踵骨下脂肪体の概要
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踵骨下脂肪体(heel pad)は踵骨足底面のクッション。歩・走・跳での衝撃吸収を担います。
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**強い圧縮ストレス(オーバーユース/着地衝撃/急性打撲)**で微細損傷→炎症と踵部痛が発生。
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代表的な踵部痛である足底腱膜炎と症状が類似。正確な鑑別が治療成否を左右します。
足底腱膜炎との鑑別ポイント
踵骨下脂肪体損傷
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主訴:踵中央の圧痛、立位・歩行・着地での荷重時痛
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典型:足底腱膜の伸張(つま先立ち・母趾背屈)では痛みが増えにくい
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打撲歴・固い路面での長時間立位/ランが誘因になりやすい
足底腱膜炎
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主訴:内側踵骨棘付近の圧痛
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典型:朝の一歩目の強い痛み、足趾背屈・つま先立ちで増悪
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下腿後面のタイトネス(腓腹筋・ヒラメ筋)を伴うことが多い
※実臨床では併存も少なくありません。圧痛点、発痛動作、既往(打撲/過長距離ラン)を組み合わせて判断。
評価(例)
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圧痛:踵中央〜やや外側寄りの軟部組織を縦横にピンチング→局所痛なら陽性。
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荷重テスト:片脚立ち/かかと着地の軽いスティッキングで痛み再現。
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足底腱膜負荷テスト(Windlass):母趾背屈で痛み誘発が乏しければ脂肪体優位。
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歩容観察:接地が強いヒールストライク、COP後方・外方偏位。
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可動域:足関節背屈・外反の制限(屈筋支帯・下腿三頭筋・後脛骨筋・長腓骨筋のタイト)をチェック。
リハビリテーション戦略
1) 痛みの鎮静(急性〜亜急性)
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相対安静:ラン・跳躍・硬路面長時間立位は回避。
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ヒールリフト/クッションパッド:踵を5–10mm挙上し、踵接地の圧縮を軽減。
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テーピング(ヒールパッド集約テープ)
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母趾球外側(第5中足骨頭付近)から開始
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踵後方を巻くように引き、
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反対側前足部へ戻す(U字/X字を重ね脂肪体を中央へ寄せて下方に“盛る”)
→ 立位で痛みが軽減すれば適合。
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2) 再発予防(機能再建)
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可動域の是正
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背屈制限:腓腹筋・ヒラメ筋のストレッチ、距腿関節モビリゼーション
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外反制限:屈筋支帯のリリース、腓骨筋群の滑走改善
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荷重線(COP)の修正
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ヒールストライクを静かに、接地時間を分散(足趾〜前足部の活用)
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軽い前傾+膝・股のクッションで踵一点集中を回避
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シューズ選択
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踵部のクッション性・ヒールカップ保持が高いモデル
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磨耗で外側が削れる靴はCOP外方位を助長→早めに交換
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段階的復帰
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ウォーク → ジョグ(ソフトサーフェス)→ 走距離・跳躍の10〜20%ずつ増量
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ありがちな落とし穴
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痛いまま走り続ける(慢性化)
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前足部ばかり意識し過ぎて別部位を過負荷
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固いミニマルシューズでの長時間立位・移動
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テーピングを痛みが減っても外さない(萎縮や依存につながる)
受診の目安
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休息とパッド・テーピングで2〜3週間改善しない
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安静時痛・夜間痛、広範な腫脹・発赤・熱感
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明らかな打撲直後からの歩行不能(骨折・骨挫傷の鑑別が必要)
よくある質問(Q&A)
Q. 朝の一歩目も痛いのですが、脂肪体ですか?
A. 朝の強い一歩目は足底腱膜炎の典型。併存も多いので圧痛点とテストで切り分け、両方を視野に治療します。
Q. 市販のヒールカップは効果ありますか?
A. 有用です。踵中央のクッション増と脂肪体の保持に役立ちます。靴のヒール部の安定性も併せて確認を。
Q. 走るのはいつ再開できますか?
A. 無痛の歩行・片脚着地が可能→ソフト路面で短時間ジョグ→距離と強度を漸増。痛みが出たら1段階戻すが原則。
Q. ふくらはぎのストレッチは必須?
A. 多くの例で背屈不足=踵過負荷に直結。腓腹筋・ヒラメ筋の伸張は高優先度です。
まとめ
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踵骨下脂肪体損傷は踵中央の荷重時痛が主。
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足底腱膜炎との鑑別を外さず、圧縮ストレスの軽減+可動域・COP修正で再発予防。
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テーピング/パッド→ROM改善→動作最適化→段階的復帰の順で確実に。
最終更新:2025-10-05
