自律訓練法とは
ドイツの精神科医シュルツが体系化した自己催眠型のリラクセーション法。
暗示的な“公式”を心の中で繰り返すことで、交感神経の高ぶりを鎮め、副交感神経優位へ導きます。
慢性痛・不安・不眠・緊張性の症状のセルフケア、臨床での心理生理的リラクゼーションに有用です。
なぜ痛みに効きやすい?
痛み入力は大脳皮質・辺縁系へ到達する途中で視床下部にも投射→交感神経亢進(心拍↑・筋緊張↑)。
これが慢性化すると「痛み→緊張→さらに痛み」の悪循環に。
自律訓練法は“からだの重さ・温かさ”の体感に受動的に注意を向け、この悪循環を自律神経レベルで断つことを狙います。
(ヨガや呼吸法と親和性が高く、併用も◎)
まず整える“3つの条件”
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環境:静か・暖かい・薄暗い。就寝前のベッドが最適(慣れたら椅子でも可)。
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姿勢:仰臥位/安楽椅子。首肩が力まない体位。
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時間:1回4〜7分。1日1〜3回(朝・昼・就寝前が目安)。
実施の流れ(基本6公式+背景・消去)
各公式は心の中でゆっくり3〜6回、機械的に繰り返す。“なるように任せる”受動的注意集中がコツ。
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背景公式(安静導入)
「気持ちが落ち着いている」
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第一公式:重感
「両腕両脚が重たい」
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第二公式:温感
「両腕両脚が温かい」
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第三公式:心臓調整
「心臓が自然に規則正しく打っている」
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第四公式:呼吸調整
「自然に呼吸している」
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第五公式:腹部温感(太陽叢の温感)
「みぞおち(お腹)が温かい」
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第六公式:額冷涼感
「額がここちよく涼しい」
受動的注意集中のポイント
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“重くしよう/温かくしよう”と頑張らない。
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体位・環境を整え、感じられた変化だけを淡々と観察。
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何も感じなくてもOK。評価せず、ただあるがままに。
消去動作(終了の合図)
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手をグーパー→肘を曲げ伸ばし→背伸びで深呼吸→ゆっくり開眼。
※ 就寝前は消去せず、そのまま眠ってOK。
セルフトレ上の目安:最初の2〜3週は第1・第2公式だけで十分。慣れたら順次追加。
よくあるつまずきと対処
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考えが止まらない:言葉を呼気に合わせて心中で唱える/**数息観(吸う1…吐く1…)**を数回はさんでから。
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手足が冷える:室温とブランケットで物理的に保温。温感は“うっすら”で十分。
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動悸が気になる:第3公式は一旦スキップ。呼吸公式→消去へ。
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眠くなる:問題なし。就寝前に回すと効率的。
臨床での使い方(セラピスト向け)
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適応の見立て:ストレス関連症状、筋緊張性頭痛、TMD、慢性腰痛の過活動パターン、不眠など。
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禁忌/注意:急性精神病性障害、重度の解離傾向、自殺念慮を伴う重度うつ、発作性不整脈など主治医確認が必要なケース。妊娠後期や重度低血圧は慎重に。
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評価:VAS(痛み/不安/入眠)、安静時HR・呼吸数、頸肩筋の触診緊張、睡眠の主観指標。
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処方:短時間×高頻度(4–7分、1–3回/日)。2週間で主観的効果を再評価。
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併用:腹式呼吸、軽い有酸素運動、CBT的ペーシング、睡眠衛生指導。
すぐ使える簡易スクリプト(第1〜第2公式)
背中全体を委ねて、自然に目を閉じる。
「気持ちが落ち着いている…」(3回)
「右腕が重たい…左腕が重たい…両脚が重たい…」(各3回)
「右腕が温かい…左腕が温かい…両脚が温かい…」(各3回)
そのまま30秒静かに。
グーパー→肘屈伸→背伸び→深呼吸→開眼。
Q&A
Q1. いつ効果を感じますか?
A. 早い人で初回から入眠が楽に。多くは1〜2週間の継続で“こわばりにくさ/寝つき”の変化を実感します。
Q2. 職場のデスクでもできますか?
A. 可能です。椅子座位で足裏接地・背もたれ軽接触、3〜5分の“重感→温感”だけでも十分。
Q3. マインドフルネスとの違いは?
A. マインドフルネスが評価しない気づきを広く扱うのに対し、自律訓練法は身体感覚(重さ・温かさ)に暗示的に焦点を当てます。
Q4. 痛みが強い日は?
A. 短時間・回数を増やす(2〜3分×複数回)。呼吸公式→重感→温感の順で“安全運転”。
Q5. 頭が冴えて眠れないときは?
A. **第2→第5(腹部温感)→第4(呼吸)**の順で。最後は消去せず、そのまま就寝へ。
最終更新:2025-09-20
