手の虫様筋(lumbrical H)

この記事では、手の虫様筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。

虫様筋(手部)の概要

手の虫様筋の起始停止

手の虫様筋は手掌の浅層に位置する4つの筋肉で、細かい物を取る動きやつまんだりする動きで主に働きます。

4本の深指屈筋腱の途中から起始しており、総指伸筋の腱膜で停止します。

そのため、PIP関節とDIP関節では総指伸筋の作用で伸展方向に、MP関節では手掌側の起始に引き寄せられて屈曲方向に作用します。

とくにMP関節伸展位では総指伸筋が弛緩する一方で虫様筋などの手内筋は緊張するため、PIP関節とDIP関節の伸展により強く作用します。(MP関節屈曲位では総指伸筋が優位)

合計4本の虫様筋があるうち、第2指と第3指の虫様筋は正中神経に、第4指と第5指の虫様筋は尺骨神経に支配されています。

虫様筋には固有受容器(筋紡錘)が豊富に存在しており、上腕二頭筋では1gに2個程度ですが、虫様筋では20個もあるとされています。

そのため、動きそのものよりも握ったものの感覚を中枢に伝えることが主な役割となっています。

基本データ

項目

内容

支配神経 ①撓側:正中神経

②尺側:尺骨神経の深枝

髄節 C8-T1
起始 ①第2指:深指屈筋腱の撓側

②第3指:深指屈筋腱の撓側

③第4指:第3指深指屈筋腱の尺側と第4指深指屈筋腱の撓側

④第5指:第4指深指屈筋腱の尺側と第5指深指屈筋腱の撓側

停止 伸筋腱膜と中手指節関節の関節包
動作 2-5MP関節の屈曲、DIPPIP関節の伸展

運動貢献度(順位)

貢献度

手指屈曲

1 浅指屈筋
2 深指屈筋
3 虫様筋

手の虫様筋の触診方法

虫様筋H

写真では、示指のMP関節を過伸展位に保持した状態でのPIP関節伸展運動にて、虫様筋腱を示指基節骨部撓側にて触診しています。

手内在筋(中手筋)とは

手内在筋は、手根骨もしくは手指骨に起始と停止を共に持つ筋肉のことを呼びます。

その中でも中手筋は、手指骨にしか付着部を持たない筋を指し、①虫様筋、②背側骨間筋、③掌側骨間筋の三つがあります。

足趾にも同様に中足筋はありますが、足趾の虫様筋は長指屈筋腱から起始するため、中足筋は背側骨間筋と掌側骨間筋の二つだけです。

手内在筋の一覧

手内在筋

筋肉

支配神経

母指球筋 母指対立筋 正中神経
短母指外転筋 正中神経
短母指屈筋 正中神経,尺骨神経
母指内転筋 尺骨神経
小指球筋 小指対立筋 尺骨神経
小指外転筋 尺骨神経
短小指屈筋 尺骨神経
短掌筋 尺骨神経
中手筋 虫様筋 正中神経,尺骨神経
背側骨間筋 尺骨神経
掌側骨間筋 尺骨神経

トリガーポイントと関連痛領域

虫様筋Hのトリガーポイントは第3指と第4指に出現しやすく、関連痛は手掌に生じ、ばね指に似た症状を起こすこともあります。

アナトミートレイン

手の虫様筋はSFAL(スーパーフィシャル・フロントアーム・ライン)の筋膜経線上に位置する筋肉になります。


他の記事も読んでみる

The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
rehatora.net © 2016 Frontier Theme