膝蓋骨が硬くて動かないときの原因と治し方

膝蓋骨(お皿)周囲がガチガチで全く動かない――変形性膝関節症(OA)では珍しくありません。膝蓋上包・膝関節筋・膝蓋骨内外側支帯・膝蓋下脂肪体の癒着や短縮があると、膝蓋骨が滑らず大腿四頭筋(とくに内側広筋)も働きにくいため、痛みと機能低下が持続します。
ここでは、“動くお皿”を取り戻すための評価→軟部組織リリース→収縮促通の流れを、臨床で使える手順に整理して示します。


なぜ膝蓋骨が硬くなるのか(要点)

膝関節筋と膝蓋上包

  • 膝蓋上包の癒着:膝伸展時に白膜が前方へ送り出されず、膝蓋骨が“貼り付いた”ように感じる。

  • 膝関節筋(中間広筋深層)の機能低下:本来は膝伸展時に膝蓋上包を引き上げ、滑膜の挟み込みを防ぐが、癒着下では働けない。

  • 膝蓋骨内外側支帯の短縮:特に外側支帯タイトで内側広筋が不利になりやすい。

  • 膝蓋下脂肪体の線維化・滑走不全:屈伸でのインピンジメントや疼痛の温床に。

  • 併発しやすい腰部・股関節・足部のアライメント不良が誘因・維持因子になることも。


セットアップ(“力を抜かせる”環境づくり)

  1. 背臥位、膝下に丸めたタオル(個々の伸展制限に合わせ高さ調整)。

    • 施術者の脚上に膝を置くと、わずかな刺激で筋緊張が入りやすいので非推奨

  2. まず熱感・腫脹(炎症)を確認。強い炎症があれば徒手刺激は控えめに。


介入1:膝蓋上包+膝関節筋のリリース(最重要・ややパワー領域)

  • つまみ上げ法:親指と示指で膝蓋上包を深く挟み、持ち上げつつ前後左右へ微小モビライゼーション。

  • 狙い:大腿骨前面に貼り付いた膜様組織を面で剥がす

  • コツ内側上方も硬くなりやすい。皮下脂肪が厚い症例は深度確保が鍵。呼吸に合わせ脱力を誘導


介入2:膝蓋骨外側支帯の解放(内側広筋が働ける位置へ)

  • 4指で膝蓋骨を内側へ誘導→母指で膝蓋骨外側縁を“浮かす”ように持ち上げ、
    外側支帯の伸張感を感じたら小振幅で反復

  • 併せて内側支帯も軽度伸張でき、パテラの上下・内外・回旋の全方向で遊びを回復。


介入3:膝蓋下脂肪体の滑走改善

  • 膝蓋骨下縁を手掌で軽く押し下げつつ、他手の4指で下から押し上げるリズミカルな交互操作。

  • 圧痛点は短時間・低~中圧で反復し、過刺激を避ける。


仕上げ:パテラ・セッティングで“動く感覚”を学習

  1. 膝下タオルをつぶす意識で大腿四頭筋セッティング。

  2. 施術者が膝蓋骨を軽く下方へ押し、合図で力を入れてもらい上方滑りを視覚・触覚でフィードバック。

  3. 内側広筋のタッピング(ペンペンと叩く)で即時促通を併用。

  4. はじめは成功率が低くても成功体験を反復し、自己効力感を高める。


評価・進捗の見える化

  • 膝蓋骨モビリティ(上下・内外・回旋の遊び)、伸展ラグ椅子立ち上がり痛歩行開始痛毎回同指標で記録。

  • 炎症サイン(熱感・腫脹・夜間痛)の推移を観察し、介入強度・頻度を調整。


よくある落とし穴と対策

  • 炎症強いのに強刺激:腫脹増悪→その日は可及的安静と冷却、深部温熱は炎症期は回避

  • 外側支帯だけ攻める:内側の癒着や上包の“貼りつき”が残る→順序は上包→支帯→脂肪体→促通

  • 股足部アライメント未介入:再硬化→足部(回内/回外)、股外旋/内旋の癖も評価、必要ならテーピング・靴/インソール指導


セルフケア(患者指導)

  • タオル四頭筋セッティング:1回5秒×10回×1–2セット/日、痛みのない範囲。

  • パテラ周囲の軽い皮膚つまみ(痛みがなければ)と氷または温浴の使い分け:
    活動後の熱感・ズキズキ冷却、慢性のこわばり→温浴

  • 体重管理・歩容指導(小股で膝を突っ張らない、階段は手すり活用)。


よくあるQ&A

Q1. 強くほぐしても大丈夫?
A. 炎症が強い時期は避ける。熱感・腫脹・夜間痛がある日は優しめに。翌日の痛みの残り方で強度を調整します。

Q2. どれくらいで効果が出る?
A. その場で膝蓋骨の遊び立ち上がり痛が軽くなる例は多いですが、定着には反復が必要。週単位での変化を追います。

Q3. まずどこからやる?
A. 膝蓋上包→外側支帯→脂肪体→促通が基本。上包が“貼り付いた”ままでは他が動きません。

Q4. 強いO脚や可動域制限が強い場合は?
A. 膝だけで完結しにくい股関節・足部も同時に評価し、必要なら装具・インソールも検討します。

Q5. 画像で問題が小さくても痛いのはなぜ?
A. 軟部組織の滑走不全神経感作が関与。動くお皿を作ることで痛覚入力を減らし機能を戻します。


最終更新:2025-10-07