熱傷のリハビリ治療

熱傷は「熱」により起こるあらゆる損傷を指し、深達した熱傷は治癒後も瘢痕・ケロイド・拘縮を残し得ます。

本記事は、応急処置・原因・受傷範囲(Lund–Browder)・深度分類・重症度判定・外科治療・リハビリ(呼吸/ポジショニング/ROM)までをまとめた実践ガイドです。

熱傷の概要

入院を要する中等度以上の熱傷はおよそ3,000人に1人の頻度とされ、年齢では乳幼児・学童に多く、家族の注意が不可欠です。

応急処置として、衣服・装飾品を外し、流水で10〜20分冷却(氷・氷水は避ける)が必要です。汚染は流水で清浄してください。

自己判断でクリームや軟膏を塗らないようにし、化学熱傷は大量の流水で直ちに洗い流します。

熱傷の原因

原因 受傷機転 重症度 特徴
熱湯 料理、ポット 軽度〜中等度 家庭内で最も頻度が高い
火炎 料理、火事 中等度〜重度 衣服着火や炎接触で広範囲化しやすい
電気 電線、コード 重度 見た目より深部損傷が広いことが多い
薬品 酸・アルカリ・薬剤 重度 組織壊死が遅れて進行、直ちに大量洗浄が必要

受傷範囲(TBSA)の分類

体表面積(Total Body Surface Area; TBSA)の推定にはLund–Browderを用います(年齢で割合が異なる)。

Lund–Browder 図:年齢別の体表面積比率
年齢に応じて頭部と下肢の割合が変化する。
年齢(歳) 0 1 5 15
A-頭部の1/2 9.5% 8.5% 6.5% 4.5%
B-片脚大腿の1/2 2.75% 3.25% 4% 4.5%
C-片脚下腿の1/2 2.5% 2.5% 2.75% 3.25%

重症度の判定

重症度は主に受傷面積(TBSA)深度部位年齢合併症で決まります。

面積が広いほど血管透過性亢進に伴う循環血漿量減少が進み重症化します。

分類 所見 痛み 治癒・瘢痕
第Ⅰ度 角質層など表層の損傷、紅斑・浮腫 ヒリヒリ疼痛 2〜3日で軽快、瘢痕なし
第Ⅱ度(浅層) 真皮上層まで、水疱形成(ピンク) 強い痛み 感染なければ約2週間で治癒、瘢痕少ない
第Ⅱ度(深層) 真皮深層まで、水疱底白濁 知覚鈍麻で痛み軽いことも 再上皮化に30日以上、瘢痕残存
第Ⅲ度 皮膚付属器まで壊死、黒〜黄褐色の焼痂 無痛(神経終末破壊) 植皮が必要、治癒に数か月
Artzの分類
区分 基準(例)
1.重症熱傷 Ⅱ度:30%TBSA以上/Ⅲ度:10%TBSA以上/顔面・手・足のⅢ度/気道熱傷/電撃傷/重度外傷合併
2.中等度熱傷 Ⅱ度:15〜30%TBSA/Ⅲ度:10%以下(顔・手・足を除く)
3.軽症熱傷 Ⅱ度:15%以下/Ⅲ度:2%以下
TBSA:Total Body Surface Area(体表面積)

外科的治療

保存的治療は第Ⅱ度浅層およびごく小範囲の第Ⅱ度深層に限られます。広範囲の深層性熱傷ではデブリードマン+植皮が基本です。

感染・敗血症リスクを考慮し、施設や症例により早期(24時間以内)の手術が選択されることもあります。

  • 筋膜上切除:短時間・少出血で広範囲切除が可能。欠点は皮下脂肪・神経・血管の切除に伴う機能・美容面の問題。
  • 連続分層切除/接線切除:TBSA 30%以下の中等度熱傷で真皮・皮下の温存を図る際に用いる。

リハビリテーション

目的は瘢痕・拘縮による関節可動域制限を最小化し、機能的肢位を保持すること。患者本人のセルフケア参加が必須で、理解促進と生活指導が重要です。

プログラム例:①呼吸理学療法 ②ポジショニング ③スプリント ④関節可動域運動(ROM) ⑤早期離床・ADL練習


熱傷治療の経過とリハビリの流れ
治療期ごとのリハビリ目標(引用画像)。

①呼吸理学療法

受傷後早期のICUでは循環・気道管理に加え、無気肺・肺炎予防のための呼吸理学療法と、罹患関節のROM維持を開始します。

2時間ごとの体位変換と吸引、6〜8時間ごとの排痰法を基本に、看護師と連携して定時で実施します。

排痰法では聴診で貯留部位を確認し、必要に応じてスクイージング・タッピング・バイブレーションを行います。

【スクイージング】呼気時に胸郭へ圧を加えて呼気流速を高め、分泌物を中枢気道へ移動させる方法。呼吸努力の軽減や排痰促進に有効とされます。

スクイージングの手技例(胸郭をしぼるように介助)
スクイージングの基本(引用画像)。
【タッピング】お椀状に手を丸め、1秒間に約3回のリズムで叩打。痛みが出やすいため疼痛確認を行いながら実施します。
【体位ドレナージ】タッピングやスクイージングは体位ドレナージと併用すると効果的。重力で痰を中枢に誘導し、刺激を加えて移動を促します。詳しくは、体位ドレナージ(排痰法)の方法 を参照してください。

②ポジショニングとスプリント装着

予測される皮膚性拘縮・変形・瘢痕形成を予防し、機能障害を最小化するため、良肢位保持+スプリントで抗変形肢位に固定し、浮腫軽減と循環維持を図ります。

熱傷部位 予防肢位
頸部 伸展5〜10°(枕は避け、タオルで調整)
胸部 拡張位(背部にタオルで胸郭挙上)
肩関節 屈曲15〜20°・外転90°以上
肘関節 伸展0°
手関節 中間位〜背屈35°
手指関節 PIP伸展0°・MP屈曲60〜80°
股関節 腹臥位または伸展0°・外転20〜30°・回旋0°
膝関節 伸展0°
足関節 背屈0°

③関節可動域運動(ROM)

入院初期から早期開始し、外来でも継続。部分浴と組み合わせると浮力で動かしやすく、創洗浄や壊死組織の除去にも有利。末梢循環の維持と肉芽形成促進も期待できます。

瘢痕形成期はROMが困難なため、昼夜スプリントで機能的可動域の維持に努めます。

④生活指導と社会参加

広範囲熱傷は治療が長期化し、瘢痕醜形が自立や社会復帰の障害となり得ます。

心理面の支援、毎日のスキンケア(洗浄・保湿・セルフマッサージ)、良肢位保持を指導し、家族の協力を得ながら継続します。

引用画像/参考資料

  1. 理学療法ジャーナル 34巻 2号 pp. 89–94(2000年2月)

免責:本記事は一般的情報の提供を目的としています。診断・治療や応急処置の実施は、必ず医療者の指示・監修に従ってください。


最終更新:2025-08-23