肉ばなれ(筋断裂)の治療について解説していきます。
肉ばなれの概要
筋肉に強い収縮や過度な伸張が生じることにより、筋肉を損傷した状態を肉ばなれと呼びます。
主な症状は、①疼痛、②内出血、③損傷部の陥凹などで、損傷している場所で症状が異なります。
陸上競技などの非接触時に起こるものであり、アメフトやラグビーのように接触時に発生する打撲(筋挫傷)とは発生機序が異なります。
主な原因は「柔軟性の低下」であり、疲労が溜まっている状態では、より発生しやすくなります。
肉ばなれは再発しやすい障害であるため、繰り返さないためにも筋・筋膜の柔軟性を獲得することが重要です。
筋膜について
筋・筋膜の柔軟性を獲得していくうえで重要なのは、「筋肉(筋実質)」と「深筋膜」の視点で評価していくことです。
一般的に筋外膜までを「筋肉」と呼んでおり、それより浅層の深筋膜や浅筋膜は「筋」とは付いていますが、筋肉には含まれていません。
筋外膜は筋実質を包んでいる膜で、厚さは平均で0.3㎜ほどです。
肉ばなれで筋線維が断裂すると内出血が生じますが、深筋膜には血管が存在しないので、深筋膜の損傷では内出血は認められません。
肉ばなれしやすい筋肉
肉ばなれの好発部位は、①ハムストリングス、②大腿直筋、③下腿三頭筋、④股関節内転筋の順に発生しやすいです。
ハムストリングス(とくに大腿二頭筋長頭)は最も生じやすい筋肉であり、全体の約67%を占めています。
画像所見(MRI)
肉ばなれは単純X線写真(レントゲン)では異常が見つからないため、MRI検査をする必要があります。
MRIでは上図のように損傷部位(白い部分)が一目でわかるので、重症度を判断するためにも有用です。
肉ばなれは損傷部位や状態からタイプⅠ〜Ⅲに分類されます。
タイプⅠの場合は、筋は損傷後すぐに再生が始まり、一週間後には損傷前の筋線維の1/2まで回復し、1ヶ月以内で完全に再生します。
タイプⅡの場合は、腱は血行が乏しいために回復が遅いため、安静期間をより長くとることが大切です。
完全に健常時の機能的強度まで回復するためには数年を要すともいわれ、復帰時期は慎重に決定する必要があります。
リハビリテーション
リハビリ内容としては、①組織リリース、②ストレッチング、③筋力トレーニングを中心に行っていきます。
まずは組織リリースですが、損傷した筋肉の柔軟性を高めるために、筋実質や組織間(深筋膜)に滑走不全がないかを確認します。
滑走不全を見つけたら圧や熱を加えていき、解きほぐすようにマッサージしていきます。
次にストレッチングですが、損傷した筋肉の柔軟性を高めることに加え、過度な伸張ストレスへの予防にも繋がります。
最後に筋力トレーニングの効果として、筋断面積や運動単位数が増加することで、従来と同じ動きをしても強い収縮を避けることができます。
ストレッチングと筋力トレーニングは痛みが落ち着き、滑走不全を改善させてから積極的に行うことが大切です。