胸棘筋(spinalis thoracis)

胸棘筋の概要

胸棘筋の起始停止

  • 脊柱起立筋の**最内側列(棘筋群)**の胸部ユニット。

  • 広背筋・胸最長筋の深層に位置し、頸棘筋と連続して棘突起—棘突起を縦に結ぶ。

  • 作用は**胸椎伸展(両側)**が主、同側側屈はごく小。姿勢保持や、前屈姿勢から上体を起こす動作で協働する。

基本データ

項目 内容
支配神経 脊髄神経の後枝
髄節 主に**T・L領域(T1–T12, L1–L3相当)**の分節支配
起始 T11–L2(L3)棘突起
停止 T2–T8(T9)棘突起
栄養血管 肋間動脈・腰動脈の背側枝
動作 胸腰椎の伸展、わずかな同側側屈、姿勢安定化

触診のコツ

  • 体位:伏臥位でリラックス。

  • ランドマーク胸椎〜上部腰椎の棘突起列直外側(指1本分)に、細い縦走帯として触れる。

  • 収縮テスト:被検者に小さな体幹伸展を指示すると、最内側で硬さが立つ。さらに外側に太い縦走として触れるのは胸最長筋


ストレッチ

  • 座位前屈+反対側側屈:胸椎を主に丸め、反対側へ軽く側屈。20–30秒×2–3回

  • 注意:腰の過伸展は避け、胸椎中心の動きに。痛み・しびれが出る角度は中止。

筋力トレーニング

  • 胸椎ミニエクステンション:座位で胸郭を“上に長く”→胸椎だけをわずかに伸展。

  • バードドッグ:四つ這いで対側上肢・下肢挙上保持(抗側屈・抗回旋で起立筋内側列を賦活)。

  • 等尺性:立位または座位で軽い前屈位から伸展方向へ等尺抵抗を加える。


クリニカルメモ

  • 猫背(胸椎後弯増大)では延長—出力低下フラット背では過緊張になりやすい。

  • 介入は胸郭モビリティ(回旋・側屈)呼吸・腹圧の再教育とセットで。

  • 多裂筋・胸最長筋との協調不全があると代償が出やすいので、分層リリース→低負荷再学習が無難。


よくある質問(Q&A)

Q1:胸最長筋との違いは?
A:胸棘筋は最内側で棘—棘を結ぶ細い帯胸最長筋は内外2条に太く縦走し横突起・肋骨へ。収縮時の膨隆は胸最長筋の方が明瞭。

Q2:側屈への寄与は?
A:小さい。側屈は腸肋筋・最長筋が主体で、胸棘筋は安定化寄与が中心。

Q3:前屈作業後の背部痛に効くセルフケアは?
A:胸椎の小さな回旋・側屈モビリティ呼気で前屈ストレッチミニエクステンションの順が安全。

Q4:どの姿勢で硬くなる?
A:長時間の前屈固定。1時間に1回、胸椎の左右側屈・回旋を数回入れると予防に有効。

Q5:触診が難しい
A:棘突起直外の最内側細帯を探す。外側で太い縦走を感じたら胸最長筋、さらに外側なら腸肋筋。


最終更新:2025-10-07