾/下制)と触れやすい。
ストレッチ方法

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方法:ストレッチ側の手を背中へ回す→反対手で手首をやさしく内転方向へ誘導。
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ポイント:肩甲骨は後傾・下制を意識。鋭い前面痛やしびれが出たら中止(烏口上腕靭帯や前関節包へ過負荷の可能性)。
筋力トレーニング

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フルカン(Scaption):肩甲面(前額面より30–40°前)で親指上、0→90°。0.5–2kg、10–15回×2–3セット。
※**エンプティカン(内旋高挙上)は肩峰下圧↑**のためトレでは避ける。 -
外旋エクサ(軽負荷):腱板の求心性を高める。脇しめ肘90°で中間位外旋。
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肩甲帯の協調:前鋸筋・僧帽筋下部で上方回旋+後傾を作ってから挙上。
トリガーポイント(TP)

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主訴:肩外側の深部痛、外転初動や洗髪・上棚での刺すような痛み。上腕外側~前腕・手関節橈側へ放散することあり。
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誘因:重い荷物の長時間保持、頭上作業、肘支持なしPC作業、転倒後、巻き肩・前方肩。
- 関連記事:棘上筋のトリガーポイント徹底ガイド
癒着しやすい部位と神経
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肩甲切痕周囲:筋・腱膜の癒着で肩甲上神経を絞扼→棘上筋・棘下筋筋力低下・萎縮、Drop-arm陽性、外転・外旋筋力低下。
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停止部(大結節):**“筋腹は柔らかいのに腱だけ突っ張る”**感。夜間痛・側臥位で増悪しやすい。
関連疾患と見分け方
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腱板損傷(棘上筋腱):夜間痛+挙上不能・明らかな筋力低下なら画像評価。小~中断裂は保存で改善も、広範断裂は手術検討。
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腱板炎/肩峰下滑液包炎:挙上痛・収縮痛が主体。炎症コントロールで速やかに軽快することも。
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肩関節不安定症:求心性低下→インピンジ悪化。腱板+肩甲帯安定化を同時進行。
評価・介入の小技(Clinical Tips)
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作業環境:**前腕支持(アームレスト)**導入、マウス位置の改善で負荷激減。
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胸椎伸展→肩甲骨後傾→挙上の順で可動を作ると痛みが下がりやすい。
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夜間痛には仰臥位+抱き枕で肩前方牽引を減らす。
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改善停滞時は小胸筋・大胸筋短縮や頸椎由来の関与を再スクリーニング。
よくある質問(Q&A)
Q1. 三角筋を鍛えれば十分?
A. 三角筋だけだと骨頭が上へずれやすい。**棘上筋(求心化)+肩甲帯筋(前鋸筋・下部僧帽筋)**をセットで鍛えるのが安全。
Q2. Empty-canはダメ?
A. テスト目的なら有用だが、トレではFull-canが無難。内旋+高挙上は**肩峰下圧↑**になりやすい。
Q3. どの角度が一番効く?
A. 肩甲面で0→60→90°と段階的。すくみ肩や前突肩なら0〜60°でフォーム固めを優先。
Q4. 痛みが強い時はどうする?
A. まず疼痛と炎症の鎮静(休息・アイシング・医療的介入)。痛みが落ち着いてから等尺→等張へ。
Q5. 断裂か筋膜性疼痛か迷う…
A. 夜間の挙上不能・Drop-arm陽性・筋力著減は断裂を疑うサイン。画像含め医師評価を。
Q6. 予防のコツは?
A. 肩甲骨の後傾・上方回旋(前鋸筋・下部僧帽筋)を習慣化。デスクワークは胸椎伸展可動と猫背是正をセットで。
最終更新:2025-09-14



