大腿二頭筋(biceps femoris)

この記事では、大腿二頭筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。

大腿二頭筋の概要

大腿二頭筋の起始停止

大腿二頭筋は名前の通りに2つの頭(起始)を持っており、大腿骨から起始する部分を短頭、坐骨結節から起始する部分を長頭といいます。

長頭は筋腹が近位(大腿上方)に存在することから、膝関節屈曲よりも股関節伸展への貢献度が高くなっています。

短頭は長頭の深層に位置する小さい筋肉で、膝関節屈曲の筋力を発揮するよりも、膝関節の動きをコントロールする役割が大きいです。

ハムストリングスの概要

ハムストリングス

ハムストリングス(hamstrings)は大腿後面に位置する筋肉で、①半膜様筋、②半腱様筋、③大腿二頭筋の総称です。

大腿二頭筋は外側に位置するために外側ハムストとも呼ばれ、半膜様筋と半腱様筋は内側ハムストと呼ばれます。

外側ハムストは姿勢制御に関わるために遅筋線維が豊富で、内側ハムストは筋出力を発揮するために速筋線維が豊富なのが特徴です。

基本データ

項目

内容

支配神経 ①長頭:脛骨神経

②短頭:総腓骨神経

髄節 L5-S1(長頭・短頭)
起始 ①長頭:坐骨結節

②短頭:大腿骨粗面の外側唇の中部1/3と外側筋間中隔

停止 腓骨頭
栄養血管 貫通動脈、膝窩動脈、下殿動脈
動作 股関節の伸展,内転

膝関節の屈曲、下腿の外旋

筋体積 317
筋線維長 8.9
速筋:遅筋(%) 33.166.9

運動貢献度(順位)

貢献度

股関節伸展

膝関節屈曲

1 大殿筋 半膜様筋
2 大腿二頭筋(長頭) 半腱様筋
3 大内転筋 大腿二頭筋
4 半膜様筋 腓腹筋
5 半腱様筋 薄筋

大腿二頭筋の触診方法

1.長頭の触診

自己触診:大腿二頭筋長頭

写真では、下腿の外旋運動を強調しながらの膝屈曲運動にて、大腿二頭筋長頭の内縁を触診しています。

2.短頭の触診

自己触診:大腿二頭筋短頭

大腿二頭筋短頭の表層は長頭によって完全に覆われていますので、大腿後方からの触診は困難です。

写真では、股関節を過伸展、膝関節を100度屈曲した肢位からの膝関節屈曲運動にて、大腿二頭筋短頭を大腿外側から触診しています。

大腿の断面図

大腿中央の断面図|ハムストリング

大腿中央を断面でみた場合、大腿二頭筋は後区画に位置しており、外側広筋および中間広筋と筋間中隔によって遮られています。

短頭は筋間中隔からも起始しており、長頭に比べて筋面積も狭いために筋出力はそれほど高くありません。

ストレッチ方法

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長坐位にて片脚を屈曲させ、ストレッチ側の脚を外転・内旋位とし、その状態で骨盤を前傾します。

膝関節をやや屈曲すると近位部をより伸張できます。

筋力トレーニング

 大腿二頭筋の筋力トレーニング

仰向けにてブリッジング(お尻を挙上)を行います。

膝関節の屈曲角度が増すと大殿筋が強く働くため、屈曲は浅めにして実施することがポイントです。

アナトミートレイン

アナトミートレイン:筋膜:SBL

ハムストリングスはアナトミートレインの中で、SBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)に繋がっています。

その中でも大腿二頭筋長頭は仙結節靭帯を介して仙腸関節にも影響を与えるため、長時間の歩行時に腰痛を訴える場合はチェックが必要です。

大腿二頭筋にトリガーポイントが発生している場合は、膝窩部に痛みを訴え、正座が困難となるケースが多いです。

SBLは身体の屈曲を制動している筋膜で、滑走不全が生じると前屈制限や腓返り(腓腹筋の痙攣)を起こす原因となります。

脊柱起立筋群と大腿二頭筋長頭は主要姿勢筋とも呼ばれており、正常な立位姿勢を保つために最も重要な役割を担っています。

骨盤が後方変位しているケースでは、姿勢保持のために脊柱起立筋群や大腿四頭筋が緊張することになります。

前述したように大腿二頭筋長頭は筋間中隔を介して外側広筋と繋がるため、筋膜のタイトは取り除くようにすることが大切です。

歩行時の筋活動

ハムストリングの歩行時のの筋活動

遊脚終期(TSw)から膝関節伸展の減速のために遠心性に収縮し、荷重応答期(LR)まで活動して股関節の伸展を補助します。

また、LRでは大腿四頭筋と同時収縮を行うことにより膝関節を安定させます。

歩行時の筋活動|ハムストリング

関連する疾患

  • 大腿二頭筋の肉離れ(断裂)
  • 膝関節伸展制限
  • 膝関節屈曲制限
  • 腓骨頭脱臼
  • tight hamstrings
  • 内側半月板損傷 etc.

大腿二頭筋の肉離れ(断裂)

ハムストリングスは肉離れや断裂を起こしやすい筋肉であり、その後遺症としてトリガーポイントが形成していることが多いです。

股関節伸展運動の主力筋は大殿筋ですが、ハムストリングスや脊柱起立筋が過度に働くケースでは、太ももの裏が攣りやすくなっています。

そのため、大殿筋の筋力トレーニングを行う際は、ハムストリングスの収縮を抑制することが必須です。

大腿二頭筋のトリガーポイント(圧痛点)は多発的に出現しやすく、関連痛は大腿外側から膝関節外後方にかけて痛みが放散します。

膝関節伸展制限

膝関節伸展制限(屈曲拘縮)において、筋性要因の最も重要な筋が大腿二頭筋短頭になります。

ハムストリングスの問題で膝が伸ばしにくくなることはイメージしやすいかと思いますが、屈曲制限にも関与していることが多いです。

膝関節を深屈曲させた際に膝窩部痛を訴えるケースでは、大腿二頭筋に滑走不全が存在している可能性が高いです。

治療では大腿二頭筋の外縁(外側)を触診していき、外側広筋や腸脛靭帯との間隙をリリースするようにしていきます。

内側半月板損傷

大腿二頭筋は短頭と長頭のどちらもが下腿の外旋に作用するため、緊張の増大は下腿外旋症候群を引き起こす原因となります。

下腿が外旋するとニーイン・トーアウトの姿勢となり、内側半月板損傷を引き起こすリスクが高まります。

そのため、できる限りに大腿二頭筋の滑走不全は取り除いておくことが大切です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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