頸椎椎間関節障害のリハビリ治療

頸椎椎間関節障害の概要

  • 好発レベル:C5/6 と C6/7 が最多。ここは椎間板症の好発部位とも一致し、椎間板の変性・低背高化で後方関節(facet)への荷重・圧縮が増えるためです。

  • 痛みの広がり:椎間関節障害の放散は頸部〜肩甲帯周囲が中心(例:肩甲骨内側の痛みは C6/7 を示唆)。指先までのしびれが前景なら、神経根症筋・筋膜性頸痛の精査を。

  • 自然経過:神経学的異常がなければ数週〜数か月で軽快することが多い一方、**再発予防(姿勢・可動性・使い方)**が重要。


なぜ中高年に多い?

  • 椎間板変性(含水低下・扁平化)→後方関節の機械的負担↑。

  • 上位胸椎の屈曲位(猫背)が持続 → 代償的に下位頸椎の伸展が増え、facet 圧縮が慢性化。


鑑別のコツ(臨床推論の道筋)

  1. 左右判定

    • 同側側屈+伸展で同側 facet に圧縮ストレス。右側屈・伸展で痛ければ右側を疑う。

  2. 高位推定(セグメント固定)

    • 後方から棘突起を一点固定し、頸部を軽く伸展。

    • 例:C5 固定で軽快、C6 固定で誘発C5/6関節の関与を示唆。

  3. 放散パターン

    • 肩甲骨周囲(特に内側縁)への放散はC6/7から着手すると効率的。

※痛みを感じているのは主に関節包・滑膜・脂肪体・付着筋。関節面自体ではありません。


レッドフラッグ(見逃さない)

  • 最近の外傷(骨折・脱臼の疑い)

  • 発熱や全身倦怠(化膿性脊椎炎 など)

  • 夜間痛・原因不明の体重減少(腫瘍性)

  • 進行するしびれ・巧緻運動障害・歩行障害(頚髄症)

  • 既往手術後の新たな強い疼痛(機械的合併症)

→ いずれも速やかに医療機関で精査を。


リハビリテーション戦略

1) 疼痛期:増悪を避ける

  • 痛みを誘発する伸展+同側側屈+回旋の組み合わせを回避。

  • 短時間での姿勢リセット(胸椎伸展・肩甲骨内転・軽い顎引き)を無痛域でこまめに。

2) からだの前提条件を整える

  • 上位胸椎の伸展可動域を回復

    • 小胸筋・肩甲下筋など肩甲骨前傾を促す組織をリリース→肩甲骨後傾・内転を引き出し、胸椎伸展を誘導。

    • 取得可動域は**自動運動(胸椎伸展エクササイズ)**で定着。

  • 下位頸椎の過伸展を減らす

    • Deep Neck Flexor(頸深層屈筋)の軽負荷活性+顎引きで頭頸の前方位を是正。

3) 椎間関節モビライゼーション(安全域で)

  • セグメント選択的に軽牽引→徐放を反復し、多裂筋深層線維の収縮再学習と関節包の挟み込み解除を狙う。

  • 痛みが強い時期は痛み基準で可動域を限定し、胸椎・肩甲帯から遠位介入→頸へ漸近。

4) 使い方の再教育(再発予防)

  • 上を見る動作:まず上位胸椎→上位頸椎から伸展をリードし、下位頸椎の過伸展を避ける

  • スポーツ:バドミントン等の急激な上方視・反復スマッシュ姿勢は段階復帰(胸椎可動・肩甲帯安定の先行確保)。

  • ワークエルゴ:画面は目線高さ、キーボードは肩が上がらない高さ、30–45分ごとにマイクロブレイク


よくある質問(Q&A)

Q1. 画像で椎間板変性があれば、facet 介入は無意味?
**A. 無意味ではありません。**椎間板変性で後方関節負荷が相対増。胸椎伸展の回復、肩甲帯の再構築、facet のセーフレンジ動員で症状は十分に改善し得ます。

Q2. まず触るのはどこ?
A. 痛み再現性が高いレベル±1から。ただし疼痛が強ければ胸椎・肩甲帯→頸の順で遠位から安全に。

Q3. しびれが少しあるけど facet っぽい?
A. 指先までの明確な帯状放散や筋力低下・感覚障害があれば神経根症の鑑別を優先。迷えば医師へ紹介

Q4. どれくらいで良くなる?
A. 多くは数週間〜数か月で軽快。ただし姿勢・可動性・使い方を変えないと再燃しやすいのが特徴です。

Q5. セルフで一番効くのは?
A. 胸椎伸展+肩甲骨内転+顎引きの小リセットこまめに行うこと。長時間同一姿勢を避けるのが最大の薬です。


最終更新:2025-10-05