自律訓練法の方法

ドイツの精神科医シュルツによって創始された自律訓練法について解説していきます。

自律訓練法の概要

自律訓練法は自己催眠の一種であり、自律神経を調整するために考案された方法になります。

自己催眠とは、自分自身を催眠状態に引き入れる方法で、眠りを催すと字で書くように、実施する際は睡眠がとれるほどの楽な姿勢をとることが重要です。

そのため、最も適した場所は寝室であり、照明なども暗くした状態で行っていきます。慣れてくると仕事場の椅子などでも行うことが可能です。

疼痛の伝達経路

セラピストが自律訓練法について理解しておいたほうがいい理由として、慢性疼痛に対してのアプローチ手段となるからです。

痛みは侵害受容器にて感知され、大脳皮質や大脳辺縁系に送られるのですが、その途中に分岐されて情報が視床下部に送られます。

危険を察知した視床下部は交換神経を亢進させて備えるのですが、慢性的に痛みがある場合は不必要な緊張状態となり、悪循環に陥ってしまいます。

そのため、その悪循環を断つ手段として自律訓練法は有用と考えられます。

痛みの経路

自律神経にアプローチする方法

慢性疼痛に対するヨガやピラティスの効果が報告されることは多いですが、これらの方法も自律神経の調節に働いていると考えられます。

また、これらは有酸素運動などの動的な部分も取り入れられており、より効果的に交感神経を抑制できているのだと思います。

自律訓練法に運動プログラムは存在しませんが、動きを伴わずに実施でき、いつでもどこでも実施できるという意味では非常に使い勝手がいい方法です。

交感神経の影響が強いと考えられるケースに対しては、自律訓練法の実施方法を指導することでセルフトレーニングに移行することも有用です。

自律訓練法の流れ

訓練時間は1回に4分程度とし、公式の順序に沿って進めていきます。(一部改編して掲載)

順序 内容 公式言語
背景公式 安静練習 気持ちが落ち着いている
第一公式 重感練習 両腕両脚が重たい
第二公式 温感練習 両腕両脚が温かい
第三公式 心臓調整 心臓が自然に規則正しく打っている
第四公式 呼吸調整 自然に呼吸をしている
第五公式 腹部温感 お腹が温かい
第六公式 額冷涼感 額がここちよく涼しい

背景公式を含めると上記の7つの公式が存在しますが、自主トレーニングで実践するのは第2公式までで十分です。それだけで体感的な効果が得られます。

公式を実施する際は、公式言語を心の中で繰り返すことが重要です。この暗示の言葉を何度も繰り返すことにより、自己催眠をかけていきます。

受動的注意集中

次に大切なのは、受動的注意集中を掴むことです。

どういうことかと説明すると、第一公式の重感練習を実施しようとした場合、意識が手足に向いてしまうため、リラックスできずに反対に緊張してしまいます。

この問題を解決するためには、腕を重くしようとするのではなく、自然に重くなるような条件を整えたうえで、重くなるのを待つという態度をとることが重要です。

これは実際に何度かやってみると理解できる、一種の独特な感覚です。それほど難しい感覚ではないため、時間をかけてゆっくりと実施し、一度感覚を掴んでみることが大切です。

リラックスした状態を損なうことがなく、重さや温かさを感じられるようになることで、副交感神経の活性化を高めることができます。

消去法

訓練時間は1回に4分程度とし、時間がきたら公式の途中であっても中断し、消去法に移ります。消去法とは、自己催眠の状態から目を醒ます方法です。

消去動作として、①両手をグーパーする、②腕を屈伸する、③背伸びをして深呼吸をする、④静かに目を開くといった流れで実施していきます。

その一連の動作を実施してから、静かに目を開きます。ただし、就寝前に実施する場合は、そのまま眠りについて構いません。

今すぐに実践できる方法なので、興味がある方は是非とも試してみてください!


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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