頸椎症性筋萎縮症(Keegan型頚椎症)のリハビリ治療

Keegan型頸椎症の概要

  • Keegan型頸椎症(頸椎症性筋萎縮症)は、頸椎症や椎間板ヘルニアを背景に運動麻痺が前景に出るタイプ。

  • 脊髄前角/前根の選択的障害で、三角筋・上腕二頭筋・腱板の筋力低下が目立ち、感覚障害は乏しい/目立たないのが特徴です。

  • 受診時の主訴は「肩が挙がらない」「肘が曲げにくい」。

病態の考え方

  • 正中~傍正中の椎間板突出や骨棘などで前根の圧迫が先行しやすく、運動優位の障害が生じます。

  • C5–C6髄節の関与が多く、三角筋・上腕二頭筋・腱板筋群の筋力低下→挙上困難が典型像。

診断のポイント

  • 症状:上肢近位優位の筋力低下/萎縮。しびれ・疼痛は軽微~目立たないことも。

  • 所見:髄節一致の徒手筋力低下(MMT)腱反射変化(該当髄節で低下)、感覚保たれることあり

  • 画像・検査:頸椎MRI(椎間板・骨棘・狭窄の評価)、神経伝導・針筋電図で前根/前角優位の所見を補強。

  • 鑑別:腱板断裂・肩関節拘縮、末梢神経障害(腋窩神経麻痺、筋皮神経麻痺)、神経筋疾患など。

自然経過と治療

  • 保存療法で半数以上が約10週以内にADL上実用レベルまで改善するとされます。

  • 保存内容:頸部安静(短期装具)/疼痛・炎症コントロール/牽引(適応例)/段階的運動療法

  • 回復が乏しい例、進行例、著明な筋力低下や日常機能障害が強い例では手術(除圧±固定)が検討されます。
    ※方針は神経学的所見+画像
    回復の軌跡で総合判断。

リハビリテーションの考え方

  1. 拘縮予防・疼痛軽減

    • 肩関節の痛みなく許容される可動域保持(特に外旋・外転終末域は慎重に)。

    • 肩甲胸郭リズムを乱さないスキャプラセッティング

  2. 運動単位の再動員(促通)

    • まず**肩甲骨上方回旋筋(上部僧帽筋・前鋸筋)**を活性化 → 肩甲骨のプラットフォームを整える。

    • 次に腱板(特に棘上筋・棘下筋)の低負荷等尺〜等張

    • 三角筋の屈曲・外転は、骨頭求心位が保てる範囲から漸増。

    • **閉鎖運動連鎖(CKC)軽い外部キュー(タップ・弾性帯)**で協調性を促す。

  3. 姿勢・生活動作の最適化

    • 頭部前方位・上位胸椎屈曲の是正、うつむき作業の時間管理

    • 就労・家事での持ち上げ/反復挙上の回避、荷重は体幹近位で扱う。

  4. 進捗のモニタリング

    • 主要筋のMMT握力/肩挙上角度、簡便な機能スコア(DASH等)で2–4週ごとに評価。

    • 改善停滞・悪化時は治療方針の見直し/外科的評価を速やかに。

障害されやすい筋(目安)

髄節 主な動作
三角筋 C5–6 肩屈曲・外転・伸展
上腕二頭筋 C5–6 肘屈曲・前腕回外(肩屈曲)
上腕筋 C5–6 肘屈曲
棘上筋 C5–6 肩外転(初期)・外旋
棘下筋/小円筋 C5–6 肩外旋
肩甲下筋 C5–6 肩内旋・水平内転
大胸筋鎖骨部 C5–6 肩水平内転・内旋・屈曲

注意:医療機関ごとの方針や個々の病態で介入は変わります。医師の診断と指示のもとで実施してください。


よくある質問(Q&A)

Q1. しびれがほとんど無いのに力が入らないのは本当に首が原因?
A. Keegan型では運動優位の障害が起こり得ます。画像・神経生理検査と臨床所見の整合性で診断します。

Q2. 保存と手術、どちらを選ぶべき?
A. 多くはまず保存著明な筋力低下・進行例・回復停滞では早期手術が検討されます。主治医と時間軸の目標を共有しましょう。

Q3. リハで最初に重点を置くのは?
A. 肩甲骨の安定化→腱板促通→三角筋漸増の順で、骨頭求心位を保ちながら反復します。

Q4. どれくらいで良くなる?
A. 目安として約10週でADL実用域まで改善する報告がありますが、個人差が大きいです。2–4週ごとに到達目標を確認しましょう。

Q5. 予防や再発抑制は?
A. 長時間の頸部前屈作業を避ける、モニター高さや椅子を調整、体幹近くで荷重頸~肩甲帯ストレッチと軽い筋トレを継続。


最終更新:2025-10-05