要点
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同じ“痛み”でも、どの組織が発しているかで性状・誘発動作・治療戦略が変わります。
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ここでは主要8組織の痛みの由来・特徴・臨床の注意点を簡潔に整理しました。
1. 骨(骨膜・骨髄下骨)
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神経分布:関節軟骨自体に痛覚はほぼなし。痛むのは骨膜や骨髄下骨(血管豊富)。
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痛みの特徴:局在明瞭で鋭い/うずく。荷重や打撲、骨折、**骨膜炎(例:シンスプリント)**で誘発。
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メモ:「変形=痛み」ではない。骨髄下骨の虚血・圧上昇や滑膜炎が痛み源となりやすい。
2. 関節包(線維膜・滑膜)
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神経分布:豊富。滑膜炎で関節水腫。
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痛みの特徴:腫脹・熱感・可動時痛。安静時痛も出やすい。
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臨床:機械刺激(反復荷重・骨配列不良)や遊離体で滑膜刺激 → 炎症。
3. 皮膚(+浅層組織)
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神経分布:最表層で密。指先・口唇は特に高密度。
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痛み:鋭い・局在明瞭。触圧・温冷で変化。
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臨床:浅筋膜の滑走不全が関与することも(軽い牽引・スライドで症状が変わる)。
4. 筋・筋膜
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区分:①筋損傷(実質損傷)②付着部牽引痛③虚血性痛(攣縮)。
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痛み:筋膜(深筋膜〜筋周膜など膜組織)で強く感じやすい。
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所見:関連痛や圧痛帯(トリガー)、伸張時痛/収縮時痛の差。
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臨床:まず攣縮・滑走不全の解除(摩擦・ストレッチ・収縮弛緩)→負荷線の最適化。
5. 腱(腱・腱鞘)
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血流:乏しい → 治癒遅延。
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痛み:初期はだるい→使い続けると運動時痛/圧痛。
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臨床の注意:今日の概念は腱障害=“炎症だけ”ではなく変性(tendinopathy)。
ステロイドは短期痛み軽減に留まり、腱弱化や再発のリスクも。負荷管理+エキセントリックが基本。
6. 靱帯
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役割:関節制動。血流乏しく遷延化しやすい。
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痛み:牽引・端部圧痛、不安定性で誘発。
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臨床:足関節捻挫後は靱帯+周囲筋膜の滑走不全を鑑別。関節遊びの過不足も評価。
7. 内臓(内臓痛)
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性状:鈍い/広がる/自律症状を伴う。姿勢で変化しにくいことが多い。
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臨床:食事・月経・排便など生理イベント連動を聴取。関連痛領域に注意(鑑別を外さない)。
8. 神経(神経痛・根症状)
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機序:圧迫+炎症+虚血で過敏化。
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痛み:放散痛/電撃痛/異常感覚。叩打・牽引で増悪(Tinel/SLRなど)。
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臨床:単なる圧迫だけでなく化学的炎症の有無が痛みの強さを左右。除圧+炎症コントロール+滑走。
まとめ(実践フロー)
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局在・誘発動作(圧・伸張・収縮・荷重)で組織当たりを付ける
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発痛様式(鋭い/鈍い、放散の有無、夜間痛、腫脹)を照合
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修正テスト(姿勢・関節遊び・滑走・神経滑走)で可逆性を確認
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**原因線(機械刺激・負荷線・生活要因)**を修正する
クイックQ&A
Q1.「変形=痛み」ではないの?
A. 変形そのものより、骨髄下骨の圧・滑膜炎・周囲軟部の過負荷が痛み源です。画像と症状は必ずしも一致しません。
Q2. 腱は温める?冷やす?
A. 急性増悪は冷却/腫脹軽減、慢性期は温熱+負荷再教育(エキセントリック)。経過で切替えます。
Q3. 神経痛と筋膜痛の見分けは?
A. 神経痛は放散・電撃・知覚変化、神経伸張/叩打で再現しやすい。筋膜痛は圧痛帯と関連痛パターンが鍵。
Q4. 皮膚・浅筋膜で可動域が変わる?
A. 変わります。軽いスライドで痛みやROMが即変化するなら浅層の滑走不全が関与。
Q5. いつ画像検査を考える?
A. **外傷直後の強い疼痛・不可逆な筋力低下・夜間痛の持続・レッドフラッグ(発熱、体重減少、癌既往など)**では医療連携を。
最終更新:2025-10-08
