はじめに
「PTはやめた方がいい?」——そんな声が増えています。実際、私自身も一度は臨床から離れました。本稿では目をそらせない現実を8項目に整理し、取れる打ち手までセットで提示します。否定のための否定ではなく、意思決定の材料として役立ててください。
1.仕事がない
実情
都市部の人気病院は高倍率。一方で地方・在宅・介護系・通所系は慢性的に人手不足という“二極化”。
対策・見通し
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「領域×地域」の幅を持つ(急性期だけに絞らない / 地方も視野に)。
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臨床+訪問スキル(呼吸・内部障害・摂食嚥下)を得ると求人の選択肢が広がる。
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学生のうちに複数現場を見学して市場の肌感を掴む。
2.給料が安い
実情
報酬改定の影響等で平均給与は伸び悩み。地域差も大きい。
対策・見通し
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生活コストの最適化(地方就職・家賃や車の固定費調整)。
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副業可の法人や、出来高連動(自費コンディショニング/産業領域/スポーツ現場)を組み合わせる。
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昇給のロジックが明文化された職場を選ぶ(評価表・役割等級)。
3.やることが増えた(非臨床業務)
実情
送迎・介助・事務・加算管理…“何でも屋”化しがち。
対策・見通し
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業務分担の線引きを上長と擦り合わせ、属人タスクを可視化。
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ルーティンは標準作業書とテンプレで省力化。
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「臨床に何%使えるか」を入職前に質問し、現場の運用を確認。
4.学歴が給与に反映されにくい
実情
大卒手当がない職場も多く、学位≠初任給になりがち。
対策・見通し
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修士・博士は“臨床×研究/教育/管理”で回収する前提(研究費・教育職・管理職への道)。
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海外志向や産学連携を狙うなら英語+学位が効く。
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目的なしの進学はコスパ低。**進学→どの案件で回収?**まで設計。
5.新人でも施術料が同じ(収益構造の壁)
実情
出来高より診療報酬単価が支配的。経営は人件費を抑えたくなる。
対策・見通し
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「同じ単価でも離脱率を下げる/紹介を生む/加算を守るPT」は価値が高い。
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自費・産業保健・チーム契約など単価設計が柔軟な土俵も並行開拓。
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実績を数値で見える化(再来率、FIM/BI改善、在院日数、転倒率、満足度)。
6.年功序列の壁
実情
公的色の強い組織は昇進が緩やか。若手の抜擢が起きにくい。
対策・見通し
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評価制度が明確な民間を選ぶ/異動・転職で環境を変える。
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「役職」ではなく専門認定・資格・外部登壇で市場価値を上げる。
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マネジメント or スペシャリストのどちらで行くかを早めに宣言。
7.人間関係・教育文化のばらつき
実情
高圧的な指導・ハラスメントの噂もゼロではない。
対策・見通し
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**教育体制(新人OJT/メンター/勉強会)**を入職前に確認。
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相談窓口・就業規則・ハラ防止規程の運用実績をチェック。
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しんどい環境は**“逃げるが勝ち”**。転職回数より心身の保全が最優先。
8.学びに終わりがない(時間と費用)
実情
アップデートは必須。学ばないと置いていかれる一方、私費負担がしんどい。
対策・見通し
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学会費・研修費の補助制度がある法人を選ぶ。
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学びは臨床につながるKPIで管理(例:疼痛NRS改善率、歩行速度、再発率)。
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週1の固定学習ブロックを生活に組み込む(時間先取り)。
こんな人は再検討を
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地域や領域をまったく動かす気がない
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ルーチン以上の学習・記録・対話を継続する気がない
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対人支援より成果連動の高年収を最優先したい
それでも目指すなら
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市場が求めるスキル(呼吸/内部障害/在宅/装具/産業保健/スポーツ)を一つ軸に。
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数字で語る習慣をつける(臨床成果=価値)。
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自院だけに閉じず、外部ネットワークを持つ。
まとめ
理学療法士には、需要の偏在・収益構造・組織文化という現実の壁があります。ですが、領域×地域の柔軟性、スキルの見える化、自費や産業などの並行軸で、進路の選択肢は確実に広がります。
「やめとけ」で思考停止せず、自分が勝てる土俵を設計できるかが鍵です。
(併読推奨:理学療法士を目指す5つの理由)