上腕二頭筋(biceps brachii)

この記事では、上腕二頭筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。

上腕二頭筋の概要

上腕二頭筋の起始停止

上腕二頭筋は2つの起始を持っており、肩甲骨の関節上結節(上方関節唇)に起始する側を長頭といい、烏口突起に起始する側を短頭といいます。

肘関節屈曲の主力筋で、前腕の強力な回外にも作用します。

前腕回内位では橈骨が回転して停止部の橈骨粗面がずれるため、肘関節の屈曲力が低下し、代わりに上腕筋の屈曲貢献度が高くなります。

また、肘関節屈曲時は筋肉が弛緩するため、前腕の回外力も低下し、代わりに回外筋の貢献度が高くなります。

基本データ

項目

内容

支配神経 筋皮神経
髄節 C5-6
起始 ①長頭:肩甲骨の関節上結節、上方関節唇

②短頭:肩甲骨の烏口突起先端

停止 橈骨粗面、上腕二頭筋腱膜を介して前腕筋膜
栄養血管 上腕動脈
動作 肩関節の屈曲(主に長頭)水平内転(主に短頭)

肘関節の屈曲、前腕の回外

主な拮抗筋 上腕三頭筋
筋体積 366
筋線維長 14.1
速筋:遅筋(%) 53.646.4

運動貢献度(順位)

貢献度

肘関節屈曲

前腕回外

肩関節屈曲

1 上腕二頭筋 上腕二頭筋 三角筋(前部)
2 上腕筋 回外筋 大胸筋(上部)
3 腕橈骨筋 長母指外転筋 上腕二頭筋
4 長橈側手根伸筋 長母指伸筋 前鋸筋

※肩関節の水平内転も大胸筋、三角筋に続いて3番目の貢献度であり、肘だけでなく肩にも重要な役割を持つ非常に優秀な筋肉です。

上腕二頭筋の触診方法

①上腕二頭筋長頭

自己触診:上腕二頭筋長頭

単純な肘関節屈曲では上腕筋との区別が難しいため、肘関節90度屈曲位での前腕回外運動にて収縮を触知します。

②上腕二頭筋短頭

自己触診:上腕二頭筋短頭

短頭は前腕内側に位置するため、触診する際は隆起部の内側に手を当てることで簡単に触知できます。

上腕中央の断面図

上腕中央の断面図|上腕二頭筋

上腕二頭筋を断面図で見た場合、上腕骨を境に筋間中隔によって上腕三頭筋と分かれています。

上腕筋よりも前内方に位置しており、上腕二頭筋の中では短頭が最も内側に位置していることがわかります。

ストレッチ方法

上腕二頭筋長頭のストレッチング

肩関節を伸展させて壁に手を付き、上体を下ろしていきます。

指先を下向きにすることで長頭が、上向きにすることで短頭が選択的にストレッチングすることができます。

筋力トレーニング

上腕二頭筋の筋力トレーニング

ダンベルや重りを両手に持ち、前腕は回外に把持した状態で、肘関節をゆっくりと屈伸していきます。

トリガーポイントと関連痛領域

上腕二頭筋の起始付近にトリガーポイントが存在すると、肩関節〜上腕前方に痛みが放散し、肩関節の屈曲・外転・外旋に制限が生じます。

上腕二頭筋の停止付近にトリガーポイントが存在すると、上腕〜肘前方に痛みが放散し、肘の伸展制限を引き起こすこともあります。

アナトミートレイン

上腕二頭筋はDFAL(ディープ・フロントアーム・ライン)という筋膜経線上に存在しており、このラインは小胸筋を介して上位肋骨に繋がります。

表層筋ではありますがDFALに属しており、それは表層のSFALが上腕部の内側筋間中隔を通過する急行性の筋膜だからです。

肩や肘前方に痛みを訴える患者では、このラインに問題をきたしているケースが多いため、小胸筋や上腕二頭筋の硬さをみることが大切です。

関連する疾患

  • 上腕二頭筋長頭腱炎
  • 肩上方関節唇損傷(SLAP損傷)
  • 上腕二頭筋長頭腱断裂
  • 上腕二頭筋長頭腱脱臼
  • 烏口突起炎 etc.

上腕二頭筋長頭腱炎

上腕二頭筋長頭腱は大結節と小結節の間(結節間溝)、棘上筋と肩甲下筋の間(腱板疎部)を通過して関節上結節と上方関節唇に付着します。

肩関節外旋位で緊張が増加し、その作用によって骨頭を関節窩に押し当てて、不安定な肩甲上腕関節を安定させています。

肩関節の中でも長頭腱は問題が発生しやすく、繰り返されるメカニカルストレスによって結節間溝部で腱炎が起きます。

また、野球の投球動作などで急激に収縮した際に起始部(上方関節唇)が剥離する肩上方関節唇損傷が生じます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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