肉ばなれのリハビリ治療

肉ばなれとは?

肉ばなれは、ダッシュやジャンプ、切り返しなどで筋が**伸ばされながら力を発揮(遠心性収縮)したときに生じる、筋線維~筋腱移行部の損傷です。衝突で起こる筋挫傷(打撲)**とは発生機序が異なる、非接触型が中心です。

  • 典型:短距離走のハムストリングス、サッカーのキックでの大腿直筋、切り返しでの腓腹筋など

  • X線では異常が出にくく、超音波やMRIが有用(範囲・重症度判定、復帰判断の補助)


症状の目安

  • 急な鋭い痛み(“ブチッ/ビキッ”の感覚)

  • 腫れ・皮下出血(あざ) ※発現は受傷後24時間以降に目立つことも

  • 陥凹(凹み)や力が入らない感覚(重症)

  • 伸張・収縮での増悪、歩行・走行困難

レッドフラッグ(早期受診)

荷重不能、明らかな変形・陥凹、広範な腫脹やしびれ/発熱、激しい夜間痛が続く場合。


筋膜と肉ばなれ

筋は筋外膜に包まれ、さらに表層に深筋膜・浅筋膜が重なります。

  • 筋外膜:筋を直接包む膜(厚さの目安は約0.3mm)

  • 深筋膜:相対的に血流が乏しく、単独損傷では皮下出血が目立たないことがある
    ⇒ **肉ばなれ(筋線維損傷)**では内出血が生じやすいのに対し、深筋膜損傷は出血所見に乏しいことがあり、臨床鑑別のヒントになります。


好発筋(下肢に多い)

  • ハムストリングス(とくに大腿二頭筋長頭は報告で最多)

  • 大腿直筋腓腹筋・ヒラメ筋(下腿三頭筋)内転筋群
    ※部位や競技により割合は変動します。


画像診断

  • X線:骨病変の除外向き。筋損傷自体は写らない。

  • 超音波:その場評価・フォローに有用(血腫/断裂・滑走不全の確認)。

  • MRI:範囲・深さ・関与組織を立体的に把握。T2/STIR高信号として描出され、重症度分類復帰プラン作成に役立つ。


重症度の目安(一般的な3段階)

  • Ⅰ(軽度):部分損傷。日常動作の改善は早く、~4週前後で競技復帰する例が多い。

  • Ⅱ(中等度):筋腱移行部や腱膜の関与が大きい。数週~数か月。安静~漸増負荷が必要。

  • Ⅲ(重度)完全断裂数か月以上。場合により手術を検討。

※復帰時期は症状・機能検査・画像・競技特性で総合判断します。


急性期の対応(受傷~48–72時間)

  • 保護・安静:痛みの出る動作を避ける。

  • 冷却:10–15分を間欠的に(感覚鈍麻しない範囲)。

  • 圧迫・挙上:腫脹と出血コントロール。

  • 自己判断で強いストレッチや走行はNG。重症が疑われる場合は整形外科へ。


リハビリの流れ(原則:痛みと腫脹の経過に合わせて段階的に)

Phase 0:保護期

  • 痛みコントロール、可動域維持(痛み内)、非患部・体幹トレで全身の運動量を確保

Phase 1:滑走改善・柔軟性

  • 軟部組織(筋実質・腱膜・深筋膜)リリース

  • 静的→動的ストレッチへ移行(反動は使わない)

Phase 2:筋力・持久性

  • **等尺性 → 求心性 → 遠心性(エキセントリック)**の順で負荷漸増

  • 代表例:ノルディックハム、ヒールロワー、RDL等(痛みゼロ域から)

Phase 3:運動再学習・競技特異化

  • 走・跳ドリル、加速/減速、方向転換、片脚着地

  • 強度→量→スピードの順に増やし、翌日の悪化がないことを確認しながら進行

復帰の目安(例)

  • 疼痛なし

  • 可動域・筋力・機能テストが健側比≧90%

  • 競技動作(ダッシュ・カット・キック等)を連日実施しても翌日に悪化しない


再発予防のコア

  1. 柔軟性:筋・筋膜の柔軟性維持(セルフリリース+静的/動的ストレッチ)

  2. 筋力(特に遠心性耐性):ハムはノルディック、腓腹はエキセントリック・カーフなど

  3. 動作:走フォーム・キック動作の最適化、減速・方向転換のドリル

  4. 準備と回復:ウォームアップの質(体温↑→動的ストレッチ→競技ドリル)と、クールダウン・睡眠・練習量の周期化


よくある質問(Q&A)

Q1. 肉ばなれと筋挫傷(打撲)の違いは?
A. 肉ばなれは非接触での遠心性収縮が主因。筋挫傷は接触外力(ぶつける)で筋が挫滅する損傷です。

Q2. どれくらいで治りますか?
A. Ⅰは**~4週が目安、Ⅱは数週~数か月**、Ⅲは数か月以上手術を検討することも。個人差が大きいため、機能評価と段階的復帰が安全です。

Q3. MRIは必須ですか?
A. 常に必須ではありませんが、範囲や重症度の把握、復帰判断の精度を上げる目的で超音波やMRIが推奨されます。X線だけでは分かりません。

Q4. 受傷直後は冷やす?温める?
A. 急性期は冷却中心。腫れ・痛みが落ち着いたら温熱や軽運動→ストレッチへ移行します。

Q5. いつから運動再開?
A. 痛み軽減+機能改善が客観的に確認できてから。まず低強度のドリル→ジョグ→ラン→全力走の順で、翌日の悪化がないことを条件に進めます。

Q6. 皮下出血がほとんどないのに痛いのは?
A. 深筋膜損傷などでは出血が目立たないことがあります。痛みや機能低下が強い・長引く場合は受診を。

Q7. 再発を防ぐ具体策は?
A. 遠心性トレ+動的ストレッチ+フォーム改善のセットを通年で。ハムならノルディック、カーフはヒールロワーを週2–3回など、習慣化が鍵です。

Q8. 自己ケアで注意することは?
A. 痛みがあるうちは反動ストレッチや全力疾走は避ける。トレ後はクールダウンと軽い静的ストレッチ、気になる張りにはアイシング→軽い可動域運動を。


最終更新:2025-10-09